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我が子が困っているときにどうやって学校に電話したらいいのか 

私は小学校教諭でありながら、小学生の子どもの保護者でもあります。

妻から
「子どもの学校でこんなことがあったみたい」
「あの子、大変らしいよ」

なんて話を聞くことがあります。
なんとなく話を聞いていると、どうやらAちゃんが大変らしいのです。
とにかくAちゃんが意地悪だと。

こんな話ありませんか?

その話をよくよく聞いていくと、妻はAちゃんと合わなかったBちゃんやCちゃんのお母さんから話を聞いているようなのです。

学校でもあります。
Bちゃんの立場のお母さんから連絡があって、話を聞いてみると「とにかくAちゃんが意地悪なことをしてくるから困っています。」という相談。
もちろん本当にいろんなことがあって困っているのです。
ただ、Bちゃんの保護者の頭の中ではAちゃんは極悪人になってしまっている感じ。

例えば、

鉄の性質はなんですかと聞かれたら、
①磨くとピカピカしている
②電気を通す
③引っ張ると延びる  etc…

と答えるでしょう。
この性質は実は、鉄が何かと出合わなければ見えてこないものなのです。
①は光と出合うことで見えてくる鉄の性質の一つです。
②は電気、③は大きな運動エネルギーと出合うことで見えてくる性質です。
つまり、性質というのは、何かと何かが出合うことで見えてくるのです。

鉄がそこにあるだけでは、その性質は何ひとつ分かりません。
見るだけでも光と出合わなければなりません。

何かと出合うことで見えてくる性質 著者作成

このことを使って、先ほどのAさんの話を考えていきたいと思います。

例えば、鉄さん、銅さん、酸素さんがいたとして、3人が仲良くしているとします。3人で仲良く遊んでいると、鉄さんが茶色くなって、ボロボロになって、変な匂いもしてきます。あんなにピカピカ輝いていた銅さんもどす黒くなってきます。そうです。さび始めるのです。

さびたくない鉄さんや銅さんからすると酸素さんは極悪人なわけです。
そして、鉄さんや銅さんの保護者の方の立場になると、実際に子どもはさび始めているわけです。どうしたのかを聞いてみると、酸素さんが毎日意地悪なことをしてくると子どもは言うのです。

鉄さんと銅さんの保護者の方が話をします。
そこで、「やっぱり酸素さんが意地悪なことをしてくるから、自分の子どもはあんなに輝きを失ってボロボロになってしまったんだ」と確証するわけです。

もうこうなると酸素さんは鉄さんと銅さんの保護者の方からすると極悪人です。
井戸端会議では、「酸素さんは危険だからあんまり近づかない方がいいね。」「来年のクラスは一緒になってほしくないな」なんて話をし始めるわけです。

確かにそんな一面もあるのでしょう。
ただ、10年以上教員をしてきて、小学生で心の底からの極悪人を見たことはありません。

酸素さんの性質の極一部なんだなと思いながら話を聞くことが大切なのだと思います。動物さんにとって、酸素さんはなくてはならない存在です。
それも酸素さんの性質の一つです。

じゃあ、自分の子どもが意地悪されて学校に行きたくないと言った時はどうしたらいいのか。

私は、目的をはっきりさせてから、行動することだと思います。
何が目的か。
「それは子どもが安心して学校に通い成長していくこと」だとします。
誰かを悪者にすることではないということです。
我が子を苦しめる相手の子どもを憎らしく思う気持ちも十分に理解できますが、それでは本当に我が子を守ったり成長を促したりすることはできません。

 まずは、子どもの話を半分くらいで聞き、感情移入しすぎないこと。そして起きた出来事を洗い出すことだと思います。そして、話を聞きながら、子どもがそうやって伝えていることの目的が何かをしっかりと見定めることです。意外とこの目的の部分がなく、原因ばかりに目が向いてしまうのです。なんで泣いてるの?を追求してもAちゃんの悪口しか出てきません。例えば、Aちゃんとの距離を取りたいと思っているのか。Aちゃんが憎くなってしまい、親と先生に言うことで罰してほしいと思っているのか。実はちょっと自分にも悪いところがあるけどそれを隠すために被害者のふりをして逃げようとしているのか。親の注目を浴びたいと思っているのか。Aちゃんではなく自分の思い通りに動いてくれない担任を悪者にしたいのか。なんとかAちゃんと仲良くしたいから介入してほしいのか。その目的によって、今後の対応が変わってきます。ここをしっかりと見定めないと、子どもにコントロールされてしまいます。

 次に学校への連絡です。我が子からの一方的な話だから何が事実なのかはわからないので学校で聞いてみてくれませんかと電話してみてください。担任もいきなり責められると気持ちがしんどくなってしまします。そのときに、我が子から聞いている出来事を担任に伝えて、関係者から話を聞いてもらい事実を増やしていくことが大切だと思います。
 私が考える事実とは、被害者側も加害者側も確かにその出来事は起きたと確認できたことです。この事実が多くなるほど話は進めやすくなります。また、このときに、解決に向けた方向性を伝えておくと担任も動き方が明確になると思います。離れたいと思っているのか、問題行動への指導をしてほしいと思っているのか、もう一度仲良くしたいと思っているのか、我が子にも強くなってほしいと思っているのか、出来事の捉え方を変えてほしいと思っているのか。などです。ただし、Aさんを罰してくださいという注文は学校で叶えることはできません。
 こういった出来事があると、ついついAさんを悪者にしてしまうのですが、本当に素敵だなと思う保護者の方の中には、我が子を傷つけてくるAさんの成長を願ってくれる方もいます。そういう方は、Aさんにも素敵な一面があり、Aさんを大切に思っている人がいるということを前提にして話をしているのだと思います。
 もし、今回の出来事から子どもがメッキ加工する術を見つけることや、距離を保つことを学ぶことができたなら、次に同じような人と出会ったときにもさびずにすみます。
 大切なことは誰かを責めるのではなく、成長を願うこと。これは自分への自戒も込めて。

今回の話は意地悪程度の話です。
いじめはどんな理由があっても許してはいけませんし、許されることではありません。早期に発見、解決し、大人の介入のもと、心と体、命を最優先にしなければなりません。また、法治国家である以上、私的な報復行為ではなく、法を破ったことに対する罰則として法に基づき処罰されることが望ましいと考えています。

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