ゲノム編集用

『ゲノム編集』生物の設計図を書き換えられる時代の到来

今回はのセクションCのブログでは、神の領域に迫る技術として大注目の『ゲノム編集』技術が私たちの生活やビジネスをどのように変える可能性があるのか?という観点で綴っていきたいと考えています。

様々な可能性を持つゲノム

生物の設計図である遺伝子。この遺伝子を書き換えられるとしたら、あなたは何をするでしょう?

昔読んだ小説に出てきたような、優れた遺伝子をもつ人間だけだけが住む世界、どんな難病も治療できる高い技術、必要な栄養素のみが含まれた夢のような食物・・・。倫理的な問題はさておき、もしかしたらこのようなSFのような世界が、現実のものになる日が本当にやってくるかもしれません。そして、それを実現する可能性があるのが『ゲノム編集』技術です。

私たち人間は、生物の設計図が遺伝子であることが解明される前から、遺伝子を組み替えて新しい生物を生み出そうという取り組みを続けてきました。「遺伝子組み換え」と呼ばれている技術です。

この技術は、例えば異種のトマトを交配させて育った次世代のトマトの中から、美味しいもの・栄養価の高いものだけを残すという気の遠くなる作業により成り立っています。しかし、美味しくて栄養価の高いトマトは狙って作り出せるものではありません。

最近話題の『ゲノム編集』技術が画期的なのは、「遺伝子組み換え」技術と比較し、狙った遺伝子を改変できる効率(確率)が飛躍的に高まった点です。

CRISPR/Cas9の登場によりビジネスの道が拓ける


生物の遺伝情報は4種類の塩基の並び順に格納されています。4つの塩基、高校の生物で習った方も多いのでは?私は当時アデニン、チミン、グアニン、シトシンと呪文みたいに覚えた覚えがあります。『ゲノム編集』技術は人工的に作った物質を細胞に入れてこの並び順を書き換えることで、遺伝情報を改変します。『ゲノム編集』という技術自体は2005年に頃から研究されていますが、2012年に発明された「CRISPR/Cas9」により、従来難しかったこの技術を誰でも取り扱えるものになりました。これにより、『ゲノム編集』技術は難病への適用や、商業利用の道が一挙に開けました。一方で、書き換えミスがある・倫理的な問題がクリアされていない等、まだまだ改善点が残されているのも事実です。しかし現在、多くの大学・企業がこの技術を応用してビジネスにつなげよう競い合っています。

例えば、『ゲノム編集』技術の生みの親である、米カリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ教授、スウェーデンのウメオ大学のエマニュエル・シャルパンティエ教授、そして米マサチューセッツ工科大学ブロード研究所のファン・ツァン教授は、それぞれ『ゲノム編集』技術関連のベンチャー企業を立ち上げています。まだ臨床試験も始まっていない状態の治療法の開発等を行う研究開発型の企業ですが、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が個人出資しているベンチャーキャピタルから、100億円規模の出資を受けているということで話題となっています(引用元:https://newswitch.jp/p/1726)。

日本においても、『ゲノム編集』技術による変異動物作成サービスを提供するベンチャー企業などが出てきています。まだまだ課題も多く研究開発途上の技術ではありますが、もし実用化されたら現在のビジネスにどのような影響を与えるか、そしてどのようなところに新規のビジネスチャンスがあるか、そろそろ考える時期なのかもしれません。

ゲノム編集の医療への活用


『ゲノム編集』の再有望応用分野は、なんといっても病気の治療ではないでしょうか。難病治療や遺伝子治療、創薬への応用が期待されています(引用元:https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/091400014/120500009/)。ゲノム編集でこれまで治らなかった病気が治るようになるのを期待しています。

難病治療にゲノム編集を応用するイメージが分かりやすく紹介されているのが、毎日新聞 科学の森のこちらの記事です(引用元:https://mainichi.jp/articles/20170921/ddm/016/040/002000c)。京都大学の堀田先生のご研究内容や、ゲノム編集を使った難病治療をわかりやすくまとめられているので、興味があったらぜひ読んでみて下さい。その他、農作物、食品、家畜・水産物の育種などへの応用などもかなりさかんに研究されているようです。

この夢のような『ゲノム編集』技術は、世界的には大きく研究が伸びていますが、日本の存在感はあまりありません。JSTの記事によると、2014年時点で、世界中でよく引用される論文の中に、日本に所属する研究者のCRISPR/Cas9に関する論文の割合はそれほど高くありません。論文の本数も米国のみならず、中国、ドイツ、フランス、オランダなどに抜かれています。特許についても、特許出願数上位に日本の企業はほとんど名前を連ねていません。神の領域に迫ると言われている『ゲノム編集』は、倫理問題の解決や必要な規制の整備が必要ですが、このような最新の技術をしっかりとフォローしていくことが、日本の産業の強化につながるのではないかと感じます。


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