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ヨーロッパ文化教養講座(100分de名著「シャーロック・ホームズ・スペシャル 第4回最終回 人間性の闇と光」鑑賞記)

2023/09/30
ホームズ・スペシャルも最終回となった。

幸せそのものだった夫婦が、ある人物の嫉妬による謀略で崩壊し憎悪の連鎖を生み出していく様を描いた「ボール箱」。

数多くの状況証拠から父殺しは間違いないとみなされた息子の冤罪を晴らす「ボスコム谷の謎」。

ホームズが発揮するのは冷徹な推理能力だけではなく、人生の機微を知り抜き、人間性の底に潜む闇と光を鋭く炙り出していく「人間学」の精華ともいうべき洞察だ。

「名探偵」という設定はドイルが仕掛けた人間性の深みを照らし出す「文学装置」なのだ。

第四回は、人間性の闇と光を浮かび上がらせる作品の魅力を通して、探偵小説やミステリーを「人間学」としても読み解ける可能性に迫っていく。

NHKホームページ

コメントと感想:
1.今回の2作「ボール箱」と「ボスコム谷の謎」は、どちらとも全く記憶になかった。

「ボール箱」は、事件の動機が、横恋慕の拒否への復讐、そして嫉妬という、今でもミステリーの定番の動機。
タイトルの「人間性の闇」を描く作品。

「ボスコム谷の謎」は、ホームズが父殺しで逮捕された息子のえん罪を、「人間性の光」から晴らす作品。

2.ホームズ作品の素晴らしさは、単なる謎解きで終わらずに、人間性を描いたからだという解説があった。

3.作者コナン・ドイルが、実際にえん罪を晴らしたことがあったこと。
また、
ホームズが偉大に成りすぎて、作者のコナン・ドイル自身も、手に負えなくなり、有名な「最後の事件」でホームズを退場させて、歴史小説などを書いてみたものの、売れずに8年後にホームズを復活させたこと。
などのエピソードが興味深かった。

4.最後に、指南役の廣野由美子教授と伊集院光氏のコメントが心に残った。
つまり、世間の人が思うようにならない人生の解決を求めて、常に名探偵を求めていることから、アガサ・クリスティを初めとする探偵小説が生まれ続けていること。
一方で、これらの探偵小説を楽しめるということは、とりあえずは、平和な時代に私たちが住んでいることを意味していること。

ウクライナやロシアや世界中の紛争地帯の住人が1日も早く探偵小説を読みたくなるような平和がくればいいなと思った。

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