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第二回宮尾節子賞と受賞のことば

ごあいさつ

みなさま、こんにちは。宮尾節子です。

2020年より、「宮尾節子賞」を創設することに決定しました。宮尾が今年はこの人と思った3名(*最初と最後のみ4名)を、毎年12月24日に発表します。賞金はなし。受賞者には賞状・盾・直筆詩、そして各自にことばを贈らせて頂きます。賞の基準は普通に生きててカッコいい表現者です。ささやかな賞ですが、わたしが生きている限り継続します。権威はないけど愛がある、宮尾節子賞。何卒、よろしくお願い致します。

一昨年、このように始めた宮尾節子賞ですが、おかげさまで第二回も素晴らしい3名の方に、受け取って頂くことができました。そして、ささやかな賞ではありますが、たいへん喜んでいただけることが何より幸せに思います。

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「表現」について、考えるときいつも思い出す、ある方のことばがあります。何度かいろんな場所でお話をさせて頂いたことなので、聞き覚えがある方もいらっしゃるでしょうがご容赦ください。それは、ひとりの即興詩人の方のことばでした。

その方は、舞台で客席に向かって「お題をください」と言って幾つか会場のお客さんにことばをあげてもらい、その場で一篇の詩を構築しながらポエトリーリーディングをするのです。わたしには初めての経験でしたので、とても驚きました。そして、その方にあとで。「見知らぬひとから、どんなことばが投げ出されるか、わからないのに。怖くはないですか?」と尋ねてみました。

すると思わぬ、ことばがその詩人の口から発せられたのです。

「守られているから、怖くないです」と。「守られているから」とは、何だろう。
その方は続けました。「現実だと、わたしはこんなことはできません。とても、こわくて。でも、舞台の上だからできるのです。舞台という空間は何をやってもいいと、守られた場所なのです。」――晒された場所ではなく、守られた場所。

わたしは、目から鱗が落ちました。そして、彼女(その方)のことばで、「表現とは何か」を、一瞬で知ることができました。表現とはすなわち「守られた場所」のことでした。現実がどのように、厳しく過酷なものであろうと、ひとは表現というささやかな「舞台」(非現実)に生きる、あるいは、息継ぎをすることができる。

さまざまな場所で、その人なりの「生(せい)の花」ともいうべき、舞台がくりひろげられている。それは小さな工夫かもしれない。それはひとつのリボンかもしれない。それはひとつの色のかもしれない。それはひとことの挨拶かもしれない。誰かが、守られ。誰かを、守る。ひとには表現があることを、ひとの宝に思います。

新型コロナウイルスという感染症の蔓延により、ひとびとは以前のような日常生活が送れなくなって、三年になろうとしています。ウイルスは新しい変異を見せながら、何度も感染の波を繰り返し、まだまだ終息の気配は見えません。

そんなときにも、さまざまな表現者たちによって「わたしを守り、あなたを守る」「守られた場所」が作られ続けていること、その想像と創造に、希望を託します。

第二回宮尾節子賞。3名の方の受賞のことばを、ここに掲載させて頂きます。
ご高覧くださいませ。

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浅葉爽香

受賞のことば

作品でお返しします。

浅葉爽香

<浅葉爽香プロフィール>
         詩を纏うキメラ


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雨音

受賞のことば

「あなたを、本年の宮尾節子賞のひとりに選ばせて頂きたいのですが、受け取って頂けますでしょうか。私個人の権威もない、賞金もない、賞状と盾ぐらいしかお渡しできないささやかな賞ですが。愛情いっぱいこめて、選ばせてもらう3人です。」

そんなメッセージを宮尾さんが届いた時、この胸の真ん中にぽっと喜びのあかりが灯るようでした。

思えば40年近く、見よう見まねで詩を書き続けてまいりました。大きな波も小さな波も人並みにあった毎日の中に、ことばは当たり前のようにちょこんと心の隅に座って、私を助けてくれました。

