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【タイムレンジャー】第21話~第22話


Case File.21「シオンの流儀」

 巷で噂のエナジードリンク・パワースプリッティーは、ロンダーズが三十世紀の技術で作成・売りさばいていた未来のアルコール飲料であった。へべれけになった仲間たちを置いて、一人で工場へ忍び込むシオン。一度は用心棒ハイドリッドに反撃されて逃げ帰ったが、それはあくまでもデータ取りである。二度目の侵入では相手に合わせてチューンナップしたご機嫌装備でばっちり勝利を決めてくれる。見た目が子どもっぽくても、彼だってタイムレンジャーの一員であり、なおかつピカイチのエンジニアなのである。

 あるいはあのリーマン氏がメチャメチャ酒に強いのか。アルコールであるからには体質も関係するのであろう。


Case File.22「桃色の誘惑」

 男ども、結婚詐欺にあうの巻。依頼人の山田氏から「行方不明になった婚約者を探してほしい」と相談されたトゥモローリサーチであるが、まさにミイラ取りがミイラ、竜也もドモンもアヤセもみな山田氏の婚約者=結婚詐欺師バーベラのとりこである。
 シングルファザーの山田は何かと大変だろうと、ユウリは婚約者を見つけるまでの間のおさんどんを買って出る。だが残念なことに、警察学校には家庭科の授業は無かったようだ。自らの生活能力のなさにショックを受けるユウリに、バーベラは外見ディスで余裕の追い打ちをかける……が、それが却ってユウリに火をつけた。完璧なボディメイクと自分磨き、ぴったりとしたドレスにばっちりメイク。完全武装で現れたユウリに、さや当て中の男どももやっと目を覚ますのであった。

 バーベラがお見合いセンターで出会った男性たちに提供していたのは、相手が最も追い求めたくなるような外見や仕草だ。お見合い相手達はバーベラの幻想に恋をしてしまう。だがユウリが戦いの場に持ち出したのは、特定の誰かのためではない、彼女が彼女自身で最も魅力的だと考える「最強の私」である。相手を恋の罠に誘い込むのではなく、自分の魅力でぶん殴っていくスタイル。その媚びない姿勢に惚れ惚れしてしまう。
 こんなことを書くとユウリがまるで傍若無人の女王様のようだが、それは彼女のほんの一面でしかない。お話の終わり、バーベラの人間体・キョウコに変装したユウリは、山田の部屋のドアに一通の手紙を残す。内容はキョウコから山田への暇乞いだ。「自分の婚約者がロンダーズだった、しかも詐欺師だった」なんてことを山田に悟らせないようにするための、ユウリの心遣いである。
 だが、変装姿のユウリを見送りながら、山田氏は「すいません、ユウリさん」と呟く。ロンダーズの件はともかく、自分の婚約者が詐欺師であることに、山田氏自身も薄々気が付いてはいたのだろう。何度も失敗しながら家事をしようとしてくれて、最後には自分が傷つかないように優しい嘘まで残してくれたユウリ。そんな真面目な彼女とトゥモローリサーチに、半ば愚痴のような無理筋の依頼をしたことへの罪悪感。
 もちろん悪いのはバーベラだが、バーベラを圧縮冷凍したところで完全なハッピーエンドとはならない。色恋沙汰に首を突っ込まなかったシオンだけはひとり飄々としているが、ほかのみんなはちょっとずつ寂しい気持ちになるような幕切れであった。

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