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【打ち切りマンガ】メタも良し悪し【レッドフード】

レッドフードを一度読み返して感想とか妄想を書いてみたいと思います。
本作は2021年WJ49号までの18話で打ち切りになりました。

今回はコミックで3巻で完結した作品を買ったときどう思うかを評価の基準にします。

ざっくり評価
ストーリー★★☆☆☆
画力★★★★★
マンガ技術★★★★☆

はい。読み返して見ると思ったよりずっと面白かったです。
特に画力やマンガ技術はすごく上手だと思います。

それぞれ良い点・悪い点を挙げてみます。
また、妄想はその後に書いてみます。

少年ベローが住む村で人狼被害が頻発していた。次々に食い殺されていく村人。村長は意を決し狩人を雇う。しかし、村に現れたのは小柄な少女…!! ベローは少女を不審に思いながらも村を案内。そしてそこに人狼も出現して…!?

川口勇貴『レッドフード 1』 (ジャンプコミックスDIGITAL) あらすじより

ストーリー★★☆☆☆

===良い点==================
世界観や設定がしっかりしています。
話の展開で不自然な部分も無いです。

最初の3話は文句なく面白いです。

3話まではテンポを意識して色々な部分を省いています。
村人の人名も出てきません。ベローとグリムと人狼だけに集中しています。
それ以外の村人とかの掘り下げはしていません。
当然ですが、すごく良いと思います。

私がジャンプ本誌を読んで勘違いしていた部分もあって、
村人とベローは普通に信頼しあっていて仲の良い描写がありました。(ごめんなさい)

ちなみに、ケイドロの俺たちは狩人になるんだ。
だからケイドロでも逃げる側じゃなくて、狩る側になる!というネタはすごく良かったと思います。2話位でまとめられていれば星3でもよかったかも。

===悪い点==================
全体として不自然では無いんですが、読者の求めたストーリーでは無かったように思います。
この点は妄想に後述します。

ストーリーの質が、3話までとそれ以降で大きく異なると思います。
それ以降では、残念ながらテンポが悪くなっています。

3話までのテンポ感で犠牲になったものがあります。
ベローの動機が「村」な事です。

画像3

川口勇貴「レッドフード」(「週刊少年ジャンプ」36・37号、集英社、2021年)171項。

テンポを上げるために、村人誰一人掘り下げをしていない状態で、読者の知らない「村」にこだわる主人公が浮いてしまっています。

この画像の「もう二度と~(中略)第二第三の~(省略)」は、説教臭すぎるし、まるで政治家のセリフじゃないですか。主人公は少年なんですよ。
詳しくはここ

3話以降は逆の現象が起こります。
特に今必要のない人名・固有名詞が出てきます。
名前だけ出すなら1コマなのでまだ良いんですが、
そのキャラの掘り下げいる?というのもありました。

画像1

川口勇貴「レッドフード」(「週刊少年ジャンプ」42号、集英社、2021年)407項。

絶対コイツいらんやろ。

ボーンカースさんですら無くても良いと思うのに、ストーリーに全然関係ないモスコに割くコマは無いです。

というか読者の意識が分散してしまって良く無いと思います。
少なくとも連載初期は、やらない方が良いと思います。

以上です。
厳しいですけど星2くらいだと思いました。


画力★★★★★

===良い点==================
かなり特徴がある絵ですが、上手いと思います。
特別意識したことは多く無かったですけど、読み返すとすごい個性の絵です。

画像2

川口勇貴「レッドフード」(「週刊少年ジャンプ」35号、集英社、2021年)210項。

これも背景の闇はベタで、屋根は線画です。
この黒を線画で表すのが一番の特徴だと思います。

モスコさんの眼帯も線画ですよね。

ジャンプで読んでいる時は雑になってきたかな?
くらいの感想だったんですが、実は最初からです。

川口先生のこだわりなんだと思います。
その線にこだわる中で一番良かったコマがこちら。

画像4

川口勇貴「レッドフード」(「週刊少年ジャンプ」36・37号、集英社、2021年)168, 169項。

ジャンプで読んだときは気付かなかったんですが、
水の表現が凄い。

この見開き自体が世界観の説明になっていて良いと思いますが、
それだけでなく線で水を表現できているのが凄いです。

岩と水の見分けが付くってすごいです。

===悪い点==================
特にないです。
バトルで分かりにくい部分がありましたけど、気になるほどでは無かったです。


マンガ技術★★★★☆

===良い点==================
見開きをしっかり使って「ここが見どころです」という主張がコマ割りからも分かるようになっていて少年マンガ的で素晴らしかったです。

