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上司との「サシ飲み」を適度に切り上げるには

年度末。仕事も忙しいが飲み会の声掛けも多くなる時期だ。私は基本、会社の飲み会が好きではない。特に、上下関係に気を遣ったり無理に盛り上がったりしなければならないものは嫌いだ。

歳をとってきた利点のひとつは、断れる飲み会が増えたことだ。今では定期的に出なければならない飲み会はひとつもなくなった。それで自分の時間が少し増えたと思う。

そんな私でも、若い頃は「行くぞ」と問答無用で連れ出されることがあった。特に覚えているのが、昔の職場にいた、とある上司だ。

彼は、仕事ができる一方、押しが強くてすぐ沸騰した。その部署の若手は、私も含め色んな意味でずいぶん鍛えられた。その分若手同士の連帯感は強かったと思う。その上司のもうひとつの特徴が、部下と一対一で飲むのが好きということだった。

言わば「業務外1 on 1」である。ただ、違う点もあった。1 on 1は上司が部下の話を聞く場と位置付けられているが、その飲み会は部下が上司の話を聞く場だという点だ。

1, 2か月に一度、私にも順番が回ってきた。私はその上司のことを嫌いではなかったし、豊富な経験を持つベテランだとも思っていた。教わったことも多い。でも、この”サシ飲み”はつらかった。話される内容が、要約すると
・オレはすごい
・アイツはダメだ
・ソイツはオレが育てた
・お前もしっかり鍛えてやる
というものばかりだったからだ。

その上司にも、彼なりの鬱憤が色々溜まっていたのだろうということは当時も感じ取ることができた。ただ、それをわかった上でも、やはり捌け口とされる側としてはなかなかきつい時間だ。当時から飲み会が好きではなかった私にとって、その時間をどう乗り切るかはひとつの難問だった。

その解は、意外なところにあった。あるとき、あまりに同じ話が繰り返されるので、酒で頭がほわんとしていたこともあり、思わず1on1飲みの場でうつらうつらとしてしまった。普通なら業務時間外とはいえ上司の前で寝るのはかなり気が引ける。でもそのときは耐えられなかったのだ。

そうすると上司は、意外なことに「おう、お前も疲れてんだな、じゃあ行くか」と、すぐにお開きにしてくれた。私が予想していた終了時間より1時間以上早く。

これはいい方法かもしれない、と私は思った。以来、さしで飲みに行くときは聞けるところまで話を聞き(そこは疎かにしなかった)、そろそろ限度だと思ったらその場で寝始めるという作戦を取ることにした。これは、日頃の関係がある程度しっかりしている相手で、しかも親子ぐらい歳が離れていたからこそ成立したことだとは思う。でも上司の機嫌を損ねることなく、そして私も無理をし過ぎることなく飲み会を終える方法として良い手段だった。

その上司とは、私がその後仕事を変えてから連絡を取っていない。随分前にもう定年となっている年齢だ。悠々と過ごされているのだろうか。

今の私なら、当時よりも彼が感じていたことをより理解し、共感できるところもあるかもしれない。もしどこかでまた会うことがあれば、いろいろ話し合ってみたい気もする。ただし、酒抜きで。

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