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【龍騎】第1話~第10話

承前

 鏡の中の世界は、最も身近な異空間である。鏡に映る自分自身は、最も身近な他人だ。私が右手を挙げた時、鏡の中の私は”向かって右手”を挙げる。もし彼女が私の物まねをするだけの存在ならば、挙げられるのは”向かって左手”でなければならないのに。そっくりなようでいて、すべては反転している。銀の薄膜一枚隔てて、彼方と此方はあまりにも遠い。

 というわけで、2周目の『龍騎』を見た。最推しは初見から変わらず北岡法律事務所なのだが、先日縁あって生の松田悟志氏を拝見する機会に恵まれ、オーラに当てられてうっかり浮気しそうになっている。格好いいとか素敵とか言うよりもはや尊かった。語彙力の喪失。サイン本大事にします。

 ディケイドの記事同様、古い感想と新しい感想はごちゃまぜスタイルで。なお最初に見た時には意識していなかったのだが、今回の配信では各話にサブタイトルがついていた。まとめもそれに準拠することとする。キーフレーズがつくことで、また少し違って見えるのも面白い。


第1話「誕生秘話」

 たしか『ドラゴンナイト』のfigmaが出ていたよなあと思ってグッスマ公式に寄り道してきた。お値段税込み3,352円、隔世の感がひしひしと身に染みる。しかし13ライダーがすべてラインナップされているのは豪華だなあ。

『クウガ』『アギト』を連続で視聴し、続けざまに見始めたがゆえのファーストインプレッション。「仮面ライダー」と言う単語への反応で、ここがディケイドに破壊される前の独立した世界であることを思い出す。

 ×自分で自分成敗 → 〇自分自身で成敗

 とはいえ、ただの一般人が悪人を懲らしめて回るわけにもいかず、かといって警察の不正がすっぱ抜かれるような社会ではお巡りさんへの絶対的な信仰もしらけムードである。編集長へのコネ入社であることはさておき、己の正義を信じてジャーナリストを目指すというのはわりと現実的なセンかもしれない。ペンは剣よりも強し(諸説あり)。


第2話「巨大クモ逆襲」

 特にこのクモは気合が入っていたなあ。鏡の中から絡みつく糸の感じがリアルで恐ろしく、それがゆえにCGのモンスターにも説得力と存在感が生まれた感じがした。

 無機質な名前の羅列だけではフィクションのようにも思えてしまう被害者たちの存在が、自らの中で現実として重みをもつことにより、他人事ではなく自分ごととして事件に向かい合うことができる。マスコミの実名・写真入り報道って、本当はそういう理由のためにされているはずだと思う。
 ともかく、真司は自分ごととしてこの事件にかかわることを決める。もしかすると、それすらも神崎士郎の目論見の内だったのだろうか。


第3話「学校の怪談」

 たった一人にだけわかってもらえれば、いや、いっそわかってもらえなくても、そのたった一人が救われるのならそれでいい。蓮の考え方はシンプルで筋が通っており、それゆえにこちらとしては寂しい。

 肉食生物ならやっぱり柔らかい若い肉を好みそうなものだが、しかし若すぎても可食部分が減ってしまうか。モンスターの巨体を維持するためには質より量が大切なのかも。
 真司の行いは場当たり的で、よく事情を知らないが故の思い込みに満ちているが、それでも優衣のために何かしてやりたいという気持ちは本物だ。


第4話「学校の怪談2」

 OREジャーナルの給料は定かでないが、3万は少なからず大金だからな……。
 しかし真司、いくら困窮して家を追い出されても愛車は手放さないのか。メンテやガソリン代などの維持費もかかるだろうに(取材に行けば経費で落とせるのだろうか?)。行きたいところにいつでも行くことが出来るほうが、寝床を確保するよりも真司にとっては大切なことなのだろう。
 令子の小さいクルマもそうだが、真司のバイクも小回りが利いてどこにでも乗って行けそうだ。少数精鋭メディアの記者らしいと言えばらしい。蓮のバイクと違って二人乗りも出来なさそうだし(出来るのかな? どうだろう)。


第5話「骨董屋の怪人」

 キャストクレジットの話です>友情出演
 モンスターとワンセットになったような各スーツのデザイン、ニコイチ感があってよい。それだけに、浅倉がベノスネーカー以外のモンスターを使っているのは「意に染まぬ使役」感が増して見える。

