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【読書感想文】蟹工船・党生活者

'23.7.2読了

著 者:小林多喜二
出版社:新潮社
商品ページ(丸善ジュンク堂):https://honto.jp/netstore/pd-book_02339205.html

―――あらすじ―――
海軍の保護のもとオホーツク海で操業する蟹工船は、乗員たちに過酷な労働を強いて暴利を貪っていた。”国策〟の名によってすべての人権を剥奪された末組織労働者のストライキを扱い、帝国主義日本の一断面を抉る『蟹工船』。近代的軍需工場の計画的な争論を、地下生活者としての体験を通して描いた『党生活者』。29歳の若さで虐殺された著者の、日本プロレタリア文学を代表する名作2編。
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いづれか必ず読まなければならないと思っていた本を30近くになってようやっと読みました。
労働者であるならば一度は読んでおいた方が良いと個人的に思っている作品です。
労働者は等しくプロレタリアートなので、資本主義に対する戦い方を知っておくこと、戦いに関する過程を間接的にでも知っておくことは大事かと思っています。

『蟹工船』では、自然発生的なストライキとある種の敗北とある種の勝利の物語なのだろうと思います。
作中でのストライキと労働闘争は敗北します。リーダーを選出してしまったので、リーダーが刈り取られる形で終焉しますが、「もう一度」、生存をかけて戦います。
この船の中で何度「もう一度」があったかは不明です。
何度でも繰り返したかもしれませんし、数回繰り返したのちに無気力になったかも分かりません。
それでも、戦いに至る過程を知れるものだと思います。

『党生活者』では、事前に準備を行い、仲間を増やして行う労働争論の話でした。また、当時の赤い人々がどのように暮らしていたのか、一面を知ることが出来るものかと思います。
個人的には、こっちの方が読みやすかったです。
首切りを前にしていくら支払うと事業主は言っているけれど、それを支払うつもりは最初からないのが明白の状況で、赤の人々が争論を起こすために仲間を増やそうとする内容です。
当時は赤なだけで逮捕、処罰対象でしたし、今のように人権を考慮した処罰ではないので、下手に捕まったら命を落とします。赤の活動自体が命だけです。実際、著者は特別高等警察の拷問で死亡しています。
仲間と連絡を取り合い、仲間が捕まったとなれば逃げ回る生活。その上で、ビラを作り、争論のための準備を進める。
プロレタリアートの社会的地位と生活のために、自らや仲間のためではなく全てのプロレタリアートのための戦いの姿がぼんやりと見えた気がします。

いづれ読もうと思っていた作品を、ようやっとですが、読めて良かったと思います。

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