マガジンのカバー画像

写真について

42
運営しているクリエイター

記事一覧

カメラと私

外出する時は、だいたいいつもカメラを持ち歩く私。でも、以前は海外旅行に行く時ですらカメラを持ち歩かないほど、写真を撮ることに関心がなかったのです。その私が、ある日を境にして、カメラを傍らに置くことなくしては暮らしていけないほど写真にのめり込むことになりました。その時から10年経つ今、あらためて写真と私について振り返ってみることにしました。 いつ、どのように、写真に興味を持つようになったのか。私ははっきりと覚えています。プラハの裏通りにある薄暗い小さな書店で、一冊の写真集を手

Rolleiflex、故郷に帰る

ドイツという国に関しては疎くても、Rolleiの二眼レフを持っている方ならブラウンシュヴァイク(Braunschweig)という地名には聞き覚えがあるのではないでしょうか。1927年、この地でRolleiflexのプロトタイプが完成しました。私の手元にあるRolleiflex Original(1929年)の前面プレートには、Franke & Heidecke Braunschweigと誇らしげに刻まれています。 ある時、Rolleiの二眼レフの歴史について書かれた本を読み

Xenotar、Kreuznachへ行く

新たにLeicaを買うたびにその都度それをWetzlarへ持って行き、Rolleiflex Standardのレンズ・TessarをJenaに里帰りさせ、Rolleiflex 2.8F PlanarをBraunschweigのかつてのFranke & Heidecke社屋の前に立たせたように、Rolleiflex 2.8F XenotarをKreuznachに連れて行ったことがあります。今日はその件について書こうと思います。 クロイツナッハKreuznach、正しくはBad

スイス紀行 1.

Corviglia先週スイス南東部エンガディン地方に数日間滞在しました。滞在期間中はいつもより1時間以上早起きし、天気の良い日は朝から午後まで14km、15kmと山道を歩きました。東京で15km歩くなんてちょっと想像できないのですが、スイスの山を歩いている分には時間さえ許せばいくらでも歩き続けられそうな気分になります。 この先、その時歩きながら撮影した写真をエリアごとにまとめて、何回かに分けて投稿していきたいと思います。 今日投稿した写真は、St.Moritz Badからケ

スイス紀行 2.

Guarda『ウルスリの鈴(Schellen-Ursli)』という絵本を知っていますか。私が幼稚園の頃、繰り返し読んだ本です(今でも岩波書店がこの絵本を出版し続けています)。そして、この物語の舞台となった村が、Guarda(グアルダ)です。 実に20年ぶりにこの村を訪れました。列車が駅に停車すると、目の前にマイクロバスが停まっていることも、このマイクロバスに乗り込み急なヘアピンカーブを一気に約300m登ると山の斜面に張り付くように美しい家が並んでいることも、村の背後の急斜面

スイス紀行 3.

Taraspエンガディンの谷をイン川に沿って東西に走る鉄道。その東の終点にシュクオル(Scuol)という駅があります。ここから更に東へ向かえばオーストリア、南に向かえばイタリアという場所です。ここからバスに乗り、深い谷を越えて約20分ほど西へ戻ると、山の上に古い城が聳え立っています。タラスプ城(Schloss Tarasp)です。 土地鑑のない場所を旅する時、公共交通機関の中で乗りこなすのが一番難しいのはバスではないでしょうか。私たちは1時間に1本しか走っていないバスを誤っ

スイス紀行 4.

ホテル今回の旅では、約20年前に1人でエンガディンに来た時と同じホテルに宿泊しました。その時はシングルベットルーム、今回はダブルベットルームでしたが、どちらの窓からも教会の塔が見えました。もしかしたら、20年前に宿泊した部屋の隣の部屋だったのかもしれません。 教会の鐘は、朝も昼も夜も30分おきに時を刻みます。真夜中も例外ではありません。若干ボリュームを落として鳴り続けます。すぐそばで鳴っているのに、不思議とうるさいと感じることはありませんでした。 鐘が鳴り始めると、私はほと

スイス紀行 5.