宮尾さんとのご縁が始まったのは20年近く前かと思いますが、当時、大きな心の傷を抱えながら、表面上は朗らかに生きていた私の痛みに気づいて「大丈夫?」と言ってくださった数少ない方の一人でした。頑なに守ってきた秘密を打ち明けた私の心に寄り添い、温かい言葉を送ってくれた宮尾さんは、私よりもずっと遠くを見ていらしたのでしょう。当時のメールはもう残っていませんが、こんな内容のことが書かれていました。

「しずくちゃん、あなたが我慢して苦しい想いを堪えながら、明るく生きていくことはとても素晴らしいことですが、子どもの心は見えない母親の心を知らない間に吸い取って、あなたの代わりに体に変調をきたす場合があるようです。だから無理しないで、我慢しないで、辛かったら逃げていい。あなたがまず幸せにならないと」

このことばは、以降ずっと私の胸にありました。人生って不思議です。この言葉を胸にして生きてきた歳月、宮尾さんとはご無沙汰した時期が長かったのに、この言葉がなければ変わっていたかもしれない日々、そして、残してきたことばもずっと違うものだったかもしれない。だってことばは私の心だから。

そうして、長い時間をかけて生きてきた証のような詩篇たちを、長く一緒に歩んできたネット詩誌MYDEARの島さんのご尽力で、一冊の詩集として、紙の上に乗せて纏めることができました。一冊の詩集を作る、思い描いたこともないような出来事でした。あの時のお礼と、私は元気ですという気持ちで宮尾さんにもお届けしましたが、さらに宮尾節子賞という大きな花束をいただいて、本当に光栄で、あたたかく、うれしく、やさしく、しあわせでした。

今、おかげさまで、私は幸せに生きています。私の大切な大切なたったひとりの娘も、不器用ながら一生懸命に夢に向かって歩いています。そしてきっと、これから、もっともっと幸せになっていきます。

この度は、宮尾節子賞、本当にありがとうございました。自分のことのように喜んでくれた島さん、お祝いの言葉を寄せてくれたたくさんの仲間たち、本当にありがとうございます。これからもずっと書いていきます!
                                  
                                  雨音

雨音

<雨音プロフィール>

詩人・静岡県出身在住ときどきイギリス在住
日本詩人クラブ会員、静岡県詩人会会員、
ネット詩誌MYDEAR所属 詩誌Marubatsu参加
中学生の頃よりいつの間にか詩を書くようになる。20歳くらいから、綺麗なノートを見つけて、詩を書き綴るようになった。2003年よりネット詩誌MYDEARに所属。毎月新作の発表を続け、また2007年よりMYDEAR掲示板にて評者をつとめている。MYDEAR主宰島秀生氏編・著「ネットの中の詩人たち4」「ネットの中の詩人たち5」「ネットの中の詩人たち6」「ネットの中の詩人たち7」(アマゾンにて販売中)に参加。2020年詩集「ドロップス」(純和屋)
誰かの心の片隅にそっと飾る一輪の花のような詩をかけたらと、書き続けています。

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猫道(猫道一家)

受賞のことば

誰かが誰かに「よかったよ」と言うことの威力はハンパなく、時には誰かの友達の友達にも波及します。友達の「よかったよ」ほど信用できるものはないからです。我々は日々知らず知らずのうちに個人賞を贈り合って生きているのかもしれません。でも、毎年人数を絞って個人賞を発表し、盾や賞状や自作詩を用意する人はまずいません。宮尾節子という人を除いては。それは空也上人が口から吐き出す南無阿弥陀仏の一語一語が仏の姿に変わるようなミラクル。「形にする」ってすごい。

