見出し画像

試写会『流浪の月』アフタートークレポート(登壇:李相日監督)

※本記事は2022年4月に参加した試写会レポートになります。


あらすじ

あらすじ:雨の夕方の公園で、びしょ濡れの10歳の家内更紗に傘をさしかけてくれたのは19歳の大学生・佐伯文。引き取られている伯母の家に帰りたがらない更紗の意を汲み、部屋に入れてくれた文のもとで、更紗はそのまま2か月を過ごすことになる。が、ほどなく文は更紗の誘拐罪で逮捕されてしまう。それから15年後。“傷物にされた被害女児”とその“加害者”という烙印を背負ったまま、更紗と文は再会する。が、更紗のそばには婚約者の亮がいた。一方、文のかたわらにもひとりの女性・谷が寄り添っていて…(引用:filmarks

アフタートーク

試写会では李相日監督が登壇しました。
また試写会に参加した人からの質問コーナーもあり、普段の映画雑誌では聞けないようなお話もたくさん聞けて楽しかったです。
出演者の起用、制作エビソードを中心にアフタートークをまとめました。

キャストの決め手は?

・広瀬すず

広瀬すずが17才のときに、自身(=李相日監督)作品『怒り』で一緒に仕事をし、そのときに魂のしなやかなさが印象に残った。本作を映画化するにあたって、次に再会できるとしたらこの作品じゃないかなとぼんやり思った。

・松坂桃李

フミ役を演じる役者を考えたときに、彼以外思い浮かばなかった。桃李くんの透明感が決め手。フミは共感能力のチャンピオンだと思っていて、人の辛さに寄り添うだけでなく、自分のことのように受け止める感受性の強さを持ち合わせている。それを生身の人間として体現できるのは、桃李くん以外ないだろう、と。

・横浜流星

もともと原作小説が好きだったようで、映画化をするにあたって会って話してみたら、リョウ役にしか見えなくなった。もしかしたら彼自身はフミ役を演りたかったのかもしれないけど。横浜くんは空手をやっていてとても礼儀が正しい人で、とてもストイックな生き方をしている人。そして昭和感が凄いある。あとは『悪人』での岡田将生のように、キラキラした王子さまよりも人間の醜い部分を含めて演じたいという気持ちというか、彼自身が演じることへの欲が強まってるタイミングでもあったので、リョウ役に起用した。

・多部未華子

多部未華子は、とても明るい印象の人。だからこそ、普段笑顔を見せている人が、人に見せない部分を探りたくなった。今回の役で、見せてない隠れたものがあるんじゃないかという期待もあって起用した。

広瀬すずの良かったシーンは?

クランクアップの日に撮った、寝ているフミをサラサが見つめるシーンが1番良かった。その直前に撮ったシーンでは、松坂桃李の演技に広瀬すずが圧倒されて打ちのめされていた。立ち直るのも大変だったと思うけど、その後に撮ったこのシーンでは良い表情をしていたし、打ちのめされて良かったと思う。広瀬すずは女優としてまだまだ伸びしろがあると思った。

1番こだわって撮ったシーンは?

毎日、全部クライマックスのつもりで撮影していたので正直に答えると全部になっちゃうね。

印象に残っているエピソードは?

撮影中、ちょうど台風が直撃したので、室内のシーンでの撮影に予定を変更するか打ち合わせをしていた。そんななかで撮影監督のホン氏が嬉しそうに「見て!雲がこんなに早いよ!」「見て!木がこんなに揺れているよ!」と景色を撮り始め、じゃあもう撮影するか!と、台風の雨を利用して撮影に挑んだ。

撮影監督/ホン氏との繋がり

李相日監督にとってホン氏(*1)は兄貴分のような存在で、韓国に行ったときには撮影現場を見学することも。パラサイトの撮影現場に行ったときには、李相日監督の作品の『悪人』を褒めていたとのこと。今回、李相日監督から声をかけて本作の撮影監督に。
*1…ホン・ギョンピョ氏。韓国映画『パラサイト』や『スノーピアサー』のカメラマン。

ロケ地

松坂桃李演じるフミが働く喫茶店は、一目で監督が気に入った物件。もう一つの候補と一緒にホン氏に映像と写真を見せたところ、やはりこの喫茶店にしようと意見が一致。ただ間取りが縦長だったので機材の置き場など撮影しづらいかもしれないと伝えたが『スノーピアサーで電車ばっかりとってたから大丈夫じゃない?笑』とのことでロケ地が決定。

シネスコサイズにしたのは?

プロデューサーが、李相日監督と撮影監督のホン氏のそれぞれに画面サイズを聞いたら、二人とも「シネスコ(*2)」と言い、回答がぴったり揃った。李相日監督は、役者陣のアップの映像をシネスコのサイズで撮りたかったのがその理由。
*2…画面の比率を表したもので、シネスコの横縦比は2.35:1とかなり横長なサイズ。大画面の映画で迫力を楽しむために開発されたもの。他にスタンダード(横縦比1.33:1)やビスタ(横縦比1.85:1)などがある。

泣く泣くカットしたシーンは?

素材を繋ぎ合わせた初版が4時間くらいあって、最終的に150分にギュッとした。カットしたシーンは、カットするべくしてカットしたものになるかな。本編に載せてないシーンとしては、フミが大学の授業を受けているところ。授業の中でフミの好きなポーの詩を読む場面があるが、それはバッサリカットした。もしかしたらいつか何かに収録するかも。


⚠️ここから先はネタバレを含みます。
⚠️未鑑賞の方は、ご注意ください。

引用:公式サイト

アフタートーク(ネタバレあり)

⚠️ホン氏のアイディア

松坂桃李が自分の秘密を打ち明けるシーンは、もともと夜の時間に撮影するはずだったが、ホン氏のアイディアで夕方の時間に変更。喫茶店は、水の中をイメージして、壁をブルーグレー、窓はブルーフィルターを貼るなどして、全体的にブルートーンにした。例のシーンは水の中で二人がS〇〇するイメージで撮った。

⚠️もう一つのエンディング

実は本編とは別にもう一つのラストシーンを用意していた。
それは、二人が電車の中でシュークリーム食べ、サラサの顔についたクリームをフミがとってあげるというもの。二人が電車に乗っているのは、二人は社会に弾かれたのではなく、自分の意思で今の自分を選択したことの象徴にしようと思った、とのこと。

試写会アフタートークレポートは以上になります。
試写会では、試写会に参加した一般の人からの質問に回答するコーナーもあり、一つ一つの質問に李相日監督がとても丁寧に答えていたのが印象的でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?