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【毎日note433日目】9回目の有料note/美こそ全てか/長年のコンプレックスの結末(書評エッセイ)

この間夫と、「人間なんて一枚剥いだらただのクソ💩の入れ物だから…」と言い合い、イケメンや美女に生まれなかったことを慰め合っていたのですが( ̄▽ ̄;)

しかしそこで夫が、

「その皮も美しい方が人に好かれるんよ…」

と、元も子もないことを言い出し、絶望的な気持ちになりました。


もう30代半ばなので「美しさこそ全て」なんて全く思っていないし、そんなことを口にする気はありません。

しかし、「人間顔じゃないから!」なんてことを言う気もないのです。というか、言えないんですよね。そうではない現実をたくさん経験してきたから。


だって、私は地元でめちゃくちゃ可愛い同級生と一緒にカフェに行った時、とっても混んでいたのであきらめようと思ったところ、奥から若い男性店員が全速力で走ってきて、「今空けますから!!!」と、華やかな笑みを浮かべながら席を空けてくれたことがありました。


また、可愛い女子と一緒にバスに乗った時、その子の支払いでICカードが残高不足で使えなくなった際も、運転手さんはなんと

「いいよいいよ料金なんて!✨✨」

…と、信じられないことをおっしゃったのです。

いや良くねえ。料金は受け取れ。チャージすれば良いだけやん…?


女性はある程度の年齢まで「美醜」が色んな場面で予想以上に影響する現実を嫌というほど経験するのではないでしょうか?


私はつい最近も、2回だけ行った美容院で、カットとパーマが終わった時…。


「ホットペッパーやInstagramに載せる写真を撮りたいのです! 写真撮って良いですか?」と、担当の美容師さんにお願いされ、そんなことを希望されたのは生まれて初めてだったので、超絶嬉しくなって、ルンルン気分で顔出しまでOKしたのですがーー。


それから5ヶ月経過…。


未だにそのお店のInstagramにもホットペッパーにも公式サイトにも、私の写真は載せられておりません…。


猫ちゃんの話がたくさんできて、気に入っていたお店だったので、また行こうと思っていたのですが、最近泣きながらお店のカードを破り捨てました(本当)。

夫には爆笑されました。

写真撮影会、けっこう長時間かかったんですけどね…。

「こいつやっぱりブスやから使えねえーーー!!!」と思われたのでしょうか。



三島由紀夫の『女神』(新潮文庫)という小説には、「女は美しくなければ一文の値打もない」と固く信ずる男が登場します。

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本作は、戦前、ある財閥の商事会社の海外支店長をしていた木宮周伍(きのみやしゅうご)と、その妻・依子(よりこ)、娘・朝子の物語です。

周伍の女性美に対する研究は異常で、妻の依子に、あらゆる「美」の教育を施しました。


彼は妻を夜会へ連れて行ったあと、いろいろと彼女の動作や応対の批評をしたし、香水も、自分のお気に入りのもの以外は使わせませんでした。

それだけでなく、女の服飾は、空の色、海の色、夕焼けの色、一日のうちのあらゆる時間、光線、会合の雰囲気、すべてのものと調和や対照を保っていなければならず、そのこだわりは細部に至るまで発揮されました。


はじめのうちは「女優じゃあるまいし…」と感じていた依子も、結局、周伍の言い分の正しさがわかるので、おとなしく屈従するようになるのです。


しかし、時は流れ、終戦の年。依子が45歳の時、悲劇は起きます。

子を産んでも、女神のような美貌を持っていた依子ですが、空襲で顔の半面に火傷を負うのです。

火傷は醜い引っつりになって、顔の半面に残ってしまい、「美しくなければ価値がない」と夫に刷りこまれていた彼女は、その後、誰にも会わずに家に閉じこもるようになります。

依子の顔からは笑いが消え去り、その日以来、相手にしてくれない夫に対する恨みを晴らすことに、彼女の熱意は傾けられます。


ーーそれで肝心の夫はどうしたかと言うとですね。

あろうことか、13歳の娘・朝子に若い頃の依子の面影を見出し

「パパはとにかく、朝子を日本一の美人に仕立てる」

などのたまいはじめます…!


ヒステリックな奥さんを家に置いたまま、明るく聡明な朝子に「お前は美人だ」と毎日洗脳のように言い続け(←余談ですが、これは絶大な効果があるらしいですね。私も自分に言おうかしら…😱)。

まるで猛獣をならしたり、アシカに奇妙な芸当を教え込んだりするように美の教育を妻と同じように娘にも施したのでした。


彼の美に対する異常な執着は、妻と娘を大いに巻き込み、驚きのラストへと向かうので、まだ未読の方はぜひ読んでみてほしいのですが。


私は「美こそ全て」とは今もとても思えないけれど、それ以外の尊さだってたくさんあるとは思うけれど、人って基本的に美しいものに虜になるし、それは時に売り物にもなるし、ひどく執着する人が出てくるのも本能的に仕方がない部分もあるのかな…と思いました。

あと、本気で美しくなりたいなら、私も朝子パパを見習って、少しは努力せねば…と思いました。

朝子パパは異常だと思うけど、「美」に対する熱い思いは、見習って良い部分も確かにちらほらあったように感じたのです。


「毎日風呂に入ってるから褒めて」とか言ってる場合じゃないわ…。

でも正直、ズボラな私は、そこまで美に対する情熱はないなあとも思います( ̄▽ ̄;)


私が最近「美醜」について心底考えさせられた作品は、次はマンガなのですが、もう一つあります。

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