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【キュウレンジャー】第41~42話

第41話「突入!惑星サザンクロス」

 ドン・アルマゲの潜む南十字座系に乗り込むため、まずはバリアを突破するためのキュータマを4つ、各星系から集めてきたラッキーたち。とうとう本拠地を叩く時間がやってきた。キュータマを集めていることはジャークマターにもすでに知られているので、ここからは総力戦かつスピード勝負である。
 まずはそれぞれロボに乗り込み、バリアの起点となっている衛星を制圧しに向かう面々。「ゆめゆめ龍に翼を得たる如し」といつものキメ台詞を言う司令、「ゆめゆめ」を「夢のように強い」とかの意味と勘違いしていそう。あるいは宇宙スラングでもっと適切な意味があるのか。なんとなくかっこいいからとりあえず接頭語にしてみただけなのか。
 ラッキーはオリオンバトラーに乗り込んで出場。自律駆動も出来るはずなのになぜ、と思ったが、肝心なのは制圧した後である。衛星から星系の中心に向かい、4つのキュータマのキューエナジーを開放することにより、バリアは解除されるらしい。オリオンバトラーだけではそこまでの作業は行えない。
 ラッキー不在のキュウレンオーは、立候補によりガルにコントロールを任される。「俺とシーザーの相性は最高ガル」というのがその理由で、どうやら一人と一匹はラッキー推し同士として急速に仲良くなったらしい。同担拒否じゃなくてよかったね! ラッキー曰くガルは仲間でシーザーは友達なので、競い合わないところもよかったか。
 ともあれ4体のロボはそれぞれの持ち場で量産型巨大ゼロ号を瞬殺。無事バリアは解除され、次はいよいよ惑星サザンクロスへ突撃……と思いきや、またしてもここで障害が。船ごとサザンクロスに入るには、ヘルズゲートなる門を通過する必要がある。そのためには近くの宙域にバトルオリオンシップを待機させたうえで、制御室を制圧せねばならない。コギツネキュータマによるステルス機能をバランスが開発したが、稼働時間は30分が限度だ。前回のおつかいクエストに続き、今回は時間制限付きの侵入ミッションというわけである。惑星ゲムはとうにクリアしたはずなのだが、なんだかゲームじみた展開だ。一同はおにぎりとみそ汁で出撃前の体力チャージ、もしかすると小太郎リクエストのレシピをスパーダが再現してくれたのかしらん。おかかを嗅ぎ分けてシーザーも得意げである。とってもかわいいね? 君はご飯を食べられるのかな?