基本的に気になる部分は無かったです。

書き込みが多くなる画風の分、構図やコマ割りに気を付けて分かりやすくなるようになっていたと思います。

あと、ケイドロで多vs多の戦いが少しだけありました。
このバトル描写はすごく自然でした。
連載が続いてバトルがたくさん見れたらそういう人気も出たんじゃないかと思います。

===悪い点==================
正直そんなに無いです。

セリフをもっと減らせたような気がする点と、
会話パートで同じような大きさの顔が続いてしまう事が多かったように思います。
星5とめっちゃ迷うレベルで、今回は4にしました。

妄想

全てはこの記事が始まりです。
珍しく設定の考察をしてみます。

「シナリオ」くらいだったら感じなかったと思います。
「読む者たち」で読者のメタファーかのような存在を示されました。
そして、読者以外にも作者などのメタファーがあるんじゃないか?と疑問に思って考えて見ました。

まず物語中の用語を説明すると下のようになります。

画像5

まず、上位存在として読む者たちがいます。
その読む者たちの言語(日本語)で描かれた運命シナリオがあります。

そして、シナリオに加筆出来る存在として『赤ずきん』『村長』がいます。
それらの存在に操られて読む者たちを楽しませるために世界があります。

ベローはその枠に収まらない存在です。

画像6

上のようになります。
ここまでは本作に描かれている事。

ここからが私の妄想です。
妄想(メタファー)を右に追加するとこうなります。

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まず読む者たちは読者のメタファー

そして『赤ずきん』は作者のメタファー
この人が何度も繰り返される世界を作った人なので、作者かなと。
今回は8個目の世界のようなので7回ネームを作り直したのかもしれません。

『村長』は確定できる情報が無いので無根拠です。
(だからこそ妄想なのです)
村長は今回の世界を終わらせたいキャラクタです。
『赤ずきん』(作者)以外にシナリオに関われる存在で、
それを終わらせたいとなると…。
『村長』は編集者のメタファーかな、と。
だとすると『村長』が作った『ベロー』は編集が提案したんでしょうか?
元々はグリムの物語が描きたかった可能性が微レ存???

そして、ベローは終わってしまった物語の主人公のメタファーです。
これはこの物語のベローが主人公であるだけでなく、数ある打ち切り作品のそれぞれの主人公のメタファーなのかなと。これも無根拠です。

連載が終わってしまった物語の主人公はどうなってしまうのでしょうか?
シナリオのない本当の物語が始まるのではないでしょうか?

画像8

川口勇貴「レッドフード」(「週刊少年ジャンプ」49号、集英社、2021年)460項。

おそらくそういう事なのかなと。
ベローがもらった赤ずきんのマークにも注目してみましょう。

白いひし形にバッテンが付いています。
こじつけるならシナリオを否定していると取ることが出来そうです。

つまり、運命シナリオのない誰も知らない未来を示しているのかなと。
(それを赤ずきん(作者)から渡されたところもなんかそれっぽいです。)


妄想から何を受け取るか

私は物語を楽しむときに、ある視点を持っています。
それは、「言語化されていない概念」の言語化です。

この物語はどんな気持ちや現象を言語化したものでしょうか?

そういう考えは無く作られた物語かもしれません。

でも、物語の後半の流れは作者の苦悩を感じました。
その叫びのようなものをどう捉えるかで評価が別れそうですね。

何度もネームを直して、編集に突き返される。
様々な設定を試してみて作り変えられるマンガ(世界)。
やっと連載が始まったのに、読者(神)から突き付けられる否定。
そして、方向性(シナリオ)を変えようとしてくる編集は、
ついに連載(世界)を終わらせようとしてくるようになった。

そんな中で毎週休みなく描かなくてはいけない疲れと、
アンケートで示される結果のストレス。

何がなんだか分からなくなってしまった作者の叫びのように思いました。

つまり言語化したものではなく、作者の魂の叫びなんでしょうかね。

魂の叫びを物語に落とし込むことは出来ていたと思います。
問題は読者へ恨み節っぽくなってしまったところ、アンケート至上主義へのアンチテーゼになってしまっている部分が残念でした。
読者がメッセージを受け取れても「そうだよね!その気持ち分かる!!」とならないですよね。

最後に

今回は残念ながら短期打ち切りになってしまいましたが、マンガの技術や画力が足りなかったわけではありませんでした。

大ヒット作品を作れる器はあると思うのです。

話やキャラクタを練り直して、次の物語で会いましょう。
応援しています。

最後はおなじみ言葉で締めたいと思います。

川口先生の戦いはこれからだ

画像9

川口勇貴「レッドフード」(「週刊少年ジャンプ」49号、集英社、2021年)461項。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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