見出し画像

息子たちが泣いてくれるのが、なんだか嬉しい…

「お母さん、次男くん、お昼寝から起きてからずっと泣いてます……!」

先日、昼下がりに保育園の先生から電話がかかってきた。

こういうときは、必ずと言っていい。体調不良の呼び出しだ。「熱を出したのかな?」と私は少し身構えて電話に出た。けれど、その内容はいつもの呼び出しとは一風変わったものだった。

「次男くんが、お腹がいたいと言って、ずっとトイレに籠って泣いているんです。いつもあまり泣かない次男くんが、こんなに泣くなんて、びっくりしてまして……」

とオロオロした様子の先生。

これは、私が行くしかない!私なら次男を泣き止ますことができる!という確信みたいなものがあった。私は、急いで自転車を走らせて保育園に向かった。

駆けつけると教室の前には、思いっきり不安そうに顔をゆがめて、お腹をかばうように身体を折り曲げるようにしている次男がいた。次男の周りには、これまた不安そうに次男のことを見守るクラスのお友達。そして、少し安心したように先生が出てきて状況を説明してくださった。

私は、つらそうな息子を久しぶりに抱きあげた。ほんの少し安心したように、息子は私に身体を委ねてきた。体重はそろそろ18キロなのだけど、重さを全く感じない。わたしの心の中は息子の腹痛をなんとかせねば!という使命感と息子への愛おしさでいっぱいだった。

クラスで一番おしゃまな女の子が「けっこう重いんじゃない?だいじょうぶ?」と、私を気遣うように話かけてくれた。「そうだね。重いけど、ぜんぜん大丈夫だよ!」と答えた。

正直、息子の腹痛が治るかどうか心配ではあったのだけど、こんなふうに頼りにされるのが、ちょっぴり嬉しいというような複雑な気持ちだった。それは息子が最近、随分と落ち着いてきていて、滅多に泣かなくなってしまったからだ。その日は、久しぶりの私へのSOSだったのだ。

画像1

あっという間によくなった次男の腹痛

それに次男の腹痛の原因はきっと便秘のせいだろうと私にはわかっていた。これが原因不明の腹痛だったら、嬉しさを感じる隙きもなくて、やっぱり不安でいっぱいだったと思う。

次男は、ごくたま~に便秘になり、うまく”大きいほう”が出せずに「お腹がいたい」と泣き出すことがあるのだ。

初めてお腹が痛いと苦しがった時は、キャンプ帰りの車の中だった。トイレに行って頑張ってみても治らず、1時間以上も泣き続けたので、これは只事ではないと焦った私は休日診療に急いで連れて行った。

そこでわかったのは、たまに”大きいほう”がうまく出せずに、お腹がいたいと泣く子がいるということだった。それで先生に「か」から始まるある処置をしてもらったら、スッキリ良くなった。(汚い話でごめんなさい……)

その後も、次男には、その手の腹痛がおそうことがあり、その度に急いで病院につれていったりして、私自身も、その処置をマスターしていたのだ。

案の定、家に帰って、わたしの処置によりトイレで無事に大きいほうを出すことができた次男。あっという間にすっきりして、今まで、まるでこの世の終わりかのように泣いていたことなどすっかり忘れて、いつもの元気さを取り戻してくれた。

いつも息子たちの突然の体調不良には緊張感はあるが、それと同時に、私がなんとかするんだ!という強い気持ちも芽生えてくる。息子に泣かれているのに、お母さんの本領発揮!みたいな気持ちで、嬉しくなってしまったのは、なんだか初めて感じるような、ほんの少し意外な感情でもあった。


画像2


泣いて帰ってきた長男

そういえば、最近、長男も同じような事があった。小学3年生になった頃から、長男は少しずつ自立の道を歩き出した。友達と放課後に約束して、1人で遊びに出かける。小学校の中学年はギャングエイジと聞いてはいたけど、まさにそんな感じだ。

誰と遊ぶかと、どこで遊ぶか、帰りの時間はしっかり確認して送り出す。最初こそ、1人ででかけていくのに、私が勝手にドキドキして、無事帰ってきてくれるかいつもヒヤヒヤとしていた。でも、ようやく最近、私もそんな状況に少しだけ慣れた。

まだ、息子が1人ででかけていくのに、ドキドキしていたときのことだ。あまりに心配なので、たまに、買い物のついでだとか言い訳を作って、こっそり遊んでいる様子を見に行くこともあった。そんな日々もほんの少し慣れて、まぁ、うまくやってそうだし大丈夫かな……と思っていた矢先のことだ。

帰宅予定の時間よりずっと早い時間に、「ピンポーン」とオートロック解除の呼び鈴がなった。長男の顔が大きく歪んで、ウォウォッとものすごい嗚咽をしている。

「何事か?」と思うほどのすごい泣きっぷりだった。そのころ、長男は、近所の車通りのない道でスケボーをするのにハマっていたのだけど、それで大コケしたらしい。そこにはすぐに助けてくれるような大人はおらず、ひざから血を垂らしながらものすごい大泣きをしながら帰ってきたようだった。長男は、血を見るのが苦手なので、軽くパニック状態だった。

