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【ボウケンジャー】第7話~第11話

Task.7「火竜(サラマンダー)のウロコ」

 冒険小説をめぐる冒険の巻。チーフの幼少のみぎりよりの趣味「冒険小説を読む」が明らかに。だからチーフのモチベーションはプレシャス≦冒険みたいな雰囲気があるのか……。冒険ものの漫画やドラマ、伝記ではなく「冒険小説」というところがまたチーフらしい。『海底二万里』や『ガリバー旅行記』から徐々に現代作家へステップアップしていったのだろうか。いい少年時代だなあ。自分自身漫画みたいな秘密組織に身を置いて日々丁々発止の活躍をしながらも、冒険小説は冒険小説として楽しめるチーフの純粋さが何とも微笑ましい。
 今回のプレシャスはとある人物の手記である。ドラゴンに憧れ、そうなりたいと願う人間の独白なのだから、書いたのは当然人間のはずだ。あるいは手記という部分がすでにミスディレクションで、ドラゴンが人間を観察して記した創作という可能性もないでもないが、そのためにわざわざ持ちにくい人間用のつけペンを使いこなして人間の言葉を操り、文字をしたためたとあれば相当気合の入った自家出版である。リュウオーン様、そこまでやるか? やらんだろう? となると、リュウオーン様が黒歴史創作を抹消したかったというアイデアよりは、リュウオーン様が自らの過去を抹消したかったと考えた方がなんぼか自然である。

×支持 〇指示

 なんだかんだ1話からチーフの事大好きだからな、真墨は……。菜月とセットになっているせいで保護者っぽい大人ぶった態度をとることが多いが、実際には彼も菜月と(そしてチーフと)同じくらい純粋なのである。それゆえにエンディングのスポーツカーが背伸びしているようで毎回ちょっと可笑しい。

 さしものゴーゴービークルも無から有を生み出すことはできない模様(そんなことができたらそれ自体がすでにプレシャスである)。


Task.8「アトランティスの秘宝」

 コピー妖怪現る回。人工生命体だからこその恐るべき成長の速さで自らを作り替えていくヴリルだが、そんなに高速に細胞を酷使していると遠からず自己崩壊が訪れてしまうのではないかと心配になってしまうところ。
 居残り二人は平和に留守番しているはずが、蒼太のパソコンを菜月が覗いてしまったせいで険悪な雰囲気に。自分のプライベートを詳細にまとめられていい気持ちになる人間は少数派だろう。

 チーフにもさくらにもとても張り合えないが、蒼太になら! と判断してしまう真墨のチョロさよ。そこが君のいいところだ。
 チーフの休暇の過ごし方が大変理想的で良い。趣味と勉強を兼ねた読書、次の休暇までゆっくり読み進めるつもりなのだろう。ハードカバーやがっつりした書籍はオフにまとめ買いするとして、前回の文芸雑誌は仕事の合間を縫って買いに行ったのかと思うとにこにこしてしまう。よっぽど早く読みたかったのだなあ。わかるわかる。

 己の腕以外のところを使って変身するのを見るたび、その格好良さに震える。最初に思い付いた人は天才ではないか? 変身をルーチンの振り付けにするのではなく、今まさに出場していくための一動作に組み込んでしまうこのスピード感! 敵を捌きつつ変身ポーズをとるのも燃えるが、こちらはシュッと擦る瞬間的な動きであるがゆえにスタイリッシュさが増す。変身アイテムの特性を活かしたうえに格好良さも増しているのだから言うこと無しである。
 自分をコピーして増殖したヴリルを一切の躊躇いなく無双していくブルー。これくらいの精神力がないとスパイ稼業は務まらないのかもしれぬ。ただ、彼が躊躇わなかったのはそれが自分の姿であったからで、例えばヴリルがイエローに化けて増殖していたら、それが偽物だと理解していても彼ははね飛ばすのを躊躇しただろう。逆にレッドとピンクは割り切りがよさそうなイメージ。

 最初は一匹狼、菜月を拾ってからは二人組と、基本少数精鋭でやってきた割に、集団生活に不適合なわけでもなく、案外しっかり馴染んでいる真墨。身を守るために毛を逆立てる野良犬のごときである。馴れてしまえば犬は忠実な良き友となる。
 遊園地に行きたがっていた菜月だが、きっと一人で行っても味気ない。蒼太が一緒に行ってくれれば楽しさは倍増だろう。デートと言うより引率と言った感じだが、二人が楽しいならばそれで良し。


