丸襟

本のことを書き残す ほとんどメモです

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“愛とは個の喪失”だなんてイカれてる。 信田さよ子『タブラブという快刀』

Twitterでこんな文章を見かけて、書いたことを思い出した文章。再掲してみようと思う。 モラルハラスメントなど精神的DVのせいで、魂が削られているように感じる人。 目の前にある「強固で息苦しい関係性」を、手放すことは決してあなたの冷たさ、軽薄さじゃないんだ、ってことがわかる、勇気の出る本を紹介します。 ※以下は3年ほど前に書いた文です ※現在は本書の新版が出ています。内容はどう変わっているか未確認です ※筆者:she/her ────────── 非常に私事で恐縮だが

    • 朝井リョウ『正欲』

      ────────── 優しさと諦念に満ちた大好きな歌詞がこだまする。 この本を読む前には感じなかった、怒りの熱を帯びて。 人はそれぞれ違うでしょ?の続きが、「だからお願い わかってほしい」ではないこの歌詞の底なしの孤独を、私は本気で想像したことがなかった。 正欲。 最も尊敬する小説家の新刊のタイトルを、発売のずっと前に目にしてから、覚悟を決めていた。 この1冊だけは、生半可な気持ちで読んではいけない。自分自身の狡さが、明確に言語化されてしまうに違いないから。

      • 澁澤龍彦『快楽主義の哲学』

        「人生には、目的なんかない」 「幸福は快楽ではない」 「幸福は、この世に存在しない」 「博愛主義は、うその思想である」 「健全な精神こそ、不健全である」 「乱交の理想郷」 「酔生夢死の快楽」 「ユーモアは快楽の源泉」 「精神の貴族たること」 「本能のおもむくままに行動すること」 「レジャーの幻想に目をくらまされないこと」 幾つか本書の好きな目次の文言を並べてみた。 さっきの(読んでいる時の)私は爆笑したが、お利口な四角四面のモラリスト(ex.小学生くらいの頃の私)なら泡を拭

        • 伊藤計劃『ハーモニー』で描かれる世界と、COVID-19禍中の日本の類似点について。

          ◼️ はじめに  『ハーモニー』は、十年前の作品とは思えないほど、みずみずしく、論理的に、今の社会を映し出している作品でした。今回、「COVID-19のあとの世界」「幸福のバリエーション」という視点から、この作品が今の時代に持つ意味について論じようと思います。 ◼️ COVID-19のあとの世界  戦争や大災害のような、平和を脅かす(=今まで通りの生活が続けられなくなる、または死ぬ)出来事と、今回のウイルスとで異なっている部分は何でしょうか。私は、「悪意の有無にかかわら

        “愛とは個の喪失”だなんてイカれてる。 信田さよ子『タブラブという快刀』