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【ゴーオンジャー】第43~44話

GP-43「年末オソウジ」

 クリスマス及び年末回、前編。ギンジロー号の外でクリスマスの飾りつけをしている面々が、ボンパーの「ガイアーク出現」の声で並んで変身、メットオン。そこからシームレスに「スーパー戦隊シリーズ」ロゴを乗り越えてOPに繋がる一連の流れがあまりにも完成されており、思わず(映画か?)と目を瞬いてしまった。後半でカラー煙とともにしっかり名乗りを挙げているのも正統派で大変よい。映画か? ゴローダーGTにカンカンバーに、手持ちサイズの武器をこれでもかと繰り出しているのもクリスマスらしくてテンションが上がる。来週はロボ回かな。
 今回登場したのは掃治大臣キレイズキー、7種の秘密道具を使いこなしてこれまで3つのブレーンワールドを滅ぼしてきたらしい。内訳はサウンドにマジック、プリズム。サウンドワールドと言えばロムビアコでおなじみである。あの時はヒューマンワールドの破壊を防ぐため、アイドルソングの力でなんとかなだめて倒したのであったなあ。ワールドの破壊を厭わなければ、騒音を出しつつ力づくに征服しても特に問題はないのか。マジックワールドの落し物は先日ガリレオ似の青少年が解析したあげくPCごとお釈迦にしていたが、折角の魔術文化の灯が絶えていたらあまりにももったいないなあ……。
 ともあれ「大臣」の名を持つからにはケガレシアやキタネイダスと同格であり、同等の強さを期待されるキレイズキー。その名は伊達ではないようで、ホウキショットガンやチリトリシールド、メンボークナイなどの「お掃除道具」でゴーオンジャーやウイングスを圧倒する。特に厄介なのが、相手からの攻撃をすべて拭き取り、絞ることで完成するゾウキングレネード。この閃光を浴びると炎神たちは一瞬意識を失い、しばらくの間戦闘不能に陥ってしまうのだ。前回ロボ戦を阻害したのも、このグレネードによる一撃であった。もちろん各々の手持ち武器だけでも戦うことは出来なくもないが、しかしやはり相棒がいなければ威力も元気も半減である。
 果敢に挑みかかり、あえなく弾き飛ばされた走輔。墜落した山中で、彼はひとりの男性に出会う。まるでバイトのサンタクロースのような恰好をして、べらんめえ口調のその人こそ、スピードル曰く、「クリスマスワールドから来た本物のサンタさん」だ。キレイズキーの攻撃に巻き込まれて墜落し、足を怪我してしまったらしい。
 自分が本物のサンタクロースであることの証明に、サンタは走輔や連たちへクリスマスプレゼントを渡してくれる。もちろん、サンタさんにクリスマスプレゼントをもらえるのは子どもだけの特権である。というわけで、ラッピングされた箱に入っていたのは、かつて走輔たちが子どもだったころ、クリスマスに受け取った懐かしいプレゼントだ。走輔のレーシングカーに早輝のくまさん、連のバス、軍平のパトカーに範人のスクーター。どれも未来の相棒の姿を予見させるような品ばかりだ。大翔のボクシンググローブと美羽のプリザーブドフラワーも、子どものプレゼントにしてはだいぶ大人っぽいようだが、それでこそ須藤兄妹らしい感じもする。
 走輔が久々に手にしたこのレーシングカーは、将来の夢について悩んでいた小さな走輔の背中を押し、絶対にレーサーになるという覚悟を決めさせた大切なおもちゃである。だから彼は人並み以上に、クリスマスに思い入れがあるのだ。明日はクリスマスイブ。無事にサンタさんが仕事を出来るよう、それまでになんとしてもキレイズキーを倒さねばならない。
 そこで連が思いつくのが、サンタさんの仕事道具「プレゼント袋」を利用した作戦だ。目には目を、秘密道具には秘密道具を。プレゼント袋の内部はクリスマスワールドに通じており、いくらでも・どんな大きさでも物を入れることが可能なのだ。例えば、人間が6人とか。
 サンタ姿のレッドが自然な形で戦場にプレゼント袋を持ち込み、スピードルの入ったゴローダーとともにキレイズキーの気を惹く。キレイズキーがグレネードを取り出し、わずかでも隙が出来た瞬間に、ブルー以下6名が一斉に袋から飛び出し、キレイズキーに取りついてなんとか動きを封じる。すぐさまレッドが躍り上がってグレネードをはじき落とし、無力化。これで炎神の力を封じられる心配はない。
 なおも応戦しようとするキレイズキーに対し、意気を盛り返したゴーオンジャーたちは盛大な名乗りを挙げる。元気いっぱいの相棒たちとともに繰り出すゴーオンキャノンボールはキレイズキーのシールドを取り落とさせることに成功。ウイングスの攻撃や必殺スーパーハイウェイバスターもうなりを上げる。最後はカンカンバーとマンタンガンを連結させて、みんな手持ち武器でフィニッシュ。キシャモスの激突をまともに食らい、キレイズキーは爆発四散した……かのように思われた。
 ひょっこり顔を出したサンタと一緒に勝利を寿いでいると、何やら妙なごみ箱がぱかりと口を開ける。黒煙のように中から滑り出してきたのは、なんとキレイズキーその人である。まさかの余裕! まさかの無傷! プレゼント袋の奇襲は二度は使えない。さて、どう戦うべきか……。


