要約:なぜ私たちは死ぬのか 第6章

タンパク質はタンパク質はアミノ酸の長い鎖であり、アミノ酸の並び方によって、立体的に折りたたまれ、その構造によって機能を発揮する。

加齢に伴い、細胞の品質管理とリサイクルの仕組みは劣化し、神経変性だけでなく、炎症、変形性関節症、がんなど、老齢に伴う多くの病気を引き起こす。そのため、細胞はタンパク質の品質と完全性を確保するために、さまざまな方法を考え出した。細胞は 、他のタンパク質が正しく折り畳まれるように補助することを目的とした特別なタンパク質を進化させてきた。これらのタンパク質をユーモラスにシャペロンと名付けた。シャペロンはビクトリア朝のイギリスの使用人で、若い未婚の女性が外出する時に付き添って、行儀作法が守られているか監督する。

熱や酸によってタンパク質折り畳まれなくなってしまう。すると、内側にあった水を避ける疎水性アミノ酸が周囲の液体に露出するようになる。そのため、タンパク質が互いにくっついてもつれ合い、固まってしまう。熱や酸によらなくても、自然発生的に、あるいは環境ストレスに応答して、正しく折りたたまれなくなることがある。

正しく折りたたまれないタンパク質は細胞に障害をもたらす。それを防ぐ第一線はシャペロンで、形の崩れたタンパク質を正しい形に折りたたみ直す。しかし、正しく折りたたまれていないタンパク質が蓄積すると、より抜本的な対策が必要になる。異常タンパク質をタグ付けし、破壊の対象とするのだ。何かが間違っていると感じると、細胞はユビキチンと呼ばれる分子でタンパク質をタグ付けする。ユビキチンでタグ付けされたタンパク質がプロテアソームに送り込まれると、そのタンパク質は再利用可能な断片に切り刻まれる。

さらに大量の以上タンパク質が蓄積すると、個々のタンパク質でなく、細胞自体をスクラップにしてしまう。細胞が自分自身の一部を消化していることから、ギリシャ語の「自食」を意味するオートファジーという言葉を作った。オートファジーは細胞の一般的な維持管理の一環として継続的に起こっている。細胞が侵入してきたウイルスや細菌を排除する必要があるときにも、オートファジーは引き起こされる。

しかし、オートファジーは異常細胞のごみ処理だけを行っているのではない。おたまじゃくしの変態の際に、いらなくなった尾を短くして、その栄養を手足の形成に役立てることにも関与している。

欠陥のあるタンパク質があまりにも多く蓄積されると、リサイクル装置が追いつかなくなる。その場合、新しいタンパク質の合成を速やかに停止させるのが理に適っている。細胞がこれを行う一つの方法は、リボソームがmRNAを読み取ってタンパク質を作るプロセスを開始するのを止めることである。ほとんどのタンパク質の合成を停止する一方で、少数の有用なタンパク質は作らせる必要はある。この仕組みは、多くの種類のストレスに対する統一された反応であるため、統合ストレス反応(ISR)と呼ばれている。マウスのISRをオンにする遺伝子を欠失させると、そのネズミはタンパク質の異常産生によって引き起こされるさまざまな病態に罹りやすくなった。逆に、ISRをオンにする遺伝子を欠失させると、記憶障害を含むマウスのアルツハイマー病の症状の一部が緩和されたという実験結果も示された。、ISRを促進することが有益な場合もあれば、抑制した方がよい場合もある。どのような段階においてISRがどの程度最適であるかを正確に把握することは、簡単なことではなさそうだ。

アルツハイマー病とプリオン病はともに、タンパク質の異常型が集まってもつれやプラークを形成することによって起こる。根本的な原因は、そもそもこれらのフィラメントを形成するために凝集する、過剰な異常タンパク質を細胞が管理できないことである。アルツハイマー病の場合は、制御システムの損傷は老化の結果である。

アルツハイマー病におけるタンパク質の暴走も遺伝・環境両方の要因が解明されつつある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?