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【ゴーオンジャー】第35~36話

GP-35 「炎神ノキズナ」

 ホロンデルタール様と古代炎神たちの回。

 キシャモスたちの復活とともに蘇った古代蛮機獣・ホロンデルタール。彼の発するホロンデン波は大変強力だ。往時は恐竜たちを同士討ちさせて滅亡へと導き、現代においてはカーナビや信号を狂わせて町の交通網に大混乱を引き起こす。もちろんデン波だけではなく、自身の運動能力も大変高い。炎神たちを一撃で吹き飛ばした腕力は筆舌尽くしがたいものがある。
 ケガレシアとキタネイダスを引き連れて、勝手にホロンデルタールへ忠誠を誓うヨゴシュタイン。ウガッツたちに作らせているのは特製のネジである。ホロンデルタールの両肩についたレトロな丸ゼンマイを、現代のガイアーク技術で開発した特殊なネジに変えることで、ホロンデン波はさらにパワーアップ。立ち向かってきたキョウレツオーを逆に乗っ取り、暴れさせることに成功する。ホロンデルタールから伸びたシートベルトのような幾筋もの帯が、操縦室の中でツタのように絡み合う。本来なら搭乗者の命を守るためのベルトが、今はキョウレツオー自身の自由を奪う戒めとなっている。
 だが、古代と現代のガイアークの粋であるホロンデルタールは、同じく古代と現代の炎神が力を合わせたG12にかなわない。爆散後、はじけ飛んだ特製のネジを拾い上げ、ヨゴシュタインはそれを自らの肩に突き刺す。忠誠を誓うだなんてとんでもない、彼の狙いは最初からここにあったのだ。ホロンデルタールの強大な力を取り込んで、ヨゴシュタインはひとり覇道を進むのみ。ケガレシアやキタネイデスのことなど、まるで置いてけぼりである。

 かつてホロンデルタールを追ってヒューマンワールド(当時はダイナワールドか)にやってきたキシャモスら。当時の彼らには、ホロンデルタールごと自分たちを化石化し、封印することが精いっぱいであった。恐竜たちはあくまでも庇護する対象であり、手を組むべき仲間ではなかったということか。
 だが今、彼らには走輔たちという人間の相棒、そして子孫であるスピードルたちという仲間がいる。だからこそ、ホロンデン波により操られながらも、スピードルたちの必死の呼びかけ、そしてエンジンオーとの気合の入ったクロスカウンターにより、キシャモスたちはどうにか自我を取り戻すことができた。
 さらに調子に乗ったご先祖たちは「すごいこと かんがえた!」と大号令を発し、前人未到のエンジンオーG12への合体を果たす。ボンパー曰く「出来なかない」らしいが、ぶっつけ本番で出来てしまうのはさすがの一言。合体に向けて走り出す炎神たちが、それぞれの相棒たちのごとくひとりひとり見得を切っていくのが大変よい。今日の主役は確かに君たちだ。くるくる回るバルカにちょっぴり早口ジャンボエール、そして古代炎神の名乗りは字幕付きの特別仕様である。
『古代発で出発進行 炎神キシャモスだよ』
『上るぜ のぞみの炎神ティライン』
『下るよ ひかりの炎神ケライン』
 ティラ・ケラが完全に新幹線なのはともかく(オーパーツだ……)(それを言うなら汽車もそうか……)、『キシャモスだよ』! 『だよ』って! そういう子だったのきみは!? 好感度爆上がりじゃないか!!!
 閑話休題、完成したるはエンジンオーG12。巨大なはずのホロンデルタールがさらに見上げなければならないほどの巨身を誇っている。必殺技「G12グランプリ」は今までの4ロボの幻が次々に斬撃を繰り出してからの、炎を纏った堂々たる一閃。まさに王の中の王といった風格である。

 ホロンデルタール撃破を喜び合いながら、芝生の広場を抜け、ギンジロー号へ戻ってくる面々。カメラは一本の木の後ろから、彼らの姿を映している。画面左から右へ、木の陰を横切って楽しげに歩いていく範人や連。後ろから並んで歩いてきた大翔と走輔も木の陰に入り、しかし次の瞬間、影から出てきたのは大翔だけである。
 カットが変わる。足を止め、振り返る大翔。何事かと戻ってくる一同。立ち尽くしたままの走輔は、何も言わずに――そのまま後ろに倒れこみ、体中を錆びつかせてしまう。
 一緒にキシャモスに乗り込み、その後の戦いも見ていたスピードルだけが、異変の理由に気づいた。ヨゴシュタインに打ち込まれた小さなネジが走輔の体内に入り込み、その心臓をギリギリと締め付けているのだ。
 かつてはさらった人間をウガッツに変えようとしていたこともあるガイアーク勢だ。生物を無生物にすることなど、彼らにとっては恐らくたやすいことであろう。おちゃめな仲良しムーブのおかげですっかり忘れていたが、あくまでもガイアークは恐るべき敵、ヒューマンワールドを汚し尽くさんとする侵略者なのである。

