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集団安全保障の正当性

つい昨年まで、「国家間の戦争はもう起きない」とぼんやり信じられ、特に欧州では軍事費は無駄扱いされ徐々に軍縮し、「戦争のない世界に軍隊はいらない」という状態に近づきつつあった。

しかし今年、世界は平和から大きく後退し、世界はプーチンのような大馬鹿者の出現を前提にしなければならなくなった。ブチャやイジュームの虐殺、占領地域で広範に見られる「濾過」と呼ばれる思想統制と拷問・誘拐などの人権侵害が見られ(これはロシア国内の思想統制ですら似たようなことが行われている)る。さらに、分離派勢力や占領地域で強制動員、徴兵すら行っており、侵略者に降伏することは侵略者の手先となり人権侵害に加担する事態にさえなっている。これらは「早期降伏すれば死ぬことはない」といった無抵抗主義の説得力を大いに失わせている。

この結果、ドイツさえ政策を大転換し、軍拡を行うことになってしまう状況となっており、単なる軍縮の次善の策として集団安全保障を推進するのが世界の「政治的に正しい」態度となっている。

集団安全保障は防衛力を維持しつつも「侵略できない軍隊」にし軍縮する効果的な方法である

各国が単独防衛をする場合、防衛目的を果たすには全ての国が隣国より強くなりたいと考え、このため軍拡競争が起きる可能性がある。軍拡競争を防ぐには、世界の多くの国が「戦争を仕掛ける馬鹿が出たら残りの国が協力して全力で叩く」いう同盟を組めば、同盟が半々に割れるような事態にならない限り防衛側が侵略側より確実に多くの戦力を得ることが出来、防衛のための軍拡競争が起きなくなるうえ、どの国も侵略戦争を可能とする武力を蓄積できないので、「侵略戦争ができないが防衛はできる軍隊」を持つことになる。この考えは集団安全保障と呼ばれる。

集団安全保障における各国の利害関係

集団安全保障は単独防衛に比べ定性的にはより良いと言えるので、国連も国連軍やPKOとして実際にこれを実施している。任意同盟であるNATOや日米同盟、およびその枠内で行われる集団的自衛権の発動も、広域である場合こういった集団安全保障のミニ版と言えるだろう(少なくとも単独防衛に対して費用対効果が大きいのは明らかである)。

今回の戦争では直接的な集団防衛にはなっていないものの、ウクライナはロシアに簡単に蹂躙されると思われていたところ自力で1か月ほど耐えた後、周辺国からの援助で持ちこたえ、9月には局地的に明白な勝利を得るまで盛り返している。武器援助や経済支援だけでこれほど有効であるのだから、派兵もある集団安全保障になればなおさら効果は高い。

今まで集団的自衛権に反対してきた方へ

いままで集団的自衛権に反対してきた方の中には、純粋に戦争反対のために声を上げてきた方も多いだろう。しかし残念なことに、集団的自衛権反対運動の中心人物にはかなり多くの「反米の為なら人が死んでも構わない」「米国の対抗勢力であるロシア(やそれに類する国)の侵略行為は正当化される」というような思考の持ち主が混じっていたことは事実である(これらの人々は原油価格高騰による底上げがなくなって混乱に陥ったベネズエラを相変わらず絶賛しているなど、明らかにファクトより党派性を優先する傾向が見られる)。

戦争に反対する人は、そういった「頭Z」「プーチン脳」の人々と決別するために、プーチンのような狂った独裁者から人々の人権を守るための"次善の策"として、侵略できない軍を持ち軍縮を一定範囲で可能にする集団安全保障、集団的自衛権という考え方に理解を示してほしいと願う次第である。


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