Task.9「折鶴の忍者」

 小さい子どもがトレジャーハンターの一団に加わっている理由として想像できる理由の一つが「両親がトレジャーハンターだったのでくっついて行った」だが、もしそうだとしたら大人を盾にした過去がさらに苦くなってしまいそうだ……。
 かつての真墨が闇だったとしても、人は光ある方へ歩いて行けるものだ。なぜなら人には足がある。考える頭と、前を向く両の目もある。そしてその目の見つめる先には、憧れの「不滅の牙」がいる。

 宝物を宝物たらしめるものは何か。それは思い入れである。世界中から広く思い入れを集め、皆の興味と関心を引いてやまないものなら、世界中が認める宝物となろう。対して、ただ一人でもそこに思い入れを持ち、興味と関心を寄せるのであれば、それは他の人にとってはただのガラクタだろうと、その一人にとっては紛れもなく宝物なのである。
 唐物屋の老婦人は立ち雛に深い思い入れを抱いている。昨日今日にその存在を知らされた明石たちや、ほかの様々なプレシャスと等価に扱おうとするサージェスとは、思い入れの強さが違う。その温度差が態度に現れる。老婦人の心を開くには、彼女と同じステージに立たねばならない。立ち雛を宝物たらしめている物語を聞き、共感することで、立ち雛の「宝物としての価値」は共有される。もちろん、これは老婦人にとっても悪い話ではない。信じる者が増えるほど、宝物は宝物としての深みを増していくのだから。


Task.10「消えたボウケンレッド」

 たしかに大邪竜、コクピットも埋め込まれているし、生身そのままの竜ではないとは思っていたが。ゴードム文明のようなオカルトらしさが少なめなのは、リュウオーンの出自にも関係があるのだろうか?

 抱き人形や着せ替え人形ならともかく、雛人形の衣装を変えようとはなかなか思わないものだ。そして雛人形はその特性上、年に一度しか人目に触れないし、それ以外は大切にしまわれている。虫食い対策も完璧であろう。雛人形の衣装の裏貼、ひと知れず保管したい書面を隠しておくにはまさにうってつけの場所である。

 裏切り合い騙し合いの前職に嫌気がさしてサージェスに入ったのなら、今回の件は蒼太を大きく失望させたことだろう。こそこそ作っていた身上書を菜月に見とがめられ、自らの悪癖を反省したちょうどのタイミングであることもマイナスに作用したか。

「そこに何かがあった」と思わせるような痕跡すら残してはいけない、ということかもしれない。人形を残して着物を焼けば、当然着物に何かがあるのだと誰もが気づくし、何とかして男雛の着物をひん剥いてみようと思う者も現れるだろう。幸いいま男雛は敵の手にわたっているが、いずれ取り返した後に秘密がバレては元も子もない。となると、やなり人形もろとも焼いてしまうのが一番後腐れがないようだ。
 女雛への思い入れが少ない人間の考え方としては、お手本のような回答である。宝物でないのだから、焼いてしまっても構わない。よくできた工芸品が一つ喪われるが、しかしリスクを消し尽くせることのリターンの方がずっと大きい、と。
 菜月は当然、着物の裏の地図の事なんて知らなかった。菜月が女雛を宝物だと思うのは、唐物屋からその物語を受け継いだからだ。価値のあるなしなど、ひとの主観でどうとでも変わる。サージェスがハザードレベルで測るプレシャスの価値だって、一面的なものでしかない。


Task.11「孤島の決戦」

 あるいは94番目の隠し部屋なのかもしれぬ。待機部屋以外にもいろんなところにリスクを分散させる手立てを持っていそう。

 皆が慌ただしく出撃に向けて動いている中、繕い物をする菜月だけがどうものんびりして見えるが、彼女にとって彼女の作業はいわばプレシャスの補修であり、男雛と合わせて完璧な状態へ戻すための大切なプロセスである。そこに行けばチーフが男雛を取り返していてくれると信じているから、菜月は女雛を精いっぱいメンテナンスする。そうしなければ、せっかく女雛を守ってくれたチーフに示しがつかないというものだ。

 さくら、完全に相手をダウンさせる気満々の「一発」である。いじらしい感情の発露とかではなく、まあなんというか、思いの強さは拳の強さ。
 チーフの台詞、半分は照れ隠しかもしれないが半分は確実に本気という感じがする。冒険こそがチーフにとってはプレシャスなのだから、目の前にぶら下がっていればひとり追跡せざるを得ないのである。お騒がせではあったものの、終わり良ければすべて良し。画帳の写本も手に入り、男雛も取り戻せた。一つも余さず「宝物」を手に入れる軽やかな手技はまさに「不滅の牙」だ。真墨が憧れるのもわかる格好良さ。

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