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自己学習環境 SOLE のやり方

前回、自己学習環境 SOLE (Self-Organized Learning Environment)との出会いについて書いた。

今回は、SOLEを実際に実施するときの要点をまとめてみよう。

SOLEの3要素

SOLEは、学習者が自ら学びの流れを管理しながら進めていくもの。基本的には、教育者が学びを指導したり、管理したりすることはない。
一つのSOLEセッションは大きく3つのパートに分かれて進められる。

  1. Big Question

  2. Investigation

  3. Review

1時間のSOLEセッションの場合、1.Big Question は5分、2.Investigation は30分、3.Review は25分というような時間配分で実施する。
前回の記事にも書いたが、インターネット上でSOLEを始めるための手順、資料などを入手することが出来るサイト(StartSOLE)がある。ここでは SOLE で使える先生用の資料も提供されている。

【参考】StartSOLEにアップされているSOLEの進め方のビデオ

誰でもログインアカウントを作ることが出来るので、ぜひ、一度ログインしてみて欲しい。後述する Big Question も1万個以上の例が用意されている。

Big Question

SOLEは Big Question(大きな問い)から始まる。
Big Question は、簡単には答えにたどり着けないような問い、または正解がない問いが望ましい。どんな Big Question を設定するか、が子どもたちの学びの深まりに繋がってくる。Big Question の設定がSOLEのキモになる。

例えば、「三角関数」を学んでもらうために直接「三角関数はどうやって使うのか?」と問うよりも、「隕石が落ちてきたとして、それが地球に当たるかどうかはどうやって調べたらいい?」と聞いた方が子どもたちの好奇心をくすぐることが出来る。(Sugata Mitra氏 TED Talkを参照)

Big Questionをいくつか用意してグループ毎に選べせても良いと思う。より大きなテーマに対して、多面的に捉えてもらうために異なる視点から設定した Big Question を用意しておけば、短い時間で幅広い視点で探究された内容を聞くことが出来る。

ファシリテーターは、Big Question の背景を話しても良い。なぜ、この問いを選んだのか、学習者に学んでほしい、より大きなテーマに対する意識付けをしても良い。学習者が好奇心を持って Big Question に取り組んでもらえるようなお膳立てが出来るといいと思う。

Investigation

Investigation は、探索の時間。学習者が、問いに対して自分なりの解を出すために、インターネットを使って関連する事実を調べたり、グループの仲間の意見を聞いて考えをまとめたりする時間。

SOLEでは、自分の意見を交換するだけではなく、事実を探り、その事実を共有しながらグループでの意見をまとめていくことが求められる。Big Question に対する解を見つけるために「事実」を基にしていることが大切になってくる。そのうえで、グループの仲間と意見を交わすことによって「解釈」を加えていく。

この「解釈」から、また新たな問いが生まれる。事実に基づいて自分が考えたことは本当だろうか? これまでに同じ発想をした人はいないだろうか?

事実はどうやって調べればいいか? Sugata Mitra氏は、「わからないことがあったらクラウドに聞く」と映画 "THE SCHOOL IN THE CLOUD" の中で語る。日々新しい事実が生まれる現代では、インターネットを駆使して事実を探究するのがいいだろう。

ただ、SOLEで重要なのは「事実」を調べて、それを基に学びを深めること。インターネット検索を前提としなくても、書籍とか、専門家に聞く、という形で「事実」を調べても良いと思う。

このセッションでは、ファシリテーターは何もしなくて良くなるのが理想。

しかし、グループでの探究が進んでいなかったり、孤立してしまう人がいたり、クラス全体の学びの環境が脅かされるような場合には、学習者が興味を持って取り組めるように、さらなる問いを投げてみる、など、学習環境を整える必要がある。

Review

Review は、グループが Big Question に対する自分たちの解を発表する時間。学習者には Investigation の時間の中で、グループとしての解をまとめておくように伝える。

Big Question にもよるが、大事なのは正解を導き出すことではない。正解がわからないオープンな問いの場合には、どのような解でも正しい。大事なのは、どのような視点で、どこを調べて得た事実なのか、それを基にしてどんな解釈をしたのか、が説明できること。

同じ問いに複数のグループで取り組んでいれば、異なる解が出てくることも考えられる。別のグループの意見を聞くことで視野が広がり、また新たな問いが生まれるかもしれない。
異なる Big Question を設定していれば、他のグループの探究結果は新たな気付きになるはず。

ファシリテーターは、グループがどうやって解にたどり着いたのかを聞く。調べた事実が本当に事実なのか、それは誰か個人の意見ではないのか、も確認できると良い。

ファシリテーターの役割

ここでは、あえて「ファシリテーター」と書いた。学校で実施する場合には、教員が担うことも多いと思う。

SOLEの場合には、「教える」役割ではなく、あくまでも学習者の学習環境を整えるのがファシリテーターの役目。あとは、学習者自身が学びを自己管理して進めていく。

Sugata Mitra氏の取り組みでは、Granny(おばあちゃん)という役割の大人が登場する。Granny の役割は問いを投げかけ、学習者の学びを応援すること。学習者が何か事実を発見すれば「すごいね、それはどうやって調べたの?」と聞いてあげればいい。

教えることに長けた学校の先生方が、Granny の役割に徹することが出来るか? これが学校でSOLEを成功させるために重要なポイントかもしれない。

SOLEは、知識を学ぶことも大切だが、「学び方を学ぶ」ことが最も大事。問いに対して自分で「事実」を調べて、協働して「解釈」を深めることが出来るようになれば、どんなテーマに対しても自分で管理しながら学習を進めることが出来る。
まさに新学習指導要領で求められている「主体的、対話的で深い学び」が身に付くことになるはず。

StartSOLEには、学齢、教科などによって検索が可能な Big Question が大量に用意されている(現在は英語のみですが、将来的に日本語化の予定)。まずはやってみる、ことから始めてみませんか。

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