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「日本の伝統」という幻想

ありがたいことに、前作「「日本の伝統」の正体」が評判になったので、あちこちでその話をしました。元々ぼくは、自分の本が出るたびにスライドショーを行います。これは発売記念のトークイベント。でも「ただオッサンが出てきて本の宣伝をするだけじゃつまらない」と思うので、エンタメ色の強いスライドショーにするのです。
おかげで、本を書き終わった後も毎回スライド作りの手間が大変でヒイヒイいってます。もっとも出版社にそう命令されたわけではなく、ぼくが勝手に手間を増やしているだけですが。

で、この時も「「日本の伝統」の正体」を素材にしたスライドショーを何回か行いました。取材に来てくれた方に対し、ぼくのPCを使って即席ショーを行ったこともありました。これがとても評判がよかった。
この方式のよさは、「本を書き終えたあとでスライドを作るので、自分では内容の復習をすることになる」という点。すると、「執筆時には気がつかなかった視点や、より深い考察を行うことになる」のです。つまり、本の内容がもう一段、進化するんですね。

出版社としては当然、ヒットした企画に対しては「第二弾を!」と言います。ありがたいことです。その時「あのスライドショーを元にすればいいんじゃない?」となったわけです。

なのでこの本の前半は、スライドショーを元にした「前作を進化させた、まとめ」になっています。後半は、出版以降の反応を受けて、より深い考察を行ったものです。
前作同様に「この伝統は**年」という事例をもっと並べてもいいのですが、同じことをやってみてもつまらない。そこで、前作では控え目に書いていた「なぜこの伝統が広まったのか?」「どうして我々はそれを受け入れたのか?」「日本人はなぜ、伝統に弱いのか?」…などのポイントを前面に押し出しました。ぼくの企画本は「着目・収集・分類・分析・考察・提言」ですが、第二弾はこの後半部分を中心にしたのです。
つまり「これは、知ってる/知らないのチェック本ではないよ」ということ。だから「前作より意図がハッキリしている」という読者評は、とても嬉しい!

ちなみに、この二冊を通じて意外だったのは「京都マジック」という言葉への、世間の反応。ぼくはこの言葉をもう三十年以上前から普通に使っていて、世の中の人も当然そうだろうと思っていたのです。なので、なんら構えることなくサラっと書いたのですが、
「いやあ、京都マジックとはうまい言葉ですね」
「そうかあ、京都マジックかあ!」
という反応が多いのにビックリしました。別に「キメ」にいったわけじゃないのに…。誰もが以前からもやもやと感じていたことの言語化、ということでしょうか?
実は、この本でぼく自身が「言語化した」と思っている言葉は、「伝統マウンティング」です。

お読みいただき、ありがとうございます。本にまとまらないアレコレを書いています。サポートしていただければ励みになるし、たぶん調子に乗って色々書くと思います! よろしくお願いします。