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1%が世界を変える

お酒の世界でいう「醸造酒」と「蒸留酒」の違いって知っていますか?例えば、ビールと焼酎の違いといえば、よりわかりやすいでしょうか。これからの時代、ビールよりも焼酎のようなアプローチが大事じゃないか、っていう酔話です。

1、お酒の違いは「絞る」か「温度で分離」するか

お酒が詳しい人はすでにご存じかと思いますが、ビールやワインなどは、お酒の原材料となる麦やぶどうを発酵させたのち、絞ることで生み出すお酒。言ってみれば「力仕事」みたいなもの。おいしさをギュッと絞り出すことでできるのが「醸造酒」ということです。

一方、「蒸留酒」は米やさつまいもを発酵させた後、「蒸留器」と言われるような理科室の巨大フラスコのような容器で発酵したお酒を沸騰し、冷却する温度によって、お酒の成分を分離して生まれるお酒。だから、香りが強く、また濃縮されているので、アルコール度数が高くなるのです。

2、おいしさの成分はどのぐらいか?

では、そんな「醸造酒」と「蒸留酒」では、私達が味わうおいしさとしての成分はどのぐらいでしょうか。

醸造酒の中で「日本酒」はおよそ80%ほどが水、アルコールは15%程度とされています。残りが味や香りなどその他の物質で5%未満。水は軟水や硬水で味の印象は変わりますし、また原材料としてのお米の味、香りでもだいぶ印象は異なります。それだけ「あらゆるパラメータ」を変化させる選択肢が高いのが「醸造酒」と言えるでしょう。

一方、蒸留酒の中で「焼酎」は、およそ75%未満が水、アルコールが25%程度とされており、わずか1%が香気成分などのおいしさを決める成分です。

およそ、他の蒸留酒も同じような割合ですから、泡盛も、テキーラも、ジンなどもそうですが、たった1%の違いがおいしさや種類の印象を変えているかと思うと、非常に不思議であり、興味深い分野です。

3、「物質的」な限界、「化学的」な変化

そんな、お酒の「違い」を私達の日常に当てはめてみると、「絞る」ような物理的なアプローチはそろそろ地球資源の上でも、仕事の上でも、生活の上でも、終わりにしなければいけないのかもしれません。

醸造酒は、基本的に製造までに「大量」で「きれい」な水を必要とする作り方。最終的な商品という成果物をつくるのに、とても負担がかかるものです。おまけに「絞る」というパワーも含め、昔は人間の足ぶみが使われ、いまでは機械化されましたが、エネルギーも費やすものでした。

それって、この社会においても、持続可能な世界とはかけ離れたアプローチの仕方。資源を大量に使い、多くの労力を投入して、なにか成果を得ようとする。そんな「力技」が有効だったのは、人口も経済も伸びていた時代の話であって、高齢化や人口減少、さらには投入できる地球資源が枯渇する未来が見えている今には、到底受け入れ続けることができない概念なわけです。

一方で、「蒸留酒」は、温めて温度の違いで、お酒としての成分を分離するもの。それは「化学的」なアプローチであり、その指定する温度である限り、それ以外の物質は混ざり合うことはないのです。

つまり、必要なものと必要なだけ、誰でも再現可能な形で実現するアプローチ。それが「蒸留酒」の作り方なのです。

とすれば、私達の社会でも、何が必要かと考え、そのための法則や原理を導き出し、効率的に効果的に、求めるものだけと抽出する。そんな最適解を見つけるようなアプローチこそが、これから求められる在り方なのではないでしょうか。

4,1%で変えられる夢と希望

そして、「蒸留酒」が魅力的なのは、おいしさのエッセンスを決める成分は全体の1%程度しかないということ。その多くは香気成分といわれる香りではありますが、全体の印象を変え、イメージをつくり、そしてお酒全体の評価を決める大切な1%です。

こんな身近に、小さな存在が、何かを変えるという原則があることを知りさえすれば、家庭や組織、会社や社会の問題も、本質的な原理原則を導きだしさえすれば、わずか1%の存在で、全てを変えることができるのではないか、という希望を見いだせるのです。

もちろん、この1%が受け入れられるためには、それに染まる75%程度の水という多数派と、飲む人を酔わせる影響を与えるインフルエンサーとしてのアルコールが全体の4分の1ほど必要ではあります。

ただ、そうやって、身近に、そして脈々と存在してきたものの中に、法則性を導き、世の中を変えるきっかけを想像する。なんとも夢のある話ではありませんか?

酔うとは、決して悪いことだけではない。度が過ぎれば記憶をなくしてしまいますが、適度であれば、酔いは心地よさと、普段存在する壁を取り払ってくれるもの。もしかしたら、対立や分断をしていた関係も、互いを認め、認知し、つながりさえもたらしてくれるものかもしれないのです。

いつものお酒の中に、「蒸留酒」を選択肢に入れてみて、1%の可能性について、酔話でもしてみてはいかがでしょうか。

もちろん、ビールやワインの脈々と受け継がれてきた酒と酒文化には叶いませんが…。

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