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【千葉ロッテコラム】江村にぐっと引き込まれたチームの危機を救った話

10月31日、この日なぜか眠りが浅く全然眠れなかった。
眠れずにスマホをポチポチ見ていたら飛び込んできたのが「三木亮と江村直也の引退」の報だ。その時点で午前2時。その報を見て朝4時まで眠れなかった。

江村…そうかぁ、伊東監督に見いだされて使われ始めたのも10年前だったか…13年目、32歳、まだまだ若いはず。キャッチャーだし、もっともっとまだまだ活躍の幅もあったと思っていた。

2013年、オープン戦から起用され、正捕手だった里崎が離脱したこともあり64試合に出場。
しかし翌年、里崎が早々に離脱するもルーキーの吉田裕太、2年目の田村龍弘が積極起用され、早くも埋もれ気味になっていく。
その後も佐藤都志也、柿沼友哉、細川亨、加藤匠馬、松川虎生と様々な捕手の壁が江村に立ちはだかっていた。

しかし、とは言え江村抜きで語れない試合なんかも出てくる。
2016年8月7日。この試合で江村にぐっと引き込まれた。

この試合、涌井と田村のバッテリーで始まったが、オリックス中島にホームランを打たれるなど3回5失点という大乱調で涌井が降板。そして田村まで交代することとなった。

コールされた投手は黒沢翔太。育成から上がってきたサイドハンド投手でこの年も大半をファームにいた。
そんな投手をだれがリードするのかと思ったら江村が出てきた。

4回裏、黒沢は先頭の安達にヒットを浴びるも無失点。結果的に3人で切り抜ける。
すると5回表、江村に打席が回ってきた。山﨑福からきれいにライト前にヒットを放った。これが2年ぶりの安打と打点だった。

5回裏も黒沢がピンチを作るも無失点。6回表にはさらに1点を返し2点差。
6回には前年40試合に投げた香月良仁がマウンドに。とはいえこの年は1軍と2軍を行ったり来たりで不安定な様子もあったのだが、9球で三者凡退に切って取った。

そして7回。田中靖洋がマウンドに。前年西武を戦力外になり初登板だった。
がさっそく糸井にヒットを浴びる。
江村が盗塁で刺すも、T-岡田にヒット、モレルに四球、中島にもヒットを浴びワンナウト満塁。

ヤバいぞ、全然勝負できてない…スタンドの空気がめちゃくちゃ重かったのを覚えている。
バッターは西野真弘。すでに2安打している。しかし西野はショートゴロ。ショートの鈴木はホームで1つアウトを取った。そして江村が一塁に矢のような送球を投げホームゲッツーが成立。無失点に抑えた。スタンドは火がついたように盛り上がった。

「これ、このまま抑えてもし逆転したらヒーロー江村なんじゃないか…?」

そんな声があちこちから聞こえてきた。

8回は阿部和成。ここも3人であっさり抑えて見せた。江村様様や!という声が上がってきた。

…結局試合は負けたんだけど、黒沢、香月、田中、阿部というメンバーを見事にリードした姿にぐっと来た。浦和でこの投手陣としっかりやってきてたんやな…と。

その後も決して多くない出場機会で輝きを見せた。満塁ホームランを打ったこともあれば、2023年には森の初勝利を導くリードを見せるなど。浦和で頑張ったメンバーと一緒に一軍で奮闘する姿は見ていて気持ちがよかった。

そういったこともあり、引退するのはまだ早いなと思っていた。
浦和で若い投手を引っ張って一緒に一軍に上がって活躍してほしかった。

たまに出てくるインタビューや映像で笑わせてももらえた。山賊打線が話題になったころ、「(中村、浅村らの大阪桐蔭出身者が話題になっているのに)自分のところには誰もインタビューに来ない」と寂しがっていた。そればかりは仕方ない。

数少ない打席が回ってくるとスタンドは盛り上がる。どんな結果でも楽しくその打席を見守ることができる。そんな選手だった。

来季からはコーチになる見込みだという。その明るさで若い捕手や投手を引っ張って活躍につなげてほしい。

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