空っぽの一升瓶

「たまちゃーん」と覗くと誰もいない。
転がる一升瓶。飲みかけのビール。こたつが雑然と並び、コンビニマンガとCDが積まれてる。「いないね、先飲んでおこう」と冷蔵庫を開け、赤星を一本。カスッと栓を抜いて、とくとくとビールを注ぐ。

「献杯」と一言。
先日亡くなった愛すべき屋台を追悼し、ぐいっと飲み干す。
仕事も忙しいし、平日飲むとペースが乱れるとわかっていてても、この酒を断ることの方が人として嫌だなと杯を乾かし続ける。

おかげで仕事は色々ずれ込んでしまった。しょうがない。
それでバカほど忙しくなったけど、巻き返すのでしばしお待ちを。
この週末は大学での講義。なんと10講義分一気にやる。死ねる。
来週はWSの講師と、東京出張。休みなし。

この土日から来週末に向けて、走りきるために今日は早く寝よう。
そう。真っ暗な屋台の前に座り込んで、松竹梅を一升開けた。
亡くなったお父さんにもほれほれとコップに酒を注ぐ。
あーだこーだと友達と語り、ふと見ると少し酒が減っている。
さては、こっそり飲んでるな。なんていって、ニヤニヤ笑う。
羽とか生えちゃったりしてるんじゃないの。ふふふ。

愛すべき人のための酒。
俺らが死んだらあの世で飲もう。

いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。