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最期の朝勃ち

writing 瀧本 いち華


毎朝Twitterで「勃起力がどうのこうの」と
つぶやいている私ですが、
男性の勃起が
なぜそんなに大事なのか理解したのは
他界した父の日記を見たからでした


亡くなる前、父は治療のために入院していた。

手帳に日記をつけていたので
何か私へのメッセージが残されていないか
大して書かれていない父の日記を
泣きながら見ていたら見つけた
亡くなる前のある日に書かれていた一言


「朝勃ちしてた!!
まだ生命力あるらしい!」


「くだらねぇ!!」と思い、父のキャラもあったので笑ってしまい、涙が止まった。


父は56歳で亡くなった

異常なほどご飯が食べられなくなり
明らかに顔にも変化が出ていたため受診し
自分で結果を聞いてきた


末期の咽頭癌。 余命、もって1年。


それを告げられた日に私たち子供が召集され
父からの言葉を聞いた


「どうやら俺は1年以内に死ぬらしい
 俺は世間の人より
 好き放題やって遊んできた
 趣味もたくさんあったし
 好きな時にやりたいことをやってこれた
 孫の顔が見たいとも思わないから
 死ぬことに関しては何も後悔はない

 ただお母さんを一人にさせてしまうから
 子供達みんなで支えるように」


召集されたわりには短い言葉だった
子供達も「わかった」で終わった


確かに父は多趣味で友人も多く
昔から休日になるとすぐに遊びに出かけていたが
バリバリ現役で仕事をしていた

56歳で亡くなることに後悔がないわけないだろう

本心かどうかはわからないが
この時の「死ぬことに後悔はない」という言葉によって
残された私達はとても救われた



数年経ち、私は今の活動のために
勃起やメンズヘルスについて詳しくなった


勃起はエロいことを考えなくても
起こるらしい


テストステロン値が高いと
元気に長生きできるらしい


そして
朝勃ちは血管の健康状態が良い証拠
まさに健康のバロメーターらしい


その時父の日記の言葉が浮かんだ

「朝勃ちしてた!!まだ生命力あるらしい!」



余命宣告から5ヶ月で入院することになった
癌の部分を切除する手術をするためだった

成功する確率は20~30%と低く
余命1年を1年半に延ばす程度の手術だが
奇跡が起こる可能性は否定しないという
曖昧な説明だった


父は
「手術で死ぬくらいなら入院せず最後まで釣りをしていたい」
と希望していたが

「半年間の延命」の言葉に耳を塞ぎ
奇跡の回復を信じてやまない母の一存で手術が決まった


入院してからは
「本当に手術したら回復するのかな?
 まだ生きられるのかな?」
と本音に思えるような言葉を聞いた


そこで起こった朝勃ちだったのだろう
希望の光を見たのだと思う
「まだ生きられる」と


でもそれが最期の朝勃ちになった

その後の日記には朝勃ちした様子は書かれていなかった
数週間後に亡くなった


日記にはいくら探しても
私への言葉は見つからなかった

娘に言葉を残すことは忘れても
朝勃ちしたことを書き記したかった父
それだけ大切なことだったのだと思う


父の場合はすでに末期の癌であったため
朝勃ちは奇跡的なものであったのだと思うが
通常は本当に健康のバロメーターだ


朝勃ちしなくなったら
健康状態が悪化している証拠
生涯現役でいるための指針になる


健康であることはそれだけで素晴らしい
やりたいことがあったら動ける体がある
会いたいと思ったら会いに行くことができる



だから今日朝勃ちしていたら
健康な自分を褒めよう


朝勃ちしていなかったら
一つ健康になることを心がけよう


健康に生きられていることを実感し
毎日を大切に生きよう


最期に「後悔はない」と言えるように





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