パンドラの箱は最後に希望が入っているらしい
箱の中には神がいるらしい。ただその姿を見たものはいない。
半日に及ぶ太陽の登山も8合目という時の頃である、村の1人の青年が必死の形相で村中を走り回り、何度も叫んだ。
「神がいない!」
みなはあらゆる作業の手を止めて 、血なまこになって神を探した。女たちは家の箱という箱を開け、入ってるものをすべてだし、何も入っていないようにみえるその空間を舐め回すよう何度もみた。男たちは一軒一軒の屋根に登りそこにいないことを確認すると、地面を必死に掘って探した。
だけれど神はみつからない。どこに行ってしまったのだろう、我々は見捨てられてしまったのだろうか…。気づけば、太陽は下山をも終えていて、漆黒の雪がしんしんと静かに確実に空を覆い始めていた。
いたぞー!
いたぞー!いたぞー!
あの最初に叫び回っていた彼だった。
見つけた神は丁重に箱の中に戻したとのことだった。箱を皆で確認すると、今までよりもきつく何本もの紐によって、その箱は閉じられていた。
これで神ももういなくなりはしまい。
夜は時間切れの合図から就寝への合図と変わり、みなは疲れ果てたその身体を地面に預けたのだった。
※※※
多分だけれど、この村から神はまたいなくなる。それが近いうちなのか、遠いいつかなのかはわからない。
村にはきっと神が『いなくなる』ことが必要なんだ。『いなくなる』ということは前提には『いる』があるから。
神が『いなくならない』と人は箱を疑い出す。本当にこの中にいるのか?だって誰も中を見たことないんだろ?
いないならばこの地は神に見放された地だ。さすれば、村人は皆いなくなってしまうにちがいない。村の運営に神は必要なんだ。
人にとっての神って何て大きな存在だろう。見えないからこその力であり、見えないからこその疑い。世の中にどれだけのこの葛藤が溢れているだろう。
僕にとっての箱は何だろうか。開けてみたくもあり、開けるのが怖い。
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