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今、エリーになりたい。


今、故郷の精神科で出会ったエリーになりたい。
そして、誰かの髪をひっつかみたい。

ただそれだけだ。もちろん、ただのイメージ。暴力は良くない。
何というか、力づくで社会に八つ当たりしたいみたいな。

今日は、障害者就労支援センターに行って、何かと上手くいかなかったので、それを誰かのせいにしたくなっただけだ。

エリーは閉鎖病棟のホールで「あっはっはー」と笑ってテレビを観ている患者さんの髪を、後ろから「クッソばばー!」と言ってひっつかんじゃうような強者だ。
もちろんその後、保護室と呼ばれる隔離室に入れられるのだけど。

エリーは当時30代前半の小柄なレディーだったのだけど、ガタイのいい男性患者にもガンつけたり「うっせーなー!」とか言えちゃう奴だった。

初めて入院病棟でエリーに出会ったのは私が20代後半の頃だっただろうか。
最初は私がまともに見えるので、仮病だと思っていたらしい。ずっとシカトされていた。
私は病を笑顔で隠すのが得意だから。

毎年のように入院病棟で顔を合わせるのに、やっと仲良くなれたのは30代半ばになってからで、そこから少しずつこころを開いていってくれたようだった。

とある入院では、消灯後の真っ暗なホールで打ち明け話をした。エリーが橋から飛び降りようとしたこと、父親に包丁を向けたこと、継母のこと、それから、墓場まで持っていくつもりだった話まで。

そんなエリーは最後まで友達はいらないと言っていた。でも私は友達だと思っているよ。
だから、上京してからも、エリーが大好きなチョコレートを毎年クリスマスに送るのが楽しみだ。
もう、10月の今からワクワクしているくらい。

向こうからは、照れくさそうな「ありがとう」のメッセージが久しぶりに送られてくるだけだけど、私はそれだけでもとても嬉しい。
これからも、私はずっとずっとエリーを想い続けるだろう。

ということで、今、サイゼリヤで、こころの中のくそババアの髪をひっつかみたい。
果たしてそれは、社会なのか、私なのか。

おちつけ

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