GP-44「聖夜ヲマモレ」

 クリスマス及び年末回、後編である。
 お掃除ひみつ道具「ムゲンゴミバコ」に自ら飛び込むことでゴーオンジャーの攻撃を回避したキレイズキー。なんとまあ、プレゼント袋に身を潜めた自分たちの作戦を見事にリサイクルされてしまった形である。さらにバキュームモードのゴミバコに吸い込まれ、一同はバラバラに各地へ飛ばされてしまう。

 走輔、連、軍平が飛ばされたのは、なにやら物騒な男たちが銃を構える部屋。幼稚園のクリスマス会の最中に、逃走中の銀行強盗犯が立てこもっていたらしい。ツリーを踏みにじり、クリスマスを台無しにする犯人たちに走輔の怒りはふつふつと沸騰。とうとう一人に飛び掛かったところで、もう一人がショットガンを構える。「動くな、撃つぞ!」
 すると走輔は床に引き倒した犯人の上からさっと飛びのき、本気トーンで「撃てよ」と言い放つ。片手撃ちで放たれた弾丸が、容赦なく走輔を襲う……!
 しかし次の瞬間、ひしゃげた弾丸は金属音とともに床に落ちている。
「人間相手に変身するのは反則だが……悪りぃな!」
 人差し指をこめかみに当て、キザに相手を指すいつものキメポーズ。目にもとまらぬ速さで変身した走輔、いやゴーオンレッドがそこに立っている。ゴーオンジャーのスーツに、並の銃弾など当然効くはずもない。連と軍平も変身しており、ブラックが銃身をぐにゃりと曲げたところで犯人は戦意喪失。外からは近づいてくるパトカーのサイレンも聞こえる。走輔たちは、子どもたちのクリスマスを無事守ることに成功したのであった。子どもたちの夢と楽しい時間を守る、まさにヒーローのお仕事である。
 走輔の「撃てよ」がなんとも格好良く、漲る自信から生まれる強キャラ感ににこにこしてしまう。床の犯人から一度手を放してでも距離を取ったのは、変身しなければいけない都合もあるだろうが、生身の犯人を誤射や跳弾から守るアタマもあったのかなあ、などと妄想してしまう。