St. Moritz (Segantini Museum)ジョバンニ・セガンティーニはイタリア人(厳密に言えば彼はイタリア北部の生まれですが無国籍でした)でスイス山岳地帯の風景を数多く描いた画家です。絵画というと、私はブリューゲルやヒエロニムス・ボスなど北方ルネサンス期の画家を偏愛しているのですが、19世紀を生きたセガンティーニはその唯一の例外です。私は20代の頃からこの画家の絵が好きで、20年前にスイス東南端のエンガディン地方まで遥々旅した理由の一つは、サン・モリッツにある

プラハでFlexaretを買う

1. プラハ今年(2019年)2月、週末を利用してプラハに行くことになりました。 東京にいた頃は、仕事の合間を縫い、年に2回、3回と、たとえ数日間の短い休暇でも長時間飛行の労を惜しまず頻繁に訪れていたプラハ。それほど熱を上げていたプラハですが、ドイツに移住して以来、とんとご無沙汰していました。今回のプラハは、なんと、10年ぶり。ドイツに移住して以来、時間に余裕を持って旅行することができるようになったので、例えばピレネー山中の町とか、グレートブリテン島の最北端とか、たっぷり時間

スイス紀行 7.

St. Moritz (Museum Engiadinais)エンガディン滞在最終日は一日中雨でした。翌朝にはこの場所を去らなければなりません。天気が良い日なら迷わず山を歩くのですが、この雨という機会を利用してサン・モリッツにあるエンガディン博物館(郷土博物館)を訪れることにしました。この博物館の創設は20世紀初頭ですが、2015年から2016年にかけて大規模改修が施された、まだ真新しい雰囲気が漂う博物館です。建物はこの地方の伝統的様式で建てられた100年前のものですが、内部

アシャッフェンブルク

今年は9月以降もなかなか気温が下がらなかった中部ドイツ。しかし、先週末ひと雨降って最高気温が一気に10℃以上下りました。今週末からいよいよ秋らしく雨天が続く予報が出たため、一昨日の晴天が広がった日に日帰り旅行に出かけました。行き先はアシャッフェンブルク(Aschaffenburug)。バイエルン州に属する街です。 アシャッフェンブルクと言えば、ドイツ中部独特の薔薇色をした石で建てられた壮麗な城(Schloss Johannisburg)。内部は美術館になっています。実はこの

Rolleiflexで撮るイタリア 1.

ある日、私がフランスを撮った写真を見て友人が言いました。あなたの国はフランスじゃなくてイタリアよ。イタリアで撮った写真のほうが断然いい。 …実は私自身もそう思います。写真を長く長く続けている人なら、必ずいつか「これはスーパーショット」と言い切れる写真を撮ることができると思うのですが、私の場合、その年に1回撮れるか撮れないかというスーパーショットの大半を、実にイタリアでRolleiflexで撮影しているからです。 ここまで写真をご覧になって、「スーパーショットって期待させて

プラハで再びFlexaretを買う

1. Flexaret VI型を手放して後悔する 11月の終わり。実に4年ぶりにプラハへ行ってきました。今回は、そこでチェコスロバキア製のカメラ、Flexaretを買ったことについて書こうと思います。実はこのカメラ、4年前にも一度購入しているのですが、結局使いこなせなくて一度手放しています(その辺りの詳しい経緯については、以下の投稿をご覧ください)。 この投稿にも書きましたが、手放した後にFlexaretで撮った写真を改めて見たらて、けっこう良い写真が沢山あることに気付き

Josef Sudekのアトリエ

写真に興味を持っている方なら、一度はその名前を聞いたことがあるに違いないチェコの写真家がいます。その名はJosef Sudek。 彼がかつて住んでいた住居と、アトリエとして使われていた小屋は修復され、現在、それぞれ小さな写真美術館として公開されています。今回の旅ではそこへ行ってきました。住居(現・ギャラリー)へ行った時は開放値4.5という暗いレンズが搭載されたFlexaretを持っていたため、暗い屋内の写真を撮ることはできませんでしたが、窓が大きなアトリエはLeica M2