×個々から → 〇ここから


第6話「謎のライダー」

 二刀流には二つの盾で対抗、真司なら考えかねないのではないかと……。

 確かに親族でもなく、同志というにはふわっとしているし、優衣と蓮の関係性が何かと問われればおともだち以外の何物ではないのであった。日本語むつかしい。

 真司とはまた違ったレベルで、玲子も自分の考えを真実だと確信している。それは、その考えが確固たる根拠に基づいているからだ。自ら立脚すべき根拠が確かなものであると見定めるために玲子は日々取材を行っているのであり、だからこそ切れ味鋭い記事が書けるというものである。ジャーナリスト、格好いいぞ。


第7話「新種誕生?」

 北岡先生初登場回(好き)。

 小物みたいな所業の癖にやたら堂々としているから「そんなもんかな」と思いかけてしまう。上背に騙されるな!(好き)

 蓮の時間は止まるべくして止まったのではなく、蓮自らが止めているのがポイントである。ゲームのプレイ中に一度ポーズボタンを押して、一生懸命攻略方法を探している感じ。


第8話「4人目ゾルダ」

 唐突な初期幻徳へのディス。ディスなのか?

 真司を煙に巻くことで楽しんでいる可能性もある。わる~~~い!


第9話「真司が逮捕!?」

 これは完全に余談なのだが、先日BS放送で『ガメラ2』が流れていた。途中までちらっと見ることが出来たのだが、夜の札幌に燦然と輝く「ナショナル」の屋外広告に目が釘付けになった。当時の風俗がふんだんに盛り込まれた映像作品は、江戸時代の浮世絵や絵草子よろしく一種のタイムカプセルになりうる。最近のライダーや戦隊ではあまりこれといったスポンサープロダクトを見かけないようにも思うが、それでも数十年後に見返せば、何かしらの懐かしいにおいを嗅ぎ取ることになるのだろう。

 お金さえきちんと払ってもらえるのならば、どんな相手だろうと弁護するのが北岡秀一である。悪徳弁護士とはいえまさか法廷で撃ちあうわけにもいかず、裁きの場で使える武器は六法と己の弁舌のみ。だからこそ接見を録音したり、地道な下準備が必要になってくるわけだ。といっても今回の録音は趣味(ライダーバトル)と実益(弁護士業)を兼ねている感もあるが……。

 弁護士は喋るのがお仕事でもあるから、のど飴くらいなら確かに持ち歩いている可能性はあるか。メントール系の辛い飴でなくて幸いである。
 他人に髭をそってもらうとき、そられる側は刃物の下に喉を晒して完全に無防備な状態になる。それをまかせているというこの状況が、北岡先生と吾郎ちゃんの間の関係性を端的に描写しているなあと思う。吾郎ちゃんは絶対に自分に危害を加えない、と言う自信が北岡先生にはあるのだ。


第10話「ナイトの危機」

 いつも連ツイの頭に着けている「『龍騎』〇話みた」を一周目では忘れていたらしい。よっぽど吾郎とゆかりのツーショットに動揺していたと見た。

 嘘のつけない真司と嘘のつける蓮、ここでもひとつ対照的。
 ゆかりの母親のため、ポンと大金を託して帰る姿に、金で治る病ならいくらでも治せるのに、という北岡先生の自嘲のようなものを少し感じる。いくら金を積んでも治らない、北岡先生自身の病の残酷さがより際立つというか。

 ゆかりに追いついて声を掛けたものの会話が続かず二人して黙り込み、通りすがりの奥様方に白い目で見始められたのであわてて手近なカフェに入る吾郎とか、席に着いたはいいもののもじもじ遠慮してしまってメニューをちっとも決められないゆかりとか、そんなゆかりの態度を微笑ましく思った吾郎がひとまず彼女の緊張をほぐすため、誰でも思わず笑顔になっちゃうような一番大きなパフェを注文するところとか、無い記憶が次々目に浮かぶようである。
 髭剃りも任せられるような信頼できる秘書はほかにそういようもなく、北岡はとうとう吾郎にシャッポを脱ぐ。吾郎も吾郎で、北岡を絶対的な主としてあがめているわけではなく、こうと決めたら譲らない頑固な一面もあるようだ。ただの雇用者―被雇用者というよりかは、彼ら自身がキャラソンで歌っているように、友と呼んでも差し支えないような間柄。優衣と蓮の「友達」関係よりもグッと親密で、まさに二人三脚と言った感じである。

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