 司令とラプターを留守居役に、制御室めがけて惑星サザンクロスへ乗り込むキュウレンジャー。人数を生かして二手に分かれ、ガルたちはわらわら湧いて出た警備インダベーの足止めを。小太郎の生身アクションが元気いっぱいで、しっかりリベリオンでの訓練を受けてきたのだなあと感じさせる動き方。めちゃめちゃ呑み込みが早いな! 同じ地球人として鼻が高いぞ!
 そしてラッキーたちは制御室の中枢へ走る。建物の奥で待っていたのは黒十字総統ならぬ南十字総統、かつての南十字座系の王ことサザンキングであった。前回のキュウレンジャーハリケーンといい、大先輩へのオマージュは思わずニヤリとしてしまう。
 サザンキングの放つ攻撃は、各々に歪めた過去を見せ、偽りのトラウマを刺激する地獄のような精神波である。クエルボの幻覚を見るツルギに、恐らく故郷の星を見ているハミィとスティンガー(あるいはスティンガーは兄を見ているかもしれない)、アキャンバーに操られていた時の記憶なのか、「バランス……」と相棒の名を呼ぶナーガ。キュウレンジャーの構成員はみな、過去にジャークマターによって手ひどい目に遭わされてきた者ばかりである。惑星トキでの試練など手ぬるいとばかりに、それぞれはもだえ苦しむ。
 そんな中、ラッキーだけは微動だにせず立ち尽くしている。幼いうちに爺やとともに小獅子座に移り住んだ彼は、母星の蹂躙というおそらくもっともトラウマになるべき光景を、実ははっきりと直視してはいない。だからラッキーの見る幻覚は過去に起こったことではなく、彼が恐れるであろう架空の出来事だ。自分の幸運の原点である父王が、幸運で得てきた大切な仲間たちを手にかける姿――一度は幻覚に飲まれそうになったラッキーだが、父王の発した台詞に違和を得て、それを足掛かりに見事精神世界を脱出することに成功する。偽物の父と対峙し、しかし記憶の中の父を信じることでその嘘を暴く、という経験を、ラッキーはつい最近したばかりなのだ。ラッキーの父への思いは過去イチで高まっていると見ても過言ではないだろう。サザンキング、完全にタイミングが悪かった。ご愁傷様である。
 ツルギたちも現実を取り戻し、スターチェンジ。キュータマをセットした後、両手をはたき合わせるようにして立ち位置を合わせるナーガの所作が格好いい。シシレッドオリオンに変身したラッキーの華麗なる戦いぶりもあって、彼らは見事ヘルズゲートを閉ざす装置を破壊することに成功する。
 あとは時間内に船に戻ればミッションコンプリートである。建物を出たラッキーたちが目にしたのは、傷つき倒れた仲間の姿、そして今にもガルを手にかけんとする金色の武者。さきに果敢な体当たりをかましたシーザーから何事かを聞いていたガルは、ラッキーに「戦うな」と必死の叫びを漏らす。が、それが却ってラッキーの心に火をつけた。ガルの仇を取るため、彼はまっすぐに走り出してしまう。交差する攻撃に、武者の面は割れ砕け……呆然とした面持ちで現れた顔は、ラッキーの父・アスラン王その人である。
 さっきまで全力で倒そうとしていたのに、父の顔を見た瞬間、ラッキーは思わず笑みを浮かべてしまっている。なにしろずっと会いたかった父なのだ。今の状況も互いの立場もすべて忘れて、彼はアスラン王へ歩み寄ろうとする。王もラッキーの姿を見とめ、その名を呼ぶが、次の瞬間現れたドン・アルマゲの分身が、親子の間に割って入る。
 曰く、今のアスラン王はドン・アルマゲに憑りつかれているのだという。ホシ★ミナトの時は肩に乗った小さな相方がドン・アルマゲの分身であったが、アスラン王の場合はこの仰々しい兜が依り代になっているのだろう。再び自分をなくした王がこれ以上攻撃を仕掛けてくる前に、アマノガワキュータマの力でツルギはガルとラッキーを撤退させる。ここにきて初見の便利なキュータマが次々登場、リベリオン開発部の面目躍如か。
 満身創痍でブリッジに戻った面々。だが、ここで一時停止というわけにはいかない。決死の覚悟で開けたゲートは、彼らの回復を待ってはくれないのだ。惑星サザンクロス突入作戦は予定通りに実施される。ラッキーを止めようとした際、ツルギの身体に現れていた異変も気がかりだ。ホウオウキュータマの力を使ってラッキーを蘇生させた際に、彼の命にも何らかの問題が生じていたのだろうか……。


