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マイプロって何? はじめての方へマイプロジェクトを説明してみる

1. マイプロジェクトを一言で

それは「わたしとつながり、仕事とつながり、地域や世の中とつながり、新たなアクションが生み出されていく手法、そのような場、哲学」です。わたしのほんとうの気持ちに基づいた(My)、何かをプロジェクトという形にしてやってみる(Project)ことによって、わたしや世の中の変化の物語が始まります。

すみません。一言では無い上に、抽象的で分からないですよね。
ですが、このまま数分、読み進めていただいた暁には、かなり伝わるはずです。(ならなかったらゴメンなさい。)

まず、マイプロに取り組むことで、

1) 「わたし」の心の声に気がつくチカラがつく
2) 気がつくと自分の過去と今を肯定している
3) 「わたし」に正直に生きることで楽になるのと同時に、社会やコミュニティとの繋がりが強くなる
4) 「わたし」以上にわたしのことを感じ・考え・理解してくれる最高の仲間ができる

ということが起こります。以下は、経験者の声のほんの一部

経験前
「やりたいこコト やってない」「こうじゃない感」「でも仕事が忙しいし。。」「何から始める?」「やりたいコトってなんだろう?」と一人モヤモヤしていた

経験中
「どんな私でも受け入れてくれる人がいた!!」

経験後
「ちょっと先を思い描くようになった」
「自分の心の声を聞くようになった」
「オープンな部分が増えた」
「物事の捉え方が自分軸へと変わった」
「自分と違うものも受け入れられるようになった」
「私が楽しいと思う大好きな仲間が増えた」
「私は私であることを楽しめるようになった」

これだけみると宗教のようですが、人間が本来持っている

「この世に命を受けたことを祝福しあう」
「よりよく人生を生きようとする」
「お互いをケアしあう」

という素晴らしい側面を、ワークショップだけではなく、日常の中にも仕組みを作ることで引き出す、そんな学びと実践のコミュニティを創っているのが、マイプロです。

ですので、マイなのですけど、コミュニティ、少し専門的にいうとグループダイナミクスの実践なのです。
では、具体的にお伝えしてゆきますね。

2. 「誰もが可能性を持っていて、未来は自分達の手で少しずつ確実に変えていける」

マイプロは、12年ほど前にとある大学のゼミで生まれました。そのゼミがあった大学は、良い意味で(悪い意味でも?笑)「変わった人」が多く在籍することで有名な大学でしたが、そのゼミは輪をかけて「変わった人」が多くいました。それもそのはず、担当教員も「変わった人」で、そのゼミの募集要項(いわゆるシラバス)には「世界を変えたい人集まれ」としか書かれていなかったのです。(今日なら、そんなシラバス、文科省が許さないでしょう。笑

そのゼミは、慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の井上英之研究室で、当時最先端のトピックである社会起業(社会的起業ともいう)やソーシャルイノベーションを研究テーマとしていました。そのゼミの学修目標(このゼミの卒業生であれば、このことは身につけて欲しいこと)として掲げていたのが、見出しの一文、「誰もが可能性を持っていて、未来は自分達の手で少しずつ確実に変えていける」です。「ソーシャルイノベーション」という言葉を始めて耳にした人もいらっしゃるかもしれませんが、そこはいったん気にしないでいただいて、「未来は自分達の手で少しずつでも確実に変えていける」というマインドが生み出すものだと捉えて下さい。

マインドを身につけてもらうには、実感をしてもらう、実体験をしてもらうことが不可欠です。そこで試行錯誤の中で生み出されたのがマイプロことマイプロジェクトです。このnoteの筆者である私は、博士課程在籍時にこのゼミにTA(Teaching Asistant)的立場で参画し、そのプロセスを共にしてきました。

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井上英之研究室 http://inoken.org/

発祥のゼミがなくなった後も、卒業生や関係者が努力を続け、プログラムも常に進化を続け、10年以上経つ現在は、対象者が小学生からご老人まで幅拾い対象に行われています。
目的も、教育現場におけるプロジェクト学習(アクティブラーニング)や初年次教育に留まらず、起業家(社会起業家・地域起業家含む)教育、企業や公官庁でのリーダーシップ研修やチームビルディング、中高生向けのキャリア教育・社会教育、まちづくり等、様々な分野で使われています。(北は北海道から南は沖縄まで。)

