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当たり前のことに感謝して

パタパタと雨の音が聞こえて目を覚ます。
隣では猫と息子が眠っている。可愛らしいなと眺めていたら、ついうっかり眠りに誘われてコタツで寝落ちしていた。お風呂からぽたんぽたんと水が滴る音が聞こえる。のっそり起き上がって静かに漏れる風呂の水を止める。僕はやたら耳がいい。

にゃあと足元に猫が擦り寄る。うちにいる末っ子猫。
抱きかかえてリビングに戻り本を読む。外は少し暗い。時計をみるとまだ4時半ごろだ。曇天。光がどこの隙間からも漏れることなく、この街を覆っている。いつも、その雲の上の晴れ渡った空間を想像する。

ただいまーと黄色いスコップを持った娘が帰ってきた。
「穴を掘る」のがブームらしい。休日に友達と待ち合わせをして穴を掘っている。とてもいいな。そのスコップも、いい黄色だな。なんで穴掘ってるの?と聞くと「わかんない!」と笑顔でいう。とてもいい。

子供部屋からクリスマスツリーを抱えた妻の荷物を手伝って、リビングで飾り付けが始まった。末っ子猫は初めてのクリスマス。飾り付けに猫パンチを決め込んでカウンターを食らって威嚇している。本当に何も知らないのだな。去年同じことをしていた兄猫は「アホか」という顔で末っ子を見下ろしている。

昨夜、ナポリタンに挑戦した。僕は昔ながらの喫茶店ナポリタンを心から愛している。レシピに倣って作ったものの、僕が思い描いたものとはかけ離れたあっさりしたものだった。違う、そうじゃない。もっと生々しいナポリタンなんだよ。重たく、ズドンとくる、あれだ。何が足りなかったのかをFacebookに尋ねると人それぞれの「俺のナポリタン」がある。とてもいい。僕のこれぞというナポリタンへの冒険が幕を開けた気がした。

今日は子供達がリゾットを妻に頼んでいた。すごいな、その年齢でリゾットなんて言葉は持ち合わせてなかった。近しいのでいくと「ねこまんま」くらいだ。当時の僕の世界にリゾットは存在してなかったはずだ。

仕事も全て遮断して、久々に週末をゆっくり過ごせた。
この時期はね、仕事というかセットでついてくる忘年会ってものに振り回される。先日、寝落ちして気づいたらスナックだった。残波と電気ブラン足したらあかんわ。数年前は、この酒酸っぱいなーとポン酢を飲んでいたこともある。まだマシな方だ。この時期は365日で一番静かに気配を消す時期でもある。内臓がストライキを起こす。いい関係で生きていきたいので気配を消すのだ。

本当、めちゃくちゃ当たり前なこというけど。
人生は進んでいくんだな。何もしなくても、何かしていても。
喜んでいても、悩んでいても、苦しんでても、何も感じてなくても。
ぼうっとそんなことを考える。でも時間が進まないと、納得できなかったナポリタンにうまいうまいと喜ぶ子供達の顔も、幸せそうに眠る猫の姿も、食い過ぎたと動けなくなる妻も見ることはできない。当たり前だけどね。

今日は当たり前のことに感謝して、眠りにつこうと思う。

いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。