 余談。ガイアークゼミナールによると、ヨゴシュタイン様の本名は「バロン・ヨゴレックス・ド・シュタイン」だとか。大臣、男爵だったのか。己の身分がそこまで高くないからこそ、くすぶっていた無役のヒラメキメデスを登用し、さらに利用できるものはご先祖でも使う、実力主義な考え方が出来るのかもしれない。ケガレシア様は王族から姫扱いされていたし、おじゃる口調がなんとも高貴なイメージ。キタネイダスはどうだろう? 彼のバックボーンはいまいち不明である。ヨゴシュタインと一緒にセーラー服で歌って踊ってくれるようなノリの持ち主だということだけは分かるのだが……。


GP-36 「走輔...トワニ」

 ホロンデルタールの力を手にしたヨゴシュタインはもはや地上の支配者のごとく、街中を堂々と闊歩しながら小さなネジの種子をあたりにばら撒く。世界はじわじわと錆びついて動きを止めていく。やってきた連たちを「一番暑苦しい奴が見当たらないな」と煽り、加勢しようとしたケガレシア達にもうるさいとばかりに刃を向ける姿は、まさにワンマン征服者そのもの。かつてひとりで恐竜を滅ぼしたホロンデルタールのごとく、自分一人でゴーオンジャーを全滅させ、ヒューマンワールドを手中に収めようとしている。
 なかほどで、巨大化したヨゴシュタインの体内にゴーオンジャーらが飛び込むシーンがある。ヨゴシュタインの腹の中には、内臓に当たる機械とともに、ホロンデルタールの力の象徴であるあの触手のようなベルトがそこかしこに巡らされている。まるで、制御を失ったキョウレツオーの操縦席のようだ。果たして彼は、ホロンデルタールから奪った力を全てコントロールできているのだろうか? 強大な力をネジごと無理やり注入し、却ってその力に縛られてはいないか?
 その真意も、今となっては確かめられない。巨大化したところを倒されてなお、引きちぎれたホロンデルタールのネジを片手に再起をはかろうとするヨゴシュタイン。その背中に、蘇りし走輔が待ったをかける。一騎打ちの勝者は走輔。誰よりも独断専行で突っ走ったヨゴシュタインは、三大臣の中で誰よりも先に結末を迎えることとなる。
 ヨゴシュタインの死の瞬間を目の当たりにして、キタネイダスは呆然と膝をつき、ケガレシアも足をよろめかせる。あんな別れ方をしていても、二人にはまだヨゴシュタインに対する情があったようだ。ヨゴシュタインの方も、せめてあの世ではヒラメキメデスと再会し、自分には愉快な仲間がいたのだということを思い出していてほしい。