現在行なわれているプログラムに関しては、6.に一部を紹介しました。

3. 具体的にやること

具体的な方法は実施主体によって異なりますが、以下は、井上英之研究室のプログラムに近い形、すなわち、固定メンバーによる約2,3ヶ月のプログラムとして実施しているケースを元に説明した文章があります。(既に5年以上前の記事で、これからプログラムは大幅に進化しており、書き直したいところですが、最新のものは後日続編 or 文章末でご紹介するnoteサークルで先行して執筆します)

須子 善彦, “オンライン大学において「学習する組織」を実現する挑戦 〜 自分事からはじまるプロジェクト学習手法「マイプロジェクト」の可能性”, BBTU Review 創刊準備号, 2014/04 https://my-pro.me/papers/

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4. コアとなるメカニズム

プロジェクトを計画してというと、あたかも計画通り実施され成果を出すことが望ましいとされることが一般的です。そして、そのためにPDCA等のマネジメントが必要とされます。

しかし、マイプロでは違います。マイプロでは、プロジェクトは「ダシ」に過ぎません。自己理解や自己受容を進めること、ならびに、社会とのつながりを通して自分のWillを探求してゆくためのキッカケに過ぎないからです。マイプロジェクトは変更されることを前提とします。変化の無い探求はありえません。

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最初の時点でのプロジェクトの内容は、プロトタイプです。曖昧でも良いし、迷いがあっても良いです。自分のWill(意志、やりたいこと)との繋がりが明確ではなくとも構いません。そして、小さな実行を行います。小さな実行には、プロジェクトの内容を身近な人に話してみるとったことでもOKです。小さくやってみた(例: 説明してみた)とき、自分はワクワクしていたか、相手はどんな反応や感想をくれたか、そしてそのことに対して自分の気持ちはどう感じたか、そういった振り返りをします。PDCAでは実行の結果はプロジェクトの計画内容をより精緻化するために使われます(Check -> Action)が、マイプロでは計画の改善と同時に、それ以上に、自分自身がどう感じたかを振り返ることを重要視します。そのことを仲間と共にダイアログすることで、「わたし」の「わたし」に対する理解が進みます。自己理解が変わるならば、当然プロジェクトの内容が変わります。場合によってはゼロからスクラップ&ビルドしたくなるかもしれません。それも可能であるし、大歓迎です。

このようなプロセスを行うことで、自己理解や自己受容が進んでいきます。また、プロジェクトの内容も、自分のWill(意志、やりたいこと)との繋がりを持つものへ変化してゆきます。経験学習のサイクルにも似ていますね。
このプロセスは、本来一人で行うことができます。トップアスリートを含め多くのプロはそれぞれの人生において行っています。ただ、一人では苦しいので、コーチやライバルがいることが多いです。そこで、マイプロでは、それぞれのテーマは違えど、このサイクルを回すというチャレンジを同じ期間に行う仲間を創ります。

5.マイプロのポイント

以下に、マイプロのポイントを掲載します。全国で行われているプログラムやみなさんが経験したプログラムの位置づけなどを相対的に判断する上で、参考にして頂けたらと思います。
一つの項目で1記事が書けてしまうのですが、ここは項目だけを示します。(興味のある方は、文章末でご紹介するnoteサークルへご参加ください☆)

5-1)よりよく自分らしく生きようと真剣に取り組む人間同士、真剣にお互いを想い・感じ・ケアし合うチカラを引き出している

5-2) マイプロの場では、誰ひとり評価者や傍観者はいない。伴走者もすべからくマイプロの実践者である

5-3) 経験豊かなファシリテータやメンター(経験者)の層が厚い方が良いが、実践の最終段階には実践者が場を創り自走してゆく

5-4) 自分自身の深掘りのプログラムは愛に満ちたものであり、自己受容につながるものである

5-5) 自己受容とプロジェクトの実施は、他者や社会を信頼することにつながっている

5-6) 自己受容と他者とのインタラクション、そして気づきの心での扱い。この3のバランスが、マイプロをマイプロたらしめ、結果的に大きなソーシャルイノベーションへ繋がる

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6.全国で体験できる場所・機会

教育分野
教育分野では、NPOカタリバによる「全国高校生マイプロジェクトアワード」が有名です。カタリバによるマイプロは、震災復興で関わっていた岩手県の小さな港町での小さなマイプロから始まりました。
当時、震災復興がなかなか進まない中で、大人達が口にする不満を、地元の子ども達も真似して口にしていたそうです。「行政のせいでこの街の未来はどうしょうもない」。そういった言葉を口にする子ども達に対して危機感を感じ、「まてまて、そうじゃないんだよ」と伝えなくては、という想いから始まったそうです。まさに「未来は自分達の手で少しずつでも確実に変えていける」ですね!

