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人事にキャリアチェンジしやすい他職種について考える(小売の店長職の場合)

今回は、異職種から人事へのキャリアチェンジを希望する人に読んでほしい内容である。

僕自身のキャリア変遷について、人事をやる前は小売の店長職や販売の仕事しかやっていなかったという話をすると、たいてい意外そうな顔をされる。「店長の仕事と人事ってどんな関連性があるんですか?」とか「実際どうやって人事になれたんですか?」という感じだ。個人的な感覚では、小売の店長が行う業務内容は人事担当のそれと関連性が高いというか、基本的にほぼ同じだと思っているのだけど、周りはそう思ってはいないということなのだろう。

ということで、どのあたりに関連性があるのか挙げてみたいと思う。小売で店長をやっている人も含めて、人事へのキャリアチェンジを考えている人にとって参考になれば幸いである。

以下の文章の見出しは、「店長をやっていると必ず経験することになる人事業務」だと思っていただきたい。店長職と人事のどのあたりに関連性があるのかわかりやすくなるだろう。

採用活動をやっている

当たり前だけど、店舗を営業するためには人員が必要だ。店舗全体の運営管理を行うような正社員メンバーであれば会社の人事部門が採用を行うケースがほとんどだが、アルバイトやパートタイムのメンバーは店舗ごとに独自で求人を出して採用活動を行うことも多い。僕の場合も然りで、求人の内容は自分たちで考えて自社のホームページや外部の求人媒体に掲載していたし、面接もやっていた。採否も(会社としての基準はあるけど)、店舗で決めていた。

小売に限らず、アルバイトの採用活動ならやったことがあるという人は結構な割合でいるのではないかと思う。充分活かせる経験なのだ。

育成や研修をやっている

自店で新たに採用したメンバーには仕事のやり方を覚えてもらう必要がある。僕が経験したものはいずれも複雑なオペレーションを要求される業態だったので、アルバイトのメンバーであってもレジ打ちやら商品知識やら接客のしかたなど、覚えてもらうことが多くてとても苦労した。ただ、僕が実際にやっていたことはそういった直接的な指導というよりは、メンバー全体を育成するための仕組みや具体的な施策を考える、という方が中心だった。

例えば、来店客数や客単価を改善するためには何をしたらいいか、利用顧客からの満足度を上げるにはどうしたらいいか、といった具合だ。店舗には売上予算が設定されているので、基本的にはその達成のために育成や研修が行われる。職場で実践する研修はやる目的が明確でないと効果が薄い、ということもここで学んだ気がする。ただ、アルバイトしてくれるメンバーには学生の方も多くいたので、当時はアルバイトを通じて学生のメンバーに社会人として必要なことを身につけてもらいたい、ということもかなり意識していたと思う。

労務管理をやる

店舗のメンバーに毎月給料を支払うためには勤怠実績の管理が必要だ。給与計算は本社の総務や経理部門が行っていたが、そのためには店舗の勤怠実績を本部に共有しないといけないので、店舗側でも労務業務を一部担当することになる。全員分の勤怠実績を勤怠管理システムで毎月承認して本部に送信するという作業を行なっていた。当然だが、抜け漏れがあると重大な問題になる。労務の基本中の基本だが、給与のこと(に限った話ではないが)についてミスは絶対に許されないということも学んだ。「交通費の支給額が思っていたのと違うんですけど、、」とかメンバーから質問されてどきどきしたこともある。(実際にミスなどはなかったけど)

従業員の給料が支払われるためにどのようなプロセスが取られているのか、ということを現場の業務を通じて知ることができたのは貴重な経験だったなと思っている。

予実管理をやる

育成と研修のところでも触れたけど、店舗には年〜月〜日単位で様々な目標が設定されているので、それをクリアすることが求められる。売上、利益はもちろん、人件費や経費などの数値も把握していなければならない。人時生産性といった人件費に関わる数字も重要な指標となる。当然、達成できないと理由を問われるし、(上司によっては)ゲキ詰めされることになるので困ったことになる。要するに、基本的な予実管理の知識がないと店舗運営はできないのだ。

人事になってまず驚いたのは、採用活動も「何のために、いつまでに、いくら使って、何名採用するか」を年や月単位で管理してやっていくものだと知った時だった。でも、ほとんど違和感はなかった記憶がある。「あ、予実管理するんだ。やっぱりそうなのね。」という感じだった。

会社から「いつまでに採用できる?」と聞かれて、「うーん、たぶん1年後までにはできてるんじゃないっすかね」という感じでは全然よろしくない。たぶん失格の烙印を押されてしまうだろう。人事をやるにしても、予実管理はちゃんとできなきゃいけないと常々思っている。

小売の店長職はスモールサイズの人事である

ここまで小売りの店長職と人事との関連性について述べてきたけど、いわゆる営業職のマネジメントも同じようなことが言えると思う。人事の中でも採用担当は営業経験を持っている人の方がキャリアチェンジしやすいというのはよく耳にするし、いわゆるヒト・モノ・カネの管理経験というのは人事においても活かせる経験だと感じている。

店長職から人事にキャリアチェンジしてみて改めて思い返すと、小売の店長ってイメージ的にはスモールサイズの人事だなと思うのである。規模は大きくないし、あまり深いところまでタッチすることはできないが、人事業務について網羅的に経験することができるからだ。

という感じで、別に小売の店長職に限らずとも人事に関連性のある職種って意外と世の中にはたくさんあると思う。人事にキャリアチェンジしたいと考えている人の中にも、そういった経験がきっと蓄積されているはずである。キャリアは無闇に手放さず、大事にしておくといいことがあるのだ。

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