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【ネタバレ】重めのインド社会見学へようこそ Netflix映画「ザ・ホワイトタイガー」


Netflix映画「ザ・ホワイトタイガー(原題:THE WHITE TIGER)」、意外と派手さはなく、重いストーリーを見続けられる集中力が求められます。ただし、脚本と映像のパワフルさにはグイグイ引き込まれるので、だれずに2時間7分、インド社会をじっくりと見ることが出来る作品です。
(本感想は、ネタバレを含ます、未視聴の方はご注意ください)


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◆こんな映画
インドの田舎出身の主人公バルラム(インド出身、アダーシュ・ゴーラヴ)は最下貧困層の生まれ。生家にいる時は大家族のために働かされ、運転手へ転身してからも、家族と雇い主である富裕層家族から搾取される人生。また、そこに「幸福」を見出せるほどに、貧乏人、使用人としての価値観が刷り込まれている。
自分の人生を左右する選択を何度か経験することにより、徐々に刷り込みの価値観から解放され、起業家へと転身するバルラム。
ストーリーは、インド訪問予定の中国の国家主席に対して、主人公が「インドについて」、「現在に至るまでの自分」を語る形式ですすみます。


いわゆるサクセスストーリーではない
あらすじを聞くと、サクセスストーリーかなと思わせますが、実際成り上がっていく過程は、後半に20分割かれる程度です。
焦点となるのは、生まれた時点から階級が決められている、インドカースト社会に、凡人が抗っていくには何をすればいいのかという点です。
圧倒的に面白いのが、ナレーション。中国とインドは、外から見れば広大な国土、人口爆発、貧富の差という共通点の多いアジアの大国。今後も公共事業政策などで距離を縮めるであろう2か国に対して、バルラムが切れ味良く語り掛けていくのが現代的。



◆ホワイトタイガーとは?
主人公のバルラムが、劇中度々「ホワイトタイガー」を特別であることの比喩表現としてつかいます。
バルラムは現在だけを見れば、確かに特別ではありますが、野心家に転身する過程は、意外と地味です。ことあるごとに傷つき、悩み、もがいていく、そんな生身の人間が、人生を劇的に変える起爆剤に手をつける流れです。

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そもそも、自然界のホワイトタイガーは、白色はかえって目立つので(黄色と黒のしま模様は、森の中に隠れやすい)、餌の確保にも苦労するトラです。毛の大部分が白いだけで、他のトラと能力も変わりません。主人公が「悪目立ちするだけの、普通のトラ」となるのか、「崇高で神がかった白いトラ」となるのか、今後の展開はどちらとも読める終わり方をしています。

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◆脚本がいい、映像がいい、案外2時間7分は短い
上映時間は割と長いですが、テンポがいいので、気づいたらエンドロールのパターンです。映像の大半が、過去を振り返るものですが、現在の主人公が悟りきった感じで、毒舌ナレーションを入れるのがいいスパイス。

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因みに劇中、運転手として仕えた金持ち一家の次男夫婦についても、バルラムがナレーションで切り刻んでいます。インド出身の夫からは、富を持ってしても、階級に抗えない苦悩が見え、インド系アメリカ人の妻からは、アメリカンサクセスストーリーがくどいぐらい見えるのも面白い。彼女が、最初から最後までインドになじめず、口を開けば「アメリカでは・・・・」、夫には「いつNYにかえるの」と迫っているのも、笑えるおまけです。


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