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起業・社会人一般向け
起業や一般社会人向けという文脈では、独立行政法人 中小機構 TIP*Sによる「マイプロジェクト道場」が有名です。こちらは、私がプログラムデザインとファシリテーションで直接携わっており、オリジナルの井上英之研究室に近い形、固定メンバーによる約2,3ヶ月のプログラムとして実施しています。今まで、体験者は1,000人以上。数ヶ月間のフルサイズのプログラム修了生は200名程度います。

地方
高知(こうちマイプロジェクト道場、高知大学 地域協働学部)やマイプロジェクト名古屋(名古屋市、日進市)は、前述したマイプロジェクト道場からの派生プログラムです。また、島根でも盛んです。また、「マイプラン」という名前で全国各地で行われています。

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当事者コミュニティ
介護関係者向けのKAIGO MY PROJECT も、マイプロジェクト道場の卒業生による派生プログラムです。他にも、育休・産休中の方へのコミュニティ「ikumado」においてもオンラインのマイプロが開催されています。

オンライン大学でのPBL(プロジェクト学習)
また、社会人を中心とする100%オンラインの大学「ビジネス・ブレークスルー大学(BBT大学)」の経営学部ITソリューション学科のおいて、必修のプロジェクト学習にマイプロのエッセンスが取り入れられており、オンラインでのPBL(アクティブラーニング)実施の一つの実績となっています。

7. まとめ

最初にお伝えしたように、「わたしとつながり、仕事とつながり、地域や世の中とつながり、新たなアクションが生み出されていく手法、そのような場、哲学」であり「わたしのほんとうの気持ちに基づいた(My)、何かをプロジェクトという形にしてやってみる(Project)ことによって、わたしや世の中の変化の物語が始まる」という表現への理解が進みましたでしょうか。

そう願っています。

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マイプロに取り組むことで、

1) 「わたし」の心の声に気がつくチカラがつく
2) 気がつくと自分の過去と今を肯定している
3) 「わたし」に正直に生きることで楽になるのと同時に、社会やコミュニティとの繋がりが強くなる
4) 「わたし」以上にわたしのことを感じ・考え・理解してくれる最高の仲間ができる

ということが、宗教では無く、場づくりのテクノロジーとして実現されていることに興味を持って抱けたら幸いです。

より詳しくは、以下のページの関連資料・関連記事をご覧ください。最新の知見は、本noteでも今後、連載してゆきますし、以下にもnoteへのリンクを張ります。

マイプロに関するARTICLE | マイプロ研究会 https://my-pro.me/papers/

また、このご時世、できる限り言葉で説明をすることを心がけましたが、やはり、実際に体験して頂くことが一番です。また、以下のマイプロジェクト道場ではオンラインによるプログラムを計画中です。(現在は体験会のみ実施予定、本編の連続ワークショップはオンライン実施かオフライン実施か、状況を見て判断します。)

マイプロジェクト道場 https://tips.smrj.go.jp/myproject/

また、12年の経験・ノウハウを、世の中に共有してゆくことの重要性を、これまで以上に感じています。
書籍という形でも、いずれお届けしたい(現在執筆中)と思っていますが、書物になるまでは先が長い。また、私以外にもたくさんの実践者がおります。
ですので、時間をかけて書籍という形でまとめることは引き続き取り組んでいきますが、多くの実践者や経験者のみなさんと共に、今在るノウハウや知見を気軽に共有し合う場として、同窓会組織「マイプロバス」を始めています。マイプロ経験者で同窓会に参加希望の方はぜひ連絡下さい。
また、マイプロの場を創っている方、伴走者の方で、学び合いの場を必要としている方は、ぜひ一緒に学習しましょう!

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