 次いで、大翔と早輝の珍しい取り合わせが飛ばされたのは、なんとも薄気味悪い空間だ。
「異空間か世界の果てか……フン、どちらにしてもすぐに脱出してやる」
「うん。大翔さんといれば、怖くないわ」
 いつもよりちょっとしおらしい態度の早輝。ふたりの歩く空間はどこまでものっぺりと暗く、不気味な白いスモークが足元を流れ、背の高いススキが生い茂り、墓石がいくつも乱立している。そしてその背後から顔を出すのは、まるで絵に描いたような幽霊たちである。
 そう、夏ごろに明らかにされていたが(これも早輝のメイン回だった/お懐かしいウラメシメデス様)、そういえば大翔はお化けがダメなのであった。お祖父さんによる怖すぎる怪談がきっかけで、兄妹そろって唯一の弱点になっているらしい。
 震えて膝を抱えながら、早輝にトラウマを告白する大翔。もはや強がる余裕すらない。しかし、お化けだらけの異世界(仮)に放り出されてたいそう心細いとはいえ、自らの弱みを素直に明かすだなんて、すっかり大翔も丸くなったものだなあ。
 そんな大翔を、早輝は九州弁でどやしつける。
「こら! 大翔、なにしよっと!? そいでも男ん子ね!? ちゃんと付いちょっとね! お化けが怖くてゴーオンジャーがつとまんかいね!?」
 ……今だと色々コンプラに引っ掛かりそうなお言葉である。大翔も「さ、き?」と思わず目が真ん丸。
 背後からやってきた幽霊をさっくり投げ飛ばし、「スマイルスマイル!」と大翔の頬をつかむ早輝。普段通りの明るい早輝の様子にやっとペースを取り戻したのか、大翔もどうにか落ち着きモードである。「君に、勇気を与えられるとはね」とはにかむ姿が少年のようで可愛らしい。
「早輝みたいな妹も、いいかもしれない」
 美羽が効いたら激怒しそうなセリフを口にしながら頭ポンポンしてくる大翔の手を早輝は優しくどかし、お返しとばかりに大翔の頭をポンポンして「お姉さんにだったらなってあげてもいいかな」と軽口を叩く。素直に頭を垂れる大翔がまんざらでもなさそうで可愛らしい。ずっと可愛いなこの回!
 動きのキレを取り戻した大翔は、「近寄るな~っ」と呟きながら幽霊を殴り飛ばす。すると、飛んでいった幽霊が壁にぶつかり、その先に光あふれる出口が開く。顔を見合わせて頷き、大翔と早輝が走り出した先にあったのは……お約束、遊園地であった。異世界どころかばっちりお化け屋敷だ。壊したセットと殴られた役者の顔に対し「すいません弁償します、そちらも」と慌てる大翔が可愛らしい(二度あることは三度ある)。
 ともあれ、先行して出ていたキョウレツオーやレッドたちに合流するゴールド・トリプターとイエロー・ベアール。「大翔が大変でさ~!」と早速お姉さんぶるイエロー。「何があったんすか!?」と驚くブルーへ食い気味に「何も無い!」と言い切るゴールドが可愛らしい(4度目の正直)。

 残りの範人・美羽・サンタさんトリオは小田原の漁港に飛ばされる。ムゲンゴミバコ、ごみを世界のあちこちにばら撒くという触れ込みだったわりに、案外近場にゴーオンジャーたちを撒き散らしてくれたようだ。人間は比重が重いから仕方ないのかも。
 さっさと現場へ戻ろうとする範人たちだが、そこで急に大声をあげて頭を抱えるサンタ。どうやら、大切な異次元プレゼント袋を失くしてしまったらしい。「僕たち早く戻らなきゃ」と渋る範人を押しのけて、美羽はサンタへ捜索協力を申し出る。
 それにしても、前回はノリノリでギンジロー号の飾りつけをしていた範人なのに、少し意外な態度である。ガイアークを倒すことを何よりも優先する考え方は、やっぱり軍平の影響だろうか。かつてはアルバイトにかまけて怒られたこともあったのに! 今の範人が真面目にゴーオンジャーのお仕事に取り組んでいることの現れとも言えよう。
 美羽がサンタに好意的なのは、前回懐かしいプレゼントを渡されたのがその原因であるようだ。プレゼントをもらったときの気持ちを思い出させてくれたことへの感謝と、それをちゃんと子どもたちにも届けたいという使命感。確かに、面倒見は良いが人付き合いの少ないセレブである美羽は、誰か(主に「捨て犬」扱いのメンズ)に何かをあげることこそ多いだろうが、自分が特別な何かを貰うという経験は、最近ではもしかすると少ないのかもしれない。詐欺師走輔から貰ったアクセサリーも結局はその場しのぎの盗品であったし……。
 美羽の思いを聞いて、範人も共感の笑顔を見せる。確かにガイアークを倒して平和を守るのがゴーオンジャーの使命だが、その平和は子どもたちの笑顔のためにあるのだ。
 ごみ集積場の山の中からたった一枚のプレゼント袋を探し出すため、範人は美羽の鋭い感覚を使うことを提案する。「あれは誰かの意思を感じるもので、こういう時には……」としり込みする美羽に、彼は「絶対に奇跡は起こるよ」と明るく言い放つ。「だって、今日はクリスマスイブだもん」
 祈るように組まれた美羽の手に、範人の、そしてサンタの手が重なる。白いごみ袋の山の中にぽつんと埋もれた、サンタクロース柄の紙袋……はたして、その奥には探していたプレゼント袋がある。モノには意思はないけれど、そのモノを想う3人の強い意思が、彼女の感覚をいつも以上に研ぎ澄ましたのだ。