宮尾さんがこの賞を創設した際の文章に書かれた一節「権威はないけど愛がある」が印象に残っています。通常、盾や賞状は組織の看板(権威)を発信元としています。また、ノーベルも岸田國士も芥川龍之介も中原中也も個人ですが故人です。「存命の本人」が愛を「形にする」。しかも世界に2つとないもので。そんなケースはこの荒涼とした浮世では結婚指輪か手編みのセーターくらいではないでしょうか。愛、確かに受け取りました。

受賞の報を聞いた時、自分は選考理由を尋ねました。というのも、近年は生活に追われて満足に活動できず、受賞は意外だったからです。自分は言葉のライブパフォーマンスとイベント主催・イベント司会をやっているのですが、今年はツイキャス配信を除けば出演ライブは10本、主催イベントは3本、司会した催しは3本で、過去最少でした。思うように活動できないことは少しずつ自信を奪っていきます。「このまま終わってしまうのかもしれない」と思うこともありました。そんな自分を宮尾さんが表彰してくれた理由は「シーンや人をつないできた現在までの功績を讃えたい」ということでした。泣けました。

実際に自分がそういったことができているのかは当人なのでわかりません。しかし、「人をつなぐ」または「紹介する」という意識で活動してきたことは確かです。すっかり落ち込んでいた自分が、今度は宮尾さんにつないでもらって生き延びた感があります。新聞・雑誌・TVはおろかwebメディアにも取り上げられたことがない本当の(残念な)意味で「知る人ぞ知る」存在である自分がこうして個人賞で光を当ててもらえること、大変ありがたく思います。光栄です。宮尾さん、ありがとう。これからも精進します。そして、こうして光を当ててもらえたように、自身も誰かを照らせるような人間になっていきたいです。

猫道(猫道一家)

猫道(猫道一家)

<猫道(猫道一家)プロフィール>

1980年生まれ。東京都調布市出身。18歳から演劇を始め、20歳で路上やライブハウスなど劇場以外での公演を行うユニット「猫道一家」を旗揚げ。脚本・演出を担当し、浅草花やしきや歌舞伎町アシベ会館の廃墟フロアなどでの公演活動を行う。

28歳よりソロパフォーマーに転身し、一人芝居・ラップ・ポエトリーの要素を合わせた新しい話芸「猫道節(ねこみちぶし)」のライブ活動を始める。現在は明治大正時代の演説歌をカバーするイベント「演歌の猫道」、野外で朗読を配信する企画「夜空★猫道節」主催。

ライブ活動やイベントオーガナイズと並行して、2015年から2019年まで朗読競技の日本選手権大会「Poetry Slam Japan」で司会を担当。2021年から新たな大会「KOTOBA Slam Japan」でも司会を担当している。

SHINJUKU SPOKEN WORDS SLAM チャンピオントーナメント優勝
YOKOHAMA SPOKEN WORDS SLAM チャンピオントーナメント優勝
NHKラジオ第1放送「渋マガZ」番組内スラム「コトバKING」優勝
即興演劇バトル THE SAN-DAI 東京大会優勝

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授賞理由はこちらから。

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みなさんから受賞のことばをいただいて、わたしが幸せになっています。
これが、生きてお届けする宮尾節子賞の醍醐味かもしれません(笑)。

愛されなければ、愛すればいいじゃない。なければ、つくればいいじゃない。
そんな思いでつくった、ささやかな賞ですが。みなさんのおかげで、みなさんと
ともに育っていけそうです。表現は届いて、はじめて輝きます。

受け取って頂いて、ありがとうございました。
支えてくださって、ありがとうございます。

感謝をこめて
宮尾節子

宮尾節子賞、さらにワイルドな展開をご期待ください。

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*渋谷のポエトリーラジオ

第二回宮尾節子賞のことを 胎動レーベル生駒さんがパーソナリティーを担当する
「渋谷のポエトリーラジオ」#渋谷のポエラジでもとりあげてくださいました。
12月22日と29日に宮尾が出演。29日のアーカイブはこちらです。
いこまさん、ありがとうございました!

前回の受賞者のこと


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