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「ラピュタ」を知らないんですが友ヶ島を楽しめますか?


和歌山県と淡路島の中間地点に浮かぶ小さな島、友ヶ島。友ヶ島といえば、近代日本が建造した砲台跡が廃墟として遺り、それがまるでジブリ映画の「天空の城ラピュタ」の雰囲気を醸し出している…ということで知られる島なのである。
「なのである」とドヤって語り始めたものの、残念ながら、私は「天空の城ラピュタ」を見ていないので、知ったかぶりもいいところだ。宮崎駿先生にも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「天空の城ラピュタ」を知らない私であるが、はたして友ヶ島を楽しむことができるのだろうか?そんな割とどうでもいい命題を胸に秘めながら、私は友ヶ島へと渡ったのだった。

本サイトの元記事には、ここに載せきれなかった写真もたくさん載せていますので、ぜひご覧ください!

砲台跡のある要塞の島へ

友ヶ島へ公共交通機関で行くのであれば、和歌山市駅から南海線で終点の加太まで25分くらい。駅から友ヶ島への渡船乗り場までは、歩いて約15分。

和歌山市駅と加太駅をつなぐ南海電鉄加太線。

渡船は、繁忙シーズン以外は、1日4往復の便が出ている。
島内の主要な見どころだけ見学するのであれば、11時加太港発の船に乗り、島を13時30分発の船で戻ってくるというのでも大丈夫だろう。長居するには、ちょっと時間を持て余してしまうかもしれない。

友ヶ島汽船の加太港発着場。

私が訪れたのは、観光シーズンでもない時期の平日だったので、混雑はしていなかった。
ハイシーズンにどのくらいの観光客がやって来るのか分からないが、渡船はそれほど大きくないので、乗り切れるのかどうかは不明だ。

こちらは友ヶ島の船着き場である野奈浦桟橋。

船を下りて、左手に行くと第3砲台と弾薬庫跡のある坂道へ。砲台は島内の高台にあるので、一気に坂道を登る感じだ。けっこう疲れる。先に第2砲台を見るのであれば、右手の海岸沿いを行く。

船を下りて、左手に行くと第3砲台への坂道。

そんなわけで、けっこう急な坂道を登らされるので、蒸し暑い真夏のシーズンは避けるのが吉。汗がダラダラと止まらなくなり、心が折れることは必至だ。島内の展望台からの眺めも良いので、空気が澄んでいて、かつ、観光シーズンを外した冬の季節の訪問も良いかもしれない。

いきなり最大の見どころ、第3砲台跡へ。

息を切らしながら、せっせと山を登りきった先には、島内で最大の見どころである弾薬支庫跡と第3砲台跡が出現する。人気の撮影スポットだ。
そして、友ヶ島を紹介する写真といえば、おおよそが下のような立ち位置から広角で狙った1枚となる。10人中9人が、これと大差のない写真を撮るに違いない。もしかしたら、10人中10人といっても過言ではないかもしれない。よほど「自分は撮らない」という強い意志でもない限りは、うっかりこのアングルで撮ってしまうに違いない。それくらい人を惹きつける景観であるということは間違いない。

人気の映え写真スポット、弾薬支庫跡。

そして、弾薬支庫の先にある第3砲台跡へ。
砲台と砲台は地下通路でつながっており、探検気分を駆り立ててくれる。

砲台と砲台の間は、このような地下通路でつながっている。

友ヶ島を紹介する記事の中には「地下通路は真っ暗闇なので懐中電灯の用意を」という記載を見かけることもあるが、私が訪れた際は、間隔を空けて足元に灯りが置かれてあったので、目が暗さに慣れてしまえば、懐中電灯の助けは必要なく歩き回ることができた。とはいえ、今はスマートフォンで懐中電灯の代わりもできてしまうから、仮に真っ暗闇でも問題はないだろう。

第3砲台跡。

地味な第5砲台跡へ

第3砲台跡を見終えた跡は、タカノス山展望台へ。訪れたこの日は晴れて空気も澄んでいたので、海を見下ろす眺めが気持ち良かった。
地図で見ると、友ヶ島は和歌山湾から大阪湾へ至る入り口にちょうど位置していて、海上航路としての要衝であることが分かる。

タカノス山展望台。

そして、第5砲台跡。「地味な」とか言ってしまったが、第2や第3に比べたら「地味」で「映え」に乏しいだけであって、ある程度の整備がされた第3砲台とは違った、手付かずの「廃墟然」たる雰囲気を醸し出している。

第5砲台跡。

海を臨む第2砲台跡は爆破処理の名残り

第5砲台跡からさらに海岸沿いの第2砲台跡へと向かう。
海岸沿いに出ると、空き家となって長い時間が経ったと思しき旅館やシャワー室に遭遇する。かつてはこの島が海水浴客で賑わった時代もあったのだろう。

旅館の跡もそのまま残る。かつては海水浴客で賑わったのだろう。

そして、海に突き出す感じで遺されたのが第2砲台。
ここは太平洋戦争後に爆破処理されたので、崩れ落ちかけた廃墟となっている。柵で仕切られているので、近づくことはできないが、海を背景とした廃墟として「映え」な撮影スポットにもなっている。海上側からも見てみたいものだ。

第2砲台跡。

近代日本の軍事的な名残りを感じさせてくれる友ヶ島。やや駆け足気味で紹介したが、今回のルートであれば、2時間もあれば見学可能。ちょっと時間に余裕があれば、島の西端の友ヶ島灯台に足をのばしてもいいし、さらに本格的に島内をぐるっとトレッキングで回るなら、東側のエリアに行ってもいいだろう。

そして、最初の命題に戻るわけであるが、はたして「天空の城ラピュタ」を知らない私は、友ヶ島を楽しむことができるのだろうか。
「ラピュタ」を知らなくても、もちろん友ヶ島は楽しめるわけで、島の大きな魅力は、日本が近代化を進める中で建造した要塞が良い状態で遺され、歴史的遺産としての価値は然ることながら、その景観が今の時代にマッチして、フォトジェニックな「映え」を提供していることである。

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