見出し画像

サルの自由なエサ探し行動から脳の意思決定メカニズムに迫る



はじめに

動物にとって、エサを探すことは生きていくために欠かせません。どこでエサを探すか、見つけたエサ場をいつ離れるかを、常に決めなければなりません。これまでの脳研究では、サルを椅子に座らせて頭を固定し、決められた手順で反応させる実験しかできませんでした。これでは、エサ探しの連続的な判断の仕組みは分かりません。体が拘束されると、サルの時間の感覚もゆがむかもしれません。そこでこの研究では、サルの頭に電極を付け、無線で脳の活動を記録しながら、2か所のエサ場を自由に行き来してエサを探せる実験をしました。サルを自由に動かすことで、より自然な状態での判断のメカニズムを解明したいと考えたのです。

結果


実験の結果、サルはエサがもらえる確率を、これまでのエサをもらった記録だけでなく、エサ場で待つ時間からも予測していることが分かりました。エサがもらえると予測していたのに外れると、次は今までより長く待つか、別のエサ場に移動しました。つまりサルは、待ち時間とエサの確率の関係を学習し、それを基に行動を変えているようです。さらに、サルの頭の脳の活動を調べると、待ち時間やエサの割合などの実験条件が、時間と共に脳の中で連続的に表されていました。そして驚いたことに、サルが次にどのエサ場に行くか、いつ行くかは、実際の実験条件よりも、脳の活動から推定した方がよく当たったのです。つまり、脳の活動には、サルの頭の中のモデルが表されていて、それが直接、行動の決定に関わっていると考えられます。

考察


この研究から、サルはエサのもらえ方のルールを脳の中にモデルとして持ち、それを基に柔軟に行動を決めていると考えられます。サルを自由に動かす自然な環境でも、サルは未来のエサを予測しながら判断していることが証明されました。これは、これまでの古い行動理論では十分に説明できない、柔軟な行動決定の仕組みがあることを示唆しています。この研究は、動物を拘束した不自然な実験ではなく、自然な行動中の脳の活動を調べることの重要性を示した点でも意義があります。ただし、この研究で使ったエサのもらえ方は時間に依存していましたが、他の種類のエサのもらえ方でも同じ結果になるかどうかは、今後さらに研究が必要です。いずれにせよ、自由に動く動物の脳の活動を調べることは、認知機能の脳のメカニズムを理解するために欠かせない方法だと言えます。

論文

タイトル:Population coding of strategic variables during foraging in freely moving macaques
URL:https://www.nature.com/articles/s41593-024-01575-w
機関:Rice University
著者:Neda ShahidiMelissa FranchArun ParajuliPaul SchraterAnthony WrightXaq PitkowValentin Dragoi


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?