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【番外編】和田靜香の選挙日記@立憲民主党代表選挙(11/25)/『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?国会議員に聞いてみた。』特別企画

『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?国会議員に聞いてみた。』著者の和田靜香さんが、香川1区を飛び越えて、ついに立憲民主党代表選挙に立候補した小川淳也さんの選挙活動を緊急取材!のはずが、今回は都合が合わなかった和田さんの代打で、生命科学者の仲野徹先生にレポートしていただきました! 本書とあわせてぜひお楽しみください。

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 それはいきなり、やってきた!

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 ずんっ! なんと! 立憲民主党代表選挙の投票券!
 自分は、立憲民主党では選挙権のない「パートナーズ」だと思い込んでいたら、選挙権のある「サポーター」でしたわ!

 今年の春、小川さんとの対話でパリテの話をしたとき、「そうだ、地元の女性議員を応援しよう!」と東京8区の吉田はるみさんの事務所からサポーターになった。よもや、それがこんな形で投票権になるとは。意外な流れ。そして、実際に投票できるって嬉しいことだね。投票権って素晴らしいね。日ごろはあんまり実感しにくい投票権の素晴らしさを実感できたこと、とても良かった。
 もちろん、すぐ書いて、ポストに出した。

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 投票できるって素晴らしいこと。嬉しいこと。投票に行こう。今こそ清々しく私は言える。‥‥‥とか書きながら、実は今、「選挙日記」を書籍化するための作業の佳境でして、小川さんの青空対話集会の盛り上がりを見に行けず。それで、特派員を派遣しました(ウソ)。私の数百倍素晴らしい仲野先生が見に行くよ!とおっしゃるので日記を書いていただきました。私とは大親友‥‥‥ではまったくありません。ワッハハ。アタシたち、ノリはいいよねぇ?な仲です。バトンは渡した!
(和田靜香)

行け行けおがじゅん、どんと行け!

 選挙日記・番外編、仲野徹が書かせていただきます。誰の許しもなく「日本一おもろい生命科学者」を名乗っている大阪大学医学部の教授であり、かたわら、読売新聞の読書委員として書評を書いたりしています。
 和田靜香さんとは旧知の仲、ということはまったくなくて、『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』というタイトルのやたらと長い本を、ノンフィクションレビューサイトHONZ.jpで取り上げたのをきっかけに、京都の『絵本のこたち』という本屋さんでトークショーをさせてもらった、一ヶ月ほど前にたった一度お目にかかっただけの仲です。どうしてそんな奴が、という質問は却下。といいたいけれど、一応ご説明をば。
 Facebookで和田さんが小川淳也さんの青空対話集会のスケジュールをアップされた。おぉ、26日に東京で用事があるから、年休をとって25日に行きます!と書いたら、和田さん、その日だけは聞きに行けないとのこと。それなら選挙日誌を代筆しますわ。ギャラはないよ。オッケーです。というようなやり取りが展開されたのでありました。
 じつは演説会とかが大好きで、という訳ではありません。一度だけ、大阪市長選挙で応援の会に行ったことがあるだけです。残念ながら、応援していた候補は当選かなわなかったのですが、会の最後に「えいえいお~」とかやって、けっこうおもろかったのです。
 今回もそんな感じかと思ってかけつけましたが、予想に反してもっと落ち着いた感じ。対話集会なんだから、選挙の演説会とはちがいますわな。しかし、小川さんの演説能力、対話能力の高さはもちろん、聴衆のレベルと熱意には尋常ならざるものがあったのには心底おどろきましたわ、っちゅうような話を書きます。

