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若者に「逃げていい」と言うべきか?

大人が若い人に向けて「逃げていいんだよ」ということがある。
僕も全然逃げていいと思ってる。仕事で人格傷つけられるくらいなら、そんなとこ辞めちゃえよって、最近だったら命に関わるし、精神的に病んでしまったら次の職場でもフルスペックだせないし、人生に対してロスが多いから逃げてもいいと思っている。

ただ、息子が宿題が嫌で泣きじゃくるのを見て、ふと思った。今の息子の状態に「やらなくていいんだよ(逃げていいんだよ)」って言えるのか?って。うん、言えないなーと思った。闇雲に逃げていいよ〜というのは少し危ないなと思ったのだ。

大学で先生をしていた時の卒業生が連絡をくれた。
卒業の際に「死なない程度に働けよ〜、しっかりサボれよ〜」と言われたの救われてますと。そうなのか。言っといてよかった。

僕らは社会人になって、それなりに生きて、大変なことも良いことも体験したから一言で「逃げてもOK!!」と言えるんだけど、ここに至るまでの経験がなくて、そのままこの言葉を受け取ると、その子に対してプラスじゃないんだと思うのです。

大事なのは、今課せられてる逃げ出したいほどの責任をしっかり自分で見極められているか。これは自分の人生にとってマイナスだ、プラスだと考えることができているかがとても大事じゃないかと思う。大人のみんなはわりとわかってもらえるかもしれない。

僕の体験からすると1年目の時に、とても苦手なお客さんがいた。
僕が文系的な人格で、その人は理系的な人格。しょっぱなから苦手なタイプだなと思っていたし、会話や議論の詰め方がきつい。しまいには電話がかかってくるたびにもう出るのが嫌だという時期があった。

その時、新人にしては重責ある仕事での出会いであった。プレッシャーもすごく、やったことのないものごとに囲まれていた。胃が痛く、毎晩朝方まで仕事をしてトボトボ帰っていた。家のそばの美味しくも不味くもないラーメン屋で飯を食ってる時にスーツをきたサラリーマン上司と部下が隣で会話をしていた。「お前はまだ若いから自分のことで精一杯なんだよ。経験が視野を広げるから、もう少し頑張れ。俺も助けてやるし」って上司。○○さん〜と泣きながらラーメンをすする若手。

ドラマかよ!と思いながら、でもそうだよな…と他人の教えを無料で拝借して腑に落ちた。僕が逃げ出したいと思っていたのは、その人が詰めまくる人だったって見方なんだけど、こちらのアイデアに対して、しくじりそうなところを全て的確に指摘していたし、電話が何度もくるのもまた詰められる…と思っていたけど、僕が新人で右も左も分からないからこそ連絡してくれている。

気がつけば、なんか一緒にものを作ってる人なのに否定されることで「敵」だ!と思い込んでるペーペーの自分がいたのです。なんか自分を守ろうとしているだけで、本質的には僕を心配してくれていたり、教えてくれてたり、可能性を引き延ばそうとしてくれていたのに、若い僕は「敵だ!」と身構えてしまっていた。すごい自分が情けない…小さい人間だなんて思ったりした。

僕の場合は、自分の未熟さゆえの逃げ出したい気持ちだった。
このとき、僕が何も考えずただ辛いだけで逃げていた、今の僕はいないと思っている。今の自分は何が辛いのかを理解しようとする経験もなしに闇雲に逃げて良いと促すことは、逆に若い人たちの可能性を摘んでいることになるんじゃないかと思った。

僕が携わる若い子達には「本気出すな。年1~2で必ず本気以上で乗り越えないといけない時くるから、それ以外は80%くらいでやっとけ」とか「心がしんどいわーって時は飲みにいけ。俺んとこ来たらおごってやる」とか。そういう言葉を投げかけている。

ただし、本当にブラックで悪質で危ない場所もある。
その時は、もう1秒でも早く逃げ出していい。悪い大人もいっぱいいるから。
でも、それ以上に良い大人も同じ数だけいるので、もし辛いときがあったら、何が辛いのかの根元を見てみる。酒でも飲みながら、友達に聞いてもらいながらでも良い。何も考えずに逃げ出すのは全てが全て正しいわけじゃないこともある。

だいたいのうまくいかない状況は、おじさんの経験上、自分の未熟さにある。今これを読んでる人も、自分自身のことをみるには鏡をみるしかないように僕らは圧倒的に自分を知らない。そして自分を知ることは成長する一歩でもある。考えた末に、これは逃げないといけないと気づいたら、次同じ状況や環境には何かある…という嗅覚を得れるし、僕のように自分の未熟さに気付くこともある。

一番損をするのは無思考に逃げ出す選択を選ぶことである。
今の大人が言いたいのは、かつて逃げ出すという選択肢が僕らにはなかったからだ。常に逃げ出すという選択肢を持って良い。そう言いたいのです。
だからこそ、自分が選ぶ選択肢は慎重に、自分と相談しながら決定しよう。

辛くなったら飲みにいこう。

Photo by Matheus Bertelli from Pexels

いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。