 キレイズキーの目論む最終作戦、題して「ヒューマンワールド年末ジャンボ大掃除」。「スペッシャルに強力なエネルギーの詰まったボール」をイルミネーションのごとく街中に張り巡らせて、それを一気に起爆することで「スペッシャルな大爆発が起こって」「人間たちの街がスペッシャルに消えてなくなる」のがその目的である。掃治大臣、なかなかやることが派手。だが、肝心の起爆装置が今にも点火されようとした瞬間、飛び込んできた銃撃がそれを阻止し、装置を破壊する。はるか上空で見得を切るのは、スマートな曲線美の巨人・セイクウオーバルカだ。ガンバルオートリプターといい、ちゃっかり組み換え遊びの宣伝を入れてくるのがクリスマス感。
 グリーンとシルバーが駆け付けたことにより、ここに7人のゴーオンジャーとすべてのロボが勢ぞろいする。3つのワールドを滅ぼして手に入れたドッキリウムエナジーの力で超産業革命していたキレイズキーも、これにはさすがにたじたじである。
 横並びした機械仕掛けの王たちは、それぞれの搭乗者によって力強く名乗りをあげていく。キョウレツオー、エンジンオー、ガンバルオー、セイクウオー、そして忘れちゃいけないゴローダーGT。全員が声をそろえてゴローダーの名乗りをやってくれるのが激アツである。しばしば炎神たちの仮の身体として活躍してくれるゴローダー、今日は人工トーコンソウルでの出陣だが、正義を叶えるための仲間であることには変わりないものなあ!
 回転から踏み込んだ足で急制動を掛け、正面に身体を向けてポーズを決めるお決まりの流れが嬉しい。ゴーオンオールスターズ、まさに勢ぞろいの瞬間である。
 バケツバズーカの砲撃を飛び上がって避け、息を合わせたキックからの包囲タコ殴り。バズーカの追撃が命中したかと思いきや、今度はそれぞれの合体を解いて一気に猛突進! ということは、エンジンオーG12の出番である。ゴローダーストライクでバズーカを破壊し、「貰ったぜ、最終コーナー!」。G12グランプリで見事キレイズキーを撃破する。

 また二人ボッチに戻ってしまったケガレシアとキタネイダスは、ヘルガイア宮殿でやけ酒の宴。日本酒「螺子の涙」の他にもワインっぽいボトルがあって気になる。ラベルの模様、もしかしてケガレシア様のお姿か?
 キレイズキーが残したエネルギーボールはそのままイルミネーションに残すことにして、走輔たちはサンタにプレゼント配りの手伝いを申し出る。
「ヒーロー・ゴーオンジャーからプレゼントが届くなんて、最高のイブだな!」
 サンタの言葉に誇らしげな表情を浮かべる面々。かつて夢を貰ったクリスマスを無事守りきり、今度は自分たちが夢を与える側になるのだ。トナカイ代わりのキシャモスの背に乗り、一行は雪降る夜空へ繰り出していく。

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