 開始15分ほど前に有楽町イトシア前に到着したら、すでに30~40人が集まっている。すごいやないの。和田さんが、わたしの写真を関係者に前もって渡してくださっていたおかげで、仲野さんですかと、スタッフにすぐに見つけてもらえた。指名手配か…。なんでも、小川さんに紹介されるように言いつけられているとか。和田さんのパワーが垣間見える。
 11時3分前、小川さんが到着。で、早速、ご挨拶させていただくことに。名刺交換をして、和田さんとトークショーをさせてもらった仲野です、と自己紹介した。すると、本についてガッツリ書いていただいてありがとうございます!と言っていただき、いきなり好感度アップ!
 ちょっと早めに着かれたのだが、聴衆のことを考えてだろう、スケジュールどおり11時ちょうどのスタートだった。と書きたいところだが、小川さん、前列の人たちに握手したりして、なかなか演説台じゃなくて脚立にあがられず、司会の人に促される始末。でも、フレンドリーでむっちゃええ感じ。
 次に横浜での会があるので、今日は時間に余裕がない。10分くらいお話して質問をいただきますとの説明があってスタート。小川淳也は消費税率アップを目指すと報道されたことに対する説明がメインだった。確かにこの報道は問題だ。しっかりとした理由があってこその消費税アップなのに、この切り取り方はないだろう。
 消費税アップの意図について丁寧に説明されたので、よくわかった。まぁ、本で読んでたから知ってたけど。国のことなど大きな話をしっかり話してほしいと思われた方もおられたようだが、これはこれでいいんじゃないのか。そういったことはいろいろなところで書かれている。わたしなんぞは、今ここにあるビビッドな考えを聞けた方がうれしい。
 10分あまりでお話は終わり、質疑応答に入った。ひとりめは女性で、「与党の受け皿という考え方はおかしいのではないか」、ふたりめは男性で「企業の目的とはなになのか」という質問だった。「ありがとうございます」と受けて、ほんとうに真摯に応えてていかれるのが素晴らしい。説得力抜群であったことはいうまでもない。台本もないのに、言葉はじつにスムーズだ。それに、もらった質問から大きなスキームの話に持っていく技がすごい。
 三人目の質問者は男性で、今日は薬を飲んでいるから大丈夫だけれど、自分は精神障害を持っていると自己紹介された。そのような弱者が生きていくのにどのような社会を目指すのかという質問だった。まず驚いたのは、質問を終えられた時、聴衆から拍手がおこったこと。なんとレベルが高い聴衆なんだ。その方に「ありがとうございます」を繰り返しながら涙ぐまれる小川さん。小川さんも聴衆も社会をよくしたいという熱意にあふれているぞと胸が熱くなった。
 最後の女性質問者は、れいわ新選組との協力がもう少しうまくできなかったのかという内容だった。山本太郎と組めばどうかといわれることもあるらしい小川さん、時に心が揺らぐこともあります、って、そんなこと言うたらあかんのとちゃうん。正直すぎるんとちゃうん。もちろん、そんなことはありえないと十分に説明されたのはいうまでもない。なんというか、こういったちょっと危なげなことをおっしゃるバランス感覚が素敵だ。ひょっとしたら嫌う人もいそうだけれど。
 対話しながら、質問者から学ぶという姿勢が強く感じられた。香川一区で、大物政治家に胸を借りて鍛えてもらえたという発言も、たしか二回あった。ふつう、質問者から学ぶとかライバルの大物政治家から学ぶかいうと、いやらしい感じがするものだ。わたしは性格がねじれているのか、そういうことにとても厳しい。しかし、小川さんにはまったくそんな感じがしなかった。すべての人から、それどころか、森羅万象から学ぶことのできる人ではないか、そんな印象さえ持った。今でも十分だが、まだまだ伸びありそうだ。およそ1時間、ほとんど立ち去る人のいなかったのも印象的だった。

 と書くとずいぶんと硬い印象を持たれるかもしれませんが、「疲れてますかね」と尋ねる小川さんに「疲れてる~」と聴衆から返事があった時に、「だわね」と思わず讃岐弁でつぶやかれた時とか、思わず笑ってしまうようなシーンもありました。
 最後の方でおっしゃってた、テレビで怖く見えると言われて、口角を上げる練習をしてるというのには爆笑してしまいました。いやぁ、じつはわたしも気になってたんですよね。表情ではなくて、うつむき加減で話されるので、すこし上目遣いになって、大阪でいうところの「メンチをきる」ような感じにちょっとなるのが。今日は脚立の上からなんで全然気になりませんでしたけど。
 映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』を見て、和田さんとの本を読んで、それから和田さんに裏話とか聞いて、という基礎知識で小川さんに対する好感度は抜群でした。すでにマックスかと思っていたのですが、今日の対話集会でさらにアップしたことを申し添えておきます。
 研究を進めるには競争的資金を獲得しなければなりません。もちろん、研究計画を提出して審査を受ける訳です。ある偉い先生が、計画に対してではなく、その人につけるという研究費があってもいいのではないかとおっしゃっておられたことがあります。政治では、もちろん政策が重要だ。しかし、それよりも、この人ならばという選び方があってもいいのではないか。小川さんの対話集会の後、そんなことを考えながら東京都美術館でのゴッホ展に向かいましたとさ。

(生命科学者 仲野 徹)

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(ふたりでラジオ番組やりたい病です)
(仲野徹先生と和田靜香)

著者:和田靜香(わだ・しずか)
相撲・音楽ライター。千葉県生まれ。著書に『世界のおすもうさん』、『コロナ禍の東京を駆ける――緊急事態宣言下の困窮者支援日記』(共に共著、岩波書店)、『東京ロック・バー物語』(シンコーミュージック)などがある。猫とカステラときつねうどんが好き。Twitter:@wadashizuka

取材協力:小川淳也(おがわ・じゅんや)
国会議員。1971年・香川県生まれ。東京大学法学部卒。1994年自治省に入省し、2003年に民主党より衆議院議員選挙に初挑戦するも惜敗。2005年に初当選。現・立憲民主党所属の衆議院議員(5期/2021年7月現在)。レンチンした「おあげさん」が好き。Twitter:@junyaog


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