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機材を勝手にさわるな

先日ある地域のイベントに参加してきた。小さなステージで小規模なライブ演奏をおこなうというので、その音響を依頼された。そのバでちょっと考えられないことがあったので、今日は日記みたいな感じで、イベント音響のお仕事の流れとか。

前提条件として

今回の前提として、スーパーマーケットの店頭の広場で、基本的な音響機器(ミキサー、スオピーカー、アンプ、マイク)は私が持ち出している。また、各アーティストの編成が小規模なこともあり、1ステージ終わった後は基本的にすべてのケーブルをはずしてニュートラルに戻してから次のセッティングをするようにした。

事前打ち合わせ

5組のアーティストが30分の持ち時間で代わる代わる演奏していくスタイルで、すべてのアーティストがほぼ違う編成だもんだから当日の入れ替えをスムーズにすすめるためにも事前の打ち合わせが必要。私の場合特に気にかけているのが、持ち込み機材の有無だったりする。持ち込み機材の確認でかなりの時間を要してしまうこともママあるし、そもそも相手側が正確に申告してこない例もある。(今回メインの話はそれに近い)

DI

ギターとミキサーを接続する際に必要な機材。神はギターとPAの接続をなんでこんなにめんどくさい仕組みにしたのだろうと恨まずにはいられない。とにかく私が担当する現場で一番トラブルが起きるのがDIだったりする。なぜならDIには「パッシブ(電源不要)」と「アクティブ(電源要)」があり、アクティブでも電池、ACアダプタ、ファンタム供給と様々な電源方式があるため、それにより回路を検討しなければならない。固定の箱(ライブハウス)とかならまだしも、野外で小規模となると使える回線数も限られるので本当にしんどい。

ワイヤレスマイク

同様にワイヤレスマイクの持ち込みも神経を使う。今回は問題なかったが主催者側でワイヤレスを使っている場合、周波数のバッティングを避ける必要が出てくる。おまけにB帯ワイヤレスは隣り合うチャンネルの周波数帯域が重なっているので、チャンネルが違う→OK!にはならないのだ。あとたまに国内では使っちゃいけない周波数のものを持ち込んでくる人もいて、そういうときは周波数表示を見なかったことにする。

その時何が起こったか

前のアーティストの演奏が終了して、次のアーティストの仕込みに入る。その際、DIの持ち込みは聞いていたが電源の問い合わせに未回答だったので、いちおうマイクプリを用意して待機。このアーティストはマイクもDIも全部持ち込みだったので基本的には演者側からケーブルを受け取るだけでいいことになっていた。が、そこで後出しの一言「DIにファンタム送ってください」。なんだよ、ファンタム必要なのかよ、とおもいつつ、「わかりましたえ~と・・・」とマイクプリを用意しようとすると、もむろにその演者「コレですよ」とミキサーのファンタムを勝手にONにして、そしてここが重要なのだが、ミキサーのファンタムを勝手にONにしてからケーブルを挿しやがった。

ファンタム電源

賢明な皆さんはご存知のことと思うが、ファンタムとはマイクケーブルを通してその先につながっている、主にコンデンサマイクに電源を供給する仕組みで、一般的にはHOTとCOLD(XLR端子の2番と3番)に48Vの電圧がかかる。

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一般的にはすべての機器を接続したあとに通電を開始する(でないと、端子接触時に、極稀にではあるがスパークが発生し、そのノイズが原因でヘッドアンプが死ぬ)。まあほとんど問題ないのだけど、「電気」を扱う上では安全策をとっていくのが常識なので、ウチはそういう方針にしている。

またもう一つウチでルール化していることがあって、それはダイナミックマイクにはファンタムを送らないことにしている。もちろん、一般的なダイナミックマイクには電圧をかけても問題はないとされている(HOTとCOLDの電位差が0なので、電気が流れないため)。ただし、本来必要のない電圧をかけてしまうことでトラブル(ノイズが乗るとか機器が故障するとか)を避けるために、うちはそういうルールで運用している。なので、ファンタムが必要な現場で、かつ小型ミキサーなどすべてのチャンネルのファンタムを一律OFF/ONしかできない基材の場合は、マイクプリを持ち込んでそこから給電することにしている。

ところが、その演者はおそらく私が「ファンタムを理解していない」と思ったのだろう。「これですよ」と勝手に機材を操作してONにしてしまった。そして電圧がかかっている端子にケーブを突っ込むに至った。さらにいうとこの演者は二人組で、もうひとりのセット(こちらもマイクとDI)はまだ接続が終わっていない。つまり、ウチのルールではまだファンタムを供給する条件が整っていないのだ。

更に言うなら、ウチのルールに従っていただければ、ファンタムは個別にOFF/ONができる上、準備ができれば他方を待つことなく音が出せるようになるはずであった。まあ残念だけど、そっちがその気ならうちはもう知りませんよ、と。早く音出したくても仕方ないですねまだ準備できてないですからね。と生暖かい目でセッティングを見守っているのであった。

何がダメなのか

これどの現場でもそうだと思うのだけど、自分が持ち込んだ機材以外、どのようなワイヤリングになっているかはその機材を仕込んだ人しかわからないわけで、それは今回「私(とアシスタントのバイト嬢)」しかわからないわけ。今回は勝手にファンタム電源をONにされてしまっても、その先に何もつながっていなかったから良かったものの、例えばワイヤレスマイクのチューナーがXLRに接続されていたら・・・電源供給を考慮されていない機器に電源が送り込まれる恐怖を鑑みるに(そしてほぼ問題はないはずだけど)、私ならとても他人の機材は触れない。規模の大小に関わらず、範囲と役割は必ずあるので、それを踏み込んでしまう今回の件は、本当に信じられないと言うか、まあ「どーせ商店街のしょぼいPA屋」とか舐められたんだろうな。ちなみに、今回の現場でなければブチ切れてるところだし、そもそも彼らもライブハウスならPAブースに乗り込んでフェーダーに手を伸ばすなんてしてないはずだ。

教訓

どんなに小さな現場でも相手はプロ。

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