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壊れゆく音 ‐心歌‐

愛するもの
殺されかけた時

大切なモノ
壊されかけた時

なぜわたしは
愛する大切な方を

自ら壊そうとしてしまうのかしら


崩れてしまうほどに
だれかを憎んだことなんて

今まで生きてきて
一度もなかったから

どう怒りを表して良いのか

本当に
本当に

わからなかったの



「本当に申し訳ございませんでした」


スーツを着た偉そうなオジサン達
申し訳なさそうに涙を浮かべるオバサン達

若い親に向かって

馬鹿みたいに
何度も何度も頭を下げている


そんな大事になると思っていなかったから
いつものクセで

「大丈夫です」

と言ってしまっていた



” 大丈夫 ” じゃなかったの



事故だった



外来の患者が居なくなった
夕暮れ時の薄暗く静かな総合病院の診察室で

脳のCTスキャン画像を見せられながら
白衣を着た先生に「今夜が山です」と言われる


そんなドラマみたいなこと
起こってみなさいよ

びっくりし過ぎて
涙なんて出てこない

本当の絶望感とは
その場では襲ってはこないものだって
初めて知ったの


緊急入院の準備の為に
急いで自宅に戻る途中

ハンドルを握る手が
震えていたのを思い出す

あの時こうだったらと

色んな場面が早送りで
頭の中をかけめぐる

状況を説明するため
母に電話したとき

手に持つ何か重たいものが
滑り落ち
床にたたきつけられた

キーンと激しい音を立てて
粉々に割れていく

その音を合図で
決壊するかのように

涙があふれ出し
号泣した





争いごとには
極力関わりたくない性格だから
上手く気持ちを表現することが
できなかったの


結局

誰に怒りをぶつければ良かったのか
どう怒りを表現すれば正しかったのか

その気持ちはやがて
壊れかけた所有物へと
向けられる

直そうとがんばってみたけれど
直らなかった


だから
全部壊して一から作り直そうと思った

それも
上手くいかなかった


時が経って
少しずつ少しずつ
それが自力で動き始めた

あぁ、もう
所有物じゃないって

わたしのモノじゃないって
気づけた時

ようやく
わたしはわたし自身を
壊すことができたんだと思う



今度こそは
自分を直すために
時間を使っていけばいい


まずは一から作り直せるように
ちゃんと全部壊してね


「壊れゆく音」

~END

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