「単一」ではなく「複数」 〜マルチスポーツのすすめ〜

second placeの藤野です。
お読みいただきありがとうございます。

現在、日本のスポーツ界には多くの問題があり、ニュースでも目にすることが多々あるかと思います。その中でも私が非常に危惧している1つが

「早期専門化」です。

問題点として以下が挙げられます。

1. SKILLS(運動能力)の偏り

2. BURNOUT(燃え尽き症候群)の可能性を高める

3. INJURY(ケガ)のリスクが高い

幼い頃から1つの競技だけに専念すると、どうしても同じ動きを繰り返すことになり、より複雑な動きが要求される段階になると伸び悩む子が増えてしまう傾向があります。また、同じ環境で同じ動作が繰り返し何度も続くと心身共に過負荷を与えることにつながり、心が大きく消耗したり、身体に慢性的な痛みを感じるようになるリスクがあります。

日本では「通年で同じスポーツをやる」のが一般的ですが、海外では春から夏にかけては野球、秋はサッカー、冬は屋内のバスケットボールやスケートなど季節ごとに経験出来る種目が変わります。子どもたちは1年間で3種類ほどのスポーツを約 4ヵ月間プレーする仕組み(シーズン制)があります。「スポーツ実施に関するガイドライン」や「スポーツ競技経験の価値に関する研究」も存在し、スポーツ経験にマルチスポーツ(複数競技)という選択肢があります。

ここで唐突ですが、「1万時間の法則(エリクソンの法則)」というのをご存知でしょうか?

Andres Ericsson(1993)が「何事も超一流になるには1万時間を要する」という論文を世に出して以降、日本スポーツ界では1日3時間のトレーニングを約10年間、計1万時間やる「熟達のルール」と呼ばれ、部活の指導者たちの間でも浸透していったとされています。

しかし、近年では、世界で活躍する選手の特徴として、幼少期に他のスポーツに取り組む時間が長いと言われています。Joseph  Baker & Jean Cote(2003)はオーストラリア代表選手の中で、ネットボール、バスケットボール、陸上ホッケー選手を対象に調査した結果「代表レベルに達するまでに平均13年間をかけて4000時間の練習をしていた」また「平均12歳頃からの単一種目に絞り始めた」と報告しています。

さらに『事典発育・成熟・運動』(大修館書店)の著者ロバート・M・マリーナは、世界トップクラスが集う米NCAA(全米大学体育協会) 部所属のアスリートで幼少期から大学まで単一種目だけをプレーした経験者は17%しかいないと指摘しています。

つまり、

1つの競技に専念する練習時間と、スキル向上は比例しない

と言えます。

実は誰もが知る日本人アスリートたちもマルチスポーツを経験しています。

八村塁(バスケ)     →野球
大谷翔平(野球)     →バドミントン、水泳
錦織圭(テニス)     →サッカー
高梨沙羅(スキージャンプ)→バレエダンス
高木美帆(スケート)   →サッカー
渋野日向子(ゴルフ)  →ソフトボール、軟式野球
※その他多数

もちろん競技によっては幼児期から1つの競技に専念して成功を収めているアスリートがいることも事実ですし、そこに至るまでの努力や功績を否定するつもりは全くありませんが、長い人生で捉えた時に子どもたちが抱えるリスクとしては大きすぎるというのが私が危惧している主な点です。

マルチスポーツ経験のメリットは前述のリスクや懸念を回避できる点ですが、その意味を誤解してはいけません。

「将来、よりよいアスリートになるためには複数のスポーツを経験させるべきだ」というマルチスポーツ理論は、前述したシーズン制が前提となっており、いくつものスポーツ競技を子どもたちに同時並行させるものではありません。マルチスポーツの意味を誤解して複数のスポーツを同時に高負荷で行うと、土日に長時間練習や複数の試合をやらせてしまいかねません。また、それぞれ違うチームに属し、価値観が違う指導者たちの指示に従って練習するのは子どもたちにとって大きな負担となります。そのまま続けると怪我などのリスクや体力・精神的負担は倍増してしまう懸念も生まれます。これでは本末転倒です。

では、どんな形が理想的か。

あくまで私見ですが、日本で出来うる現実的なマルチスポーツ経験は、1つの習い事(スクール)の中で出来るだけ多くのスポーツ種目の要素を取り入れたトレーニングを行うことです。

サッカースクールにしてもバスケットボールクラブにしても、サッカーやバスケの練習だけを行うのではなく、様々なスポーツも練習の一環で取り入れるべきと考えます。中学生以降の部活動でも同様に、日頃打ち込んでいるスポーツ以外も通常の部活動時間内(ここも重要。練習時間が伸びては別の問題が発生します)でトレーニングの一環として経験すること。他部活との交流で互いの競技を経験することも非常に有効であると考えます。よくアスリートたちがオフシーズンに異種競技の選手同士でトレーニングしていたりしますが、これもとても理にかなっていると思います。

私の運営する英語で教える運動塾「spoglish GYM(スポグリッシュ ジム)」で1つの競技に特化した技術指導ではなく、サッカー、バスケ、バレーボール、ラグビー、野球、テニスなど可能な限り多くのスポーツの動きの要素を取り入れた運動あそびやトレーニングを実施しているのもこういった理由からです。ご興味ある方は是非。(手前味噌で恐縮です・・・)

最後に。誤解していただきたくないのは、私がマルチスポーツを推奨するのは、決して全ての子どもたちに一流アスリートを目指して欲しいと考えているためではありません。マルチスポーツ経験にはスポーツ以外にも通ずる重要なヒントが含まれていると考えているのです。

親や指導者に言われたことだけをただただ黙って聞くのではなく、

「色んな考え方を持って良いんだ」

「たくさん違うことを経験して良いんだ」

「途中で選択(考え方)を変えてもいいんだ」

こういった柔軟な思考と選択肢を持つためにもマルチスポーツ経験は非常に有効であると主張したいです。

年齢問わず、早々に1つのことだけに絞るという考え方は「思考の偏り」「燃え尽き症候群」「心の怪我(挫折)」を招きかねないので、常に様々な選択肢を持ち、自分にマッチする選択(判断)を積み重ねていくこそが、これからの時代を生き抜くのに重要であると私は考えており、この考えに共感してくださる方々に向けて引き続き様々な支援をさせていただく所存です。

second place 藤野

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