第42話「父か? 宇宙か? ラッキーの覚悟」

 ラッキーの覚悟が問われる回。
 父アスランがドン・アルマゲの手に落ちていることについて、ラッキーは一人で悩みを抱え込んでいる。「あの人の子どもである前に宇宙を救う救星主」であるラッキーは、父を助けたいという思いを抱えながらも、その望みを捨て、自分でアスランを倒すと宣言する。
 さきにツルギに「父親か、宇宙か、どちらかを選ばなきゃならないとしたらどちらを選ぶ?」と、覚悟を決めるよう諭されていたからこその、この台詞であろう。ツルギの言い方も少々ズルくて、混迷のなか視野が狭まっているラッキーに、誤った二択を選ばせるような言葉の使い方だ。
 ただ、あえてそのような言い方をしたツルギの気持ちもわかる。ツルギは今、隠し切れぬ体の不調を抱えている。動悸とともに左胸に手を当てているから、どうも心臓に難があるようだ。伝説の初代大統領として、そして司令と肩を並べる大人として、ツルギは己の役目と意思を引き継いでいく必要がある。そのためには、後継者の一人であろうラッキーに、自分の強みを彼自身の手で思い出させなければいけない。
 ラッキーの強みとはもちろん、「やりたいことを全部やる」、その揺るがぬ心で自ら強運を引き寄せられることである。やりたいことを諦めて一つの道しか選ばないなんて、ハミィの言う通り「ラッキーらしくない」のだ。
 ブリッジを飛び出したラッキーを追いかけて、強く諫めるのはスティンガーである。彼もまた、かつて敵側にいる家族のことで一人悩みを抱えていた。その時ラッキーにかけられた、「一人で抱え込むな」という言葉を、今度はスティンガーからラッキーにかけ返す。
 一人ではなく、仲間がいるから戦える。一人じゃないから、元の自分に戻ることができる。そして、両手に一杯欲張れる。
 ブリッジに戻ってきたラッキーは清々しい顔をしている。父親も、宇宙も、救いたいものは全部救い、やりたいことを全部やる覚悟を固めたからだ。これこそ、ツルギが彼に気づかせたかったことであった。満足げなツルギはメカマーダッコの誘いに乗り、ひとりドン・アルマゲのもとへと向かう。ラスボス直々の呼び出しだ。本拠地の頭上に宇宙を破壊できるほどのプラネジューム爆弾をぶら下げている理由についても、問いただすチャンスは今しかない。

 もはや惑星の解放ではなく都市攻略がミッションとなっているため、ロボによる市街地戦がメインである。ドン・アルマゲのもとには、新たなる三大幹部、アスラン・メカマーダッコ・アントン博士が傅いている。メカマーダッコは自らロボを操り、ツルギへのメッセンジャーの役目を務める。アントン博士が繰り出すのは新たな巨大ロボ、改造フクショーグンアキャチューガ。その名前からわかる通り、さきに敗れていった3人のフクショーグンを合体させた代物だ。3つの顔が並んだ見た目は阿修羅と言うにはユーモラスだが、底知れぬおぞましさもある。蛸足から再生されたクローンであるマーダッコ・それを機械と組み合わせたメカマーダッコとは異なり、フクショーグンたちはかつての人格を残したまま、ただただひとつに組み合わされているようだ。ショーグンに次ぐ地位であるはずのフクショーグンですら、敗北してしまえば生体実験の材料にされてしまう。究極の実力主義というか、ドン・アルマゲの誰にも抗えぬワンマンがなせる業である。
 そしてアスランはシシレッド抹殺の使命を帯び、ロボの間を縫うようにして単騎出陣。ラッキーの乗り込むキュータマを剣の一撃で破壊し、逃げるラッキーを追ってオリオン号の中にまで攻め入る。助けに駆け付けたツルギの機転と剛腕により、ブリッジの窓から外へ放り出されてしまったものの(割れた窓から空気が吸い出されかけ、すぐさま隔壁が下りるのが宇宙船らしくて大変良い)、シシレッドオリオンを防戦一方とし、ひとにらみでナーガとラプターを叩きのめしたその実力はやはり恐ろしい。思えば惑星サザンクロスにおいても、一対多で小太郎たちをぶちのめし、ガルを危険な状態にまで追い込んでいた。ドン・アルマゲが憑りついていることもあるが、もともとアスランの武力も高かったのだろう(そうでなければわざわざ依り代として選ぶまい)。さすがラッキーの血縁、彼にもオライオンの血が流れている。

 医務室で眠るガルに寄り添うシーザー。シーザーの小さな体は光を帯びている。その甲斐あってか、みながアキャチューガを倒し終わるころには、ガルも起き上がれる程度に回復を果たす。「シーザーのおかげ」と言っていたが、王族の「友達」にはなにか特殊な癒しの力があるのだろうか。自らの内に貯えていたキューエナジーを分けてくれたとか?
 ともあれラッキーたちの次なる目標は、惑星のコア内部への侵入だ。アキャンバーの置き土産・ブラックホールキュータマを活用し、宇宙を破壊するほどの爆発エネルギーを全て吸い取ってしまおうという作戦である。決着の時は近い。

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