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映画『マンティコア』を見て。 ネガティブなことや変わった性的趣味嗜好を持った人が気味悪いのは仕方がないが、否定し、そもそもなかったことにしてほしくはない。

東京国際映画際で視聴。素晴らしい映画だった。本年度No1だと思う(「こちらあみ子」と「Love Life」と接戦ですが)。何を書いてもネタバレになるが、取り敢えず書かないとならないので、申し訳ありませんがネタバレした上で書きます。ストーリーは次のようになります。

スペイン、カルロス・ベルムト作品。ゲーム会社の優秀なゲームクリエイターのJulian(フリアンというスペイン語読み)は隣の家の火事で小さな男の子を助ける。それがキッカケでまた苦しみがもたげ始めた。その小さな男の子の弾くピアノの音でさえ息苦しく過呼吸が起きる。終始吐き気をもよおしたり、発作を起こす。同時にベリーショートヘアでファッションセンスの良いめっちゃ可愛くめっちゃ優しい女の子と知り合う。クラブで踊ったりし仲良くなるが、どうもセックスが出来ない。会社から委託業務していたPCの中で小さな少年の性的な絵を描いていたのが会社に見つかり解雇される。自暴自棄になり、最後その小さな男の子に悪さをしようとするが、Julianと書いた男の子の絵を見て衝撃を受ける。それはマンティアゴの絵だった。フリアンの顔と身体は獣だった。そうか、少年にフリアンの真の姿はバレてたのか。そのまま、フリアンはそのアパートの窓から身を投げる(が助かる)。ガールフレンドはフリアンの介護をしようと決意するという物語だ。

この映画は最後の30分のカメラワークや主人公の繊細な心の動きを追いかけるのが素晴らしく、側に居て大丈夫だと終始声を掛け支えたくなるほどの精神に視聴者を持っていく所が素晴らしかった。

ところで、視聴後あまりにも感動し、興奮気味にレビューを見たら、不快だの、全く映画の趣旨を取り違えてるんじゃないかというのが多かった。だが、「じゃ、何故アンタの解釈が正しいの?」と彼らから言われるかもしれない。それは勿論その人の受け止め方があって良いと思う。しかし、本作で取り扱っている一番コアな部分を、日本のまたまた狭い自分の生活圏内で起こった経験と照らし合わせて見ているんじゃないだろうか。または、アニメ文化の中で、小さい男の子女の子を性的に弄ぶのは普通だから、え?そんなことだけでクビになんの?と、そもそも主人公の性的嗜好を軽んじている。そんなことしていたら、当然全く違う物語になるってことを考えなくてはならないだろう。

1.世界の先進国やヨーロッパで、小児性愛者はご法度だという事実。
日本みたいに軽々しく少年少女のポルノ漫画を描いてはいけない。さて、それを知ったとしても「ちょっと間違えちゃった」から「周りに非難され」「身を投げた」わけじゃないって所。ずっと主人公は自分の性癖に苦しんでいた、それをよく理解してないと本作は違った捉え方になる。

2. ネガティブなことや変わった性的趣味嗜好を持った人が気味悪いのは仕方がないが、否定し、そもそもなかったことにする生き方はやめてほしい。はっきり言って、それなら自分の人生もなかったことになるよ?永遠に続く人の苦しみを「ああ、嫌なもの見ちゃった、関わらないようにしよっと!」って思うなら、君の人生にも誰も関わらない様にするだろう。少しは彼らの気持ちになってはみれないんだろうか。それともそれくらい軽い扱いにしといた方が万事うまく行くと思っているんだろうか。それならば君の人生もものすごく軽いものとして扱われるよね。でも自分の人生は重く考えているんでしょ?それっておかしくない?

しかし、こういいね文化が進み過ぎて、ちょっとでもネガティブを見ると、見なかったことにする人が大量に発生するから(多分それもスルー文化から来るのかな…)、そっちの方が多数だ。受け入れ難い性癖とか、障がいのある人、性的マイノリティ、ちょっと犯罪に近いレベルの理解できない人、取り返しのつかない不幸が自分の身に起こる(この作品の場合、ガールフレンドが父親の介護をしているが、最後、フリアンの介護をすることになって終わる、そういう介護人生なんて絶対いやなんだろうな視聴者は)だから、そんな人を見たくはない。自分に置き換ええたくないからなんだろうな。

私自身は自分の息子に障がいがあり、彼の子供時代入院生活が多かったり、今は父母の介護をしているせいもあるから、そういう障がいに対して慣れているからで、決して悪いこととは思わないせいもある。そして、レビューを書いている人達がまだ若く、経験値が私とは遥か違う差だろうと思う。しかし、ヨーロッパ映画の場合、本作に限らず私と同じ立場で見ている視聴者が多いし(英語のレビューなど読むと大抵私寄りの意見を多く見る)し多分製作側も同じだと思う。

ネガティブを避ける、心地悪いことは避ける、不幸は出来るだけ回避したい。自分さえ幸せであれば良いというの本当に嫌だな。正直、#マンティコア を見た視聴者一人一人に聞きたいくらいだ。どうしてそんなに不快なのか?助けてあげたいという気持ちにはならないのか。宗教がないからそもそも他人の苦しみを自分に置き換える習慣がないのかな。気の毒な人には関わらずシカトする人間が大量に存在する社会は、本当に嫌だな。


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