「ま、ま、まま。こ、こ、こけちゃっって…。」嗚咽がすごいので、うまく話せないほどだった。

ひざだけでなく、手や顔にも擦りむいた傷があったので、ひどくコケたのがわかった。顔に関しては、自分ではどれほどのひどい怪我をしたのか確認ができなかったのもパニックの原因のようだった。鏡をまず見せて、そこまでひどくないことを確認させることにした。

「だいじょうぶだよ。そんなにひどくないよ。びっくりしたね」と長男を抱き寄せて、おちつかせる。

そんなことをしながらも、「まだこうして、本当に困った時にはわたしの事を頼ってくれるんだな……」と感慨深く思っていた。自立したように見えていたけど、まだ大丈夫!私を必要としてくれている……。と感じて、こんな風に泣かれることが、とんでもなく愛おしい。というような、複雑な気持ちだった。

そこで、ちょっと考え込んでしまった。うーーーーん、だって、これって、わたしとしてはちょっぴり予想外の感情。私はずっと子どもたちに早く自立してほしいと思っていたのだ。

でも、こんなふうに嬉しくなるなんて、これは、もしかすると何年後かにやってくる子離れが難しいかもしれないぞ……?なんて、少し不安も生まれたのだけど、でもやっぱり頼られて嬉しいのは、今の正直な気持ちでもある。

子どもたちに必要としてもらえるのが、やっぱりなんとも言えず嬉しいのだ。

画像3

息子達に泣かれて、今、感じること

ほんの数年前までは、長男が泣く時も、次男が泣くときも、「早く泣き止んでほしい」とか、「どうして泣きやまないの……?」と途方にくれることのほうが圧倒的に多かった。

昔、友達が家に遊びに来てくれて、散々遊んで、みんなが帰ることになった途端、「まだちっとも遊んでない!!!」と泣き続けて、みんなを困らせた長男。朝、出かける時になって、いつもの時間なのに、もっと早くに保育園に行きたかった……!と急に泣き出し30分以上床に転がって泣き続けた次男。当人たちにとっては、きっと何か確固たる理由があったのだと思うけど、私にとっては数え切れないほどの不可解な「泣き」があったように思う。

今まで「息子が泣く」ということと、「嬉しい」という感情は北海道と沖縄くらいには遠かった。

それが、最近は2人とも、めっきり泣くことが少なくなった。それに、もし泣いたとしても、話もだいぶできるので、泣いている理由が、よく分かるのだ。わたしも母親として少し成長したのかもしれないし、理由がわかるから泣き止ませることもしやすいし、頼りにされている感じがするからかもしれない。とにもかくにも、今は、不思議と泣かれるのが少し嬉しい。

これが本格的に思春期になったら、また違う気持ちも生まれるのだろうけど、今は泣かれると、とんでもなく愛おしく感じてしまう。

こんなふうに思うようになるとは昔はあまり想像もしなかったけど、息子たちがこれから私を頼って泣くことは、きっと無くなっていくのだと悟った瞬間でもあった。

小さな頃には、あんなにも当たり前だった「泣く」が、今はとっても貴重なことのように思える。

よく考えればこんなにも無防備に「泣く」姿を見せられる相手って、やっぱり特別な存在なんだろうなと思う。きっと、彼らが大人になったら、そっと1人でなくか、私よりも大切な人の前で泣くのかもしれない。

ちなみに今日は、久しぶりに次男が風邪を引いて保育園を休んでいた。

次男は、まだ1人でうまく鼻をかめない。鼻水がズルズルして苦しいと言うので、一日中、夫婦で次男の鼻をかむ手助けをしていた。もう、5分に一回くらいは、息子の鼻にティッシュを押し当ててブヒーとさせるのを、やり続けた。しまいには夕飯の時に、鼻がつまりながら、ご飯を食べるので、次男は、どこから息を吸ったらよいかわからなくなりパニックになった。そして「苦しい、息ができないよぉぉ~~」といって、顔を真赤にしながら泣き出した。

私はオロオロしながら、薬をのませたり、点鼻薬をしたり、その合間にもずっと鼻をかむ手伝いをし続けて、しまい込んでいた電動鼻吸い機を1年以上ぶりに引っ張り出したりして、あたふたしまくっていた。色々手を打てることはやりつくして、ようやく落ち着いてパニックも収まったけど。あー、なんだか、すっかり疲れ切ってしまった。

今日は泣かれて、ちっとも嬉しくなかったよ。久しぶりに大変だった。

けれど……と思う。

じきに鼻も1人でかめてしまうようになるし。こんなふうに一日中鼻をふき続けることもなくなるんだよなと。そう思えば、夫と次男の鼻を拭き続けた日もきっと良い思い出になるはず。(と、前向きに捉えてみたり)

母親歴9年だけど、どんどん、子どもへの気持ちって変わっていくんだね……などと、しみじみと思っている。




この記事が参加している募集

子どもの成長記録

最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^よろしければ「スキ」やSNSでシェアしていただけると、とっても嬉しいです! いただいたサポートは書籍購入やnote内の投げ銭など、今後のnoteに活かすために使いたいと思います。