見出し画像

豪勇斧士の仮面の下は #1

あなたの仮面の下を
知るまでは
ふたりの思い出は
鮮やかに色づいていた

どこにでもある
普通の恋愛ごっこ

そのつもりだった



***


新しい世界に降り立った瞬間は
いつも緑の大地に明るい太陽が輝く
清々しい風が吹いているような 錯覚の中
初期装備を身に付けただけの ”わたし” が
立ち尽くしている


お馴染みのそんな風景から
いつもオンラインゲームのはじまりが
創られていくの


キャラクリエイトを終えて
満足のいく新しいアバターの姿に
さぁこの子と一緒にどんな冒険の未来を創り出そうかと
ワクワクする
この瞬間が すごく好き


まずは 基本的なキャラの動かし方
戦い方、装備変更の仕方など
チュートリアルを進めながら
操作に慣れていく

もたついている様子と
キャラネームの横の若葉マークで
すぐに上級の冒険者さん達には
理解してもらえているのだろう

優しく声をかけてもらえて
戦闘中に回復魔法を飛ばしてもらったり
強い敵を遠くで処理してもらっていたり
さりげなく 初心者へのサポートをしてくれるの




たいてい、初心者と言われる低レベルのうちは
敵に倒されてしまってもデメリットは少ない

町から遠くへ行きすぎて、行き倒れたとしても
簡単に生き返り、ポイントへ戻って再開することができる


だから 新しい世界をどこまで歩けるのだろうかと
自分のレベルに見合っていない場所まで
遠出しちゃうことが多い


今回もそうだった


たくさんの木々で覆いつくされる 
巨大な森の中へ

薄暗く太陽を遮る木々から漏れる 
わずかな光が美しく

その光に群れるように咲く
桃色の小さな花に 目を奪われていたら

筋肉質な巨体の獣人タイプのモンスターが
背後に近づいてきていることに
気付くのが遅れた


”あぁ、これは逃げられない”


エンカウントし戦闘が始まる
HPギリギリまで倒そうと粘ってみるのだが
回復に対して受けるダメージ量が大きすぎる

死を覚悟しながら、必死に殴っていると


>>  救援出してください!!


唐突にモンスターじゃない誰かに話しかけられる


救援要請を出した瞬間に
背後から矢が飛んできた


カメラを ”わたし” の背後へ回すと
そこには赤い鎧を身に付けた
人間型の男性キャラクターが立っている


黒い髪をなびかせながら
斧を振り下ろす戦士

まさに 豪勇無双の ”勇者” だ


勇者は獣人を真っ二つに切り裂いた


わたしは瀕死の状態で
激しく上下に体を揺らし 肩で息をつきながら
生きていることを確認する


回復薬が飛んできて
緑の癒しの光に包まれると
ふわっと少し体が楽になった気がした


>>  大丈夫ですか?


なんて話しかけられたら
惚れないわけがない


世にも恐ろしいモンスターに襲われて
ギリギリのところで命を救われる

そんな現実にはあり得ない
夢のようなあなたとの初対面


ね、最高に運命的な出会いでしょう?


ここから先は

0字

今まで小説を読んでくださった方、女性の生き方として興味を持ってくださっている方、作品を通してnoteに来てくださった方に、自分の気持ちに向き合いながら正直に感じる思いをエッセイに込めて描き続けていきます。 生き方や愛に思い惑うときにも、エンターテイメントとして楽しみたいときにも、喜んでいただけるような内容を届けられたら、嬉しいです。 新しいスタートを切った*うみゆりぃ*をよろしくお願いいたします

2023年1月よりスタートの定期マガジンです(月4回)詳細はマガジン内の紹介記事▶︎▶︎https://note.com/sea_lily/n…

この記事が参加している募集

ゲームで学んだこと

恋し続けるために顔晴ることの一つがnote。誰しも恋が出来なくなることなんてないのだから。恋しようとしなくなることがわたしにとっての最大の恐怖。いつも 支えていただき、ありがとうございます♪