見出し画像

ヨーロッパ文化教養講座(ショパン・時の旅人たち 第一回国際ピリオド楽器コンクール NHKBS再放送鑑賞記)

2023/04/16
第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールの詳細が発表され、2023年10月14日がファイナルとなるようだ。

これに合わせてなのだろうか、先日NHKBSで、2018年に放送された、第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールのドキュメンタリーが再放送された。

現在のモダンピアノを使った第18回2021年のショパン国際ピアノコンクール(「以下Mコンクール」)では、反田恭平君と小林愛美さんが、入賞してクラシック界では、大変な話題になった。

一方、第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール(「以下Pコンクール」)では、川口成彦氏が第二位になったがそれほど大きな話題になった記憶がない。

ドキュメンタリーは、Pコンクールを開催するために、世界中から集められたフォルテピアノの話から始まって、最後優勝者が決定するまでを、主に3人の参加者に焦点をあてて、進行した。

1人目は、中国広東省出身で、12才からドイツに留学して挑戦する女性、マ・シジャ。
両親の熱すぎる期待の重みに堪えながらも真面目に努力している姿を描いて、応援したくなった。
でも、残念ながら、1次予選(30人->15人)で敗退となった。
2021年のMコンクールに参加するとエンドロールのテロップで流れたが、Mコンクールの第一次予選の参加者のCHINAのMAという人物は見つからなかった。予備予選で落選してしまったのか、それとも何らかの事情で参加しなかったのか、気になるところである。

2人目は、ウクライナ出身で、イギリス在住のディナーラ・クリントン。
2015年のMコンクールは、第三次予選で敗退。全体の11位という実力者。
2020年のMコンクール(実際はコロナ渦で2021年開催となった)には、年齢オーバーで挑戦できないため、Pコンクールへ照準を変えて参加。
彼女は惜しくも、2次予選(15人->6人)で敗退。
2015年のMコンクールで11位に入ってからも、コンサートだけでは食っていけず、ピアノ教師としても働いて何とか生活しているとのこと。
この世界の厳しさを改めて知った。

3人目は、日本人の川口成彦氏。ピアニストになる道を一旦はあきらめ、中学・高校は進学校へすすんだが、東京芸大に楽理科という音楽の理論を学べる学科があることを知り、また、楽理科出身のピアニストもいることから、楽理科へ入学。
ピリオド楽器の多彩な表現力を知り、また、モダンピアノでは「one of them」のピアニストにしかなれないと思ったことから、ピリオド楽器の専門家になる道を進んだ。
ファイナルの前日に使用楽器を変更するという決断も実って、見事に第二位となる。

感想:
1.反田恭平君も、川口成彦氏と同様、2位2人の2位であった。
2人の大きな違いは、
反田君が、Mコンクールのために、ポーランドへ留学したり、Mコンクールの審査員の先生に教わったり、スタインウエイを選んだり、ファイナルで、ピアノ協奏曲1番を選んだり、入念に戦略を立てたのに対し、
川口成彦氏は、Pコンクールが第一回ということで前例が何もなく、自分の感性のみで挑戦したことだと思った。

ただ、川口成彦氏のピリオド楽器奏者としての豊富な経験が、1次、2次予選ともに、3台のピアノを弾き分け、その音色の違いを正確に、審査員に表現できたのではないかなと思った。

2.川口成彦氏は最大のこだわりであった、ショパンが実際に弾いたピアノと同じ型式の、1826年製ブッフホルツのレプリカをファイナルで弾くことを、前日にあきらめ、ピアノを変更した。
川口成彦氏は、こだわりよりも、プロとして良い演奏ができる楽器を選んだというコメントをしていたのが、印象的だった。

3.Mコンクールは、課題曲は、予選からすべてショパンの曲だが、Pコンクールは、予選は、バッハやモーツァルトの曲なども入っているのが興味深い。また、予選は、大ホールではなく、中ホールで行われ、音量の小さなフォルテピアノを考慮していると思った。

第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールは、Mコンクールと同様、YOUTUBE配信されるそうなので、今から楽しみだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?