 走輔の復活劇はもちろんのこと、連たち6人にとっても、今回は再起のお話であった。物言わぬ彫像と化した走輔をギンジロー号のベッドに寝かせ、重苦しい雰囲気の一同。泣きじゃくる範人の頭を乱暴に撫でてやりながらも、ふと背けた大翔の顔には静かな憤りが浮かんでいる。
 そんな時現れたヨゴシュタインに、めいめいは走輔の仇とばかり、がむしゃらな戦いを挑んでいく。だが、連携も取れずに味方を押しのけ、突き飛ばすような戦い方では、パワーアップしたヨゴシュタインにかなうはずもない。逆にチェンジソウルを奪われ、彼らは変身すらできなくなってしまう。
「やっぱ、無理やったわ。人間と一緒に戦うって……」
 すっかり気力をなくした戦士たちを前に、ベアールVが呟く。戦おうとしない相棒への怒りではなく、その声音には虚しさとやるせなさが詰まっている。一蓮托生の相棒と全力を出して戦うには、常に両方が最高のコンディションでなければならない。早輝と一緒に戦うためには、彼女がいつでもスマイル満開でなければ……。逆に言えば、早輝から笑顔が失われた時、いくら自分に戦う気力があっても、ベアールVはその実力を万全に発揮することが出来ないのだ。バディ制の最大にして唯一の欠点。早輝を大切に思い、その心情を慮るからこそ、今の早輝に戦いを求めるのは酷であると、ベアールVは分かっている。
 そんな中、スピードルの言葉を皮切りに、次々と走輔の思い出がよみがえってくる。走輔と走った日々の記憶は、そのままゴーオンジャーとして駆け抜けてきた日々の記憶である。チェンジソウルが無くても、ゴーオンジャーに変身できなくても、「俺たちはズバリ、ゴーオンジャーだ!」
 フライパンに麺棒に鉄パイプ、およそ正義のヒーローには似つかわしくないような武器を手に手に取って、連たちはヨゴシュタインのもとへ向かう。正義という一点の曇りもないゴールを共に見据えた彼らの攻撃は、がむしゃらながらも連携が取れており、ついにはヨゴシュタインから槍を奪い、一撃を入れることに成功する。
 巨大化したヨゴシュタインを前に、連はボンパーへ連絡を取る。生身での炎神への搭乗――スーツなしでは推奨されない、大変危険な行為である。だが、彼らは覚悟を決めた。炎神たちもまた、その覚悟を飲んだ。もう「一緒に戦うのは無理」などとは言わせない。各々は相棒のハンドルを握り、必死にヨゴシュタインへ食らいつく。そして先ほど付けた胸の傷口から、奪われたチェンジソウルを取り戻すことに成功するのだ。自分にはチェンジソウルを取り戻さねばならない相棒は乗っていないというのに、スピードルは自ら率先してヨゴシュタインの巨躯を押さえつけ、連たちが体内へ侵入する手助けをする。スピードルと走輔の間に培われた絆は、炎神と人間が助け合うことのできる繋がりあいだ。走輔自身が失われても、その意思はちゃんとスピードルに残っている。
 前回の炎神たちの名乗りを彷彿とさせるような、6人並んでの堂々たる名乗り。そしていま、12体の炎神と「6つ、いや7つの心」が一つとなり、エンジンオーG12が聳え立つ。コントロールルームの真ん中の席はぽっかりと空いたままだ。持ち主のいないハンドルブラスターは連が手に取り、早輝がブラスターソウルをセットする。もちろん最後のG12グランプリは、全員でトリガーを引かねばならないからだ。7つの心がこもった必殺技は、ヨゴシュタインの全身を圧倒する。
 たとえ誰かがいなくなっても、それでゴーオンジャーが終わるわけではない。悲しみに沈んでいてもガイアークは待ってはくれないし、培われた正義の心はみんなの中に残り続ける。炎神たちにとっても、唯一無二の相棒や、それを支える仲間がいるからこそ、戦うこと、戦い続けることが出来るのだ。正義のロードはどこまでも続く。だからこそヒーローは、涙を拭いて立ち上がる。

 そして、走輔である。
 暗闇の中、遠い光に向かってふらふらと歩いていた彼は、誰かに呼ばれたような気がしてふと足を止める。それは仲間たちの声か、それともスピードルの声だろうか。あるいはまったく知らない、街の誰かの泣き声かもしれない。世界が悪に脅かされる時、ヒーローは必ずやってくる。そして今、世界は大ピンチなのだ。
 G12に撃破され、ぼろぼろになったヨゴシュタイン。逃げ延びようとする彼に、走輔は勝負を挑む。投げつけられたマントの目くらましを払いのけ、天頂からの重たい一撃を後ろに飛び退って回避。膝をついたところに雷撃が襲い掛かるも、ロードサーベルで弾き飛ばし、燃え盛る炎の中しっかりとヨゴシュタインを見据える走輔。おもむろに走り出した両者は互いに武器を構える。先に動いたのはリーチの長いヨゴシュタインだ。繰り出された槍を膝スライディングで回避しながら、走輔は横薙ぎの一発をヨゴシュタインの胴に食らわせる。
 槍の穂先に引っ掛けられて、走輔のメットが宙を舞う。
 残身のまま、呻く走輔。その背後で、ヨゴシュタインの体から真っ黒なオイルが噴き出す。
 自分の命を奪った相手に、彼は見事自分の手でケリをつけたのだ。

 余談。EDが古代炎神や須藤兄妹もプラスされた豪華仕様になっている。踊るアニが楽しそうで何よりですね!
 いよいよ賑やかな画面を嬉しく思いつつも、物語の終わりが近づいてきたようでなんだか寂しくもある。こればっかりは連続ドラマの宿命であるなあ……。


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