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『7月10日は参議院選挙 障害者政策の観点から投票先を選んでみる』

ひきこもりのサポートをメインとした障がい者の就労支援事業所「シンワークス泉佐野」の利用者でライターのおなじみ静野沙奈巳さんが、この度の参議院議員通常選挙について当事者目線から記事を作成してくれました。

私も障がい福祉サービス業に携わって十年近くが経過しますが、こういった障がい者のスタンスで選挙を捉えた内容は、選挙制度の仕組みも含めて大いに勉強になりました。

相当な長文になっていますのでどうかとも思いましたが、分割せず一気に投稿します。

読んでいただいたご意見やご感想をいただけたら、静野さんともども大変嬉しく思います。

尚、障害の表記についてですが、私自身は以前より大阪府の指針に従って「障がい」と一部かな表記にしていますが、彼女の場合はそのポリシーから「障害」と漢字での表現になります。

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今年、2022年7月10日は参議院選挙ですね。

ご存じの方もいると思いますが、参議院は衆議院と違って解散が無く、当選した人は6年間議員として活動し、3年ごとに半数ずつ改選(選挙で選び直し)が行われます。

衆議院議員よりも任期が長く、一度議員になると、辞職しない限り6年間務め続けるのが参議院議員です。

衆議院議員よりも長期間活動できるので、決めるのに時間のかかる政策や細かい調整が必要な政策は参議院で考えられる事が多いです。

例としてDV(ドメスティックバイオレンス)防止法は参議院から提出され可決、施行されました。

参議院はこうした、社会問題に関わる政策や複雑な社会問題に対しての政策が作られる事が多い場です。

障害者政策も何かと複雑な問題。

議論に時間も掛かるため、衆議院より参議院で議論される方が多いはずです。

参議院はこの国の障害者政策の土台が出来る場所と言ってもいいのではと思います。

障害当事者にとっては、自分たちに関わる法律を作る人達を決めるのが参議院選挙なのです。

筆者も障害当事者の一人。

自分に関わる法律を作る人が決まる選挙なので、他人事ではいられません。

参議院の性質や役割を考えると、是非とも選挙で投票し、障害者政策に真剣に取り組んでくれそうな人を選びたいと思っています。

ただ障害者政策は選挙で全くタイアップされない問題です。

世間の多くの人々の関心は他の部分にあり、当事者やその関係者以外が注目する事も、議論の対象になる事もありません。

民主主義選挙は多数決のため、絶対数が少ないマイノリティの声は必然的に反映されにくいです。

しかし、反映されにくいからこそ、積極的に主張するべきでは無いでしょうか。

私たちの声を代弁してくれる人は他にいません。

自分たちで言わなければ誰も言ってくれないのです。

そもそも民主主義社会とは、自分たちで社会を作っていくものです。

自分たちが望む社会にするためには、自ら声を上げ、政治に参加する事が必要です。

政治に参加しないのに文句だけ言うのは筋違いであり、参加してから文句を言うべきだと筆者は思っています。

正々堂々と文句を言えるようにするためにも、まずは選挙を通して政治に参加しましょう。

絶対数が少ないマイノリティですが、それでもできるだけ多くの人が投票すれば数字は増えます。

数字が大きくなればその分、影響も大きくなりますから、投票しないよりはマシなはずです。

■各党の障害者政策は?

しかし、選挙に行きましょうとは言ったものの、そもそも各党の障害者政策についての理念や方針を知らないという方が多いのではないでしょうか。

筆者もなかなか各党の障害者政策について参考になる情報が見つからなかったのですが、前回の衆院選の際にそれを公開してくれているサイトを見つけましたのでご紹介します。

特定非営利活動法人 日本障害者協議会の2022年参院選政党公開質問状とその回答です。

https://www.jdnet.gr.jp/report/22_06/220621.html

詳しい内容はリンク先から見て頂けたらと思いますが、コロナ関連から災害対策、障害者差別解消法などの各法律、障害者の労働政策まで、幅広い質問がされています。

そして各党の回答や考えもそれぞれ違い、党ごとの姿勢や方針が見えてきますね。

どの党が良いかは読者の皆さんにそれぞれ判断して頂きたいので、筆者の意見の記述は控えます。

考え方や理想は人それぞれですし、先入観がないほうが良いと思いますので。

代わりに、自分の意見を反映させやすい、賢い投票のやり方をお教えしておこうと思います。

■意見が少数派なら比例代表制を活用しよう

現在の日本の参議院選挙は、原則都道府県単位の選挙区選挙と比例代表選挙が併用されています。

なぜ2種類の方法が併用されているかというと、それぞれの方式に長所と短所があり、それを補い合うためです。

まず選挙区選挙は、立候補している個人に投票します。

そして得票数の一番多かった人から順に、各選挙区の改選定数までの順位の人が当選します。

例として、大阪選挙区は議席数4で、今回の候補者数は18人います。

この18人のうち、得票数の多い上位4名が当選することになります。

それに対して比例代表は、各党が事前に届け出た比例代表候補者名簿の中から1人を選んで投票するか、政党名で投票します。

そして、党ごとに個人票と政党票を合算し、各党の得票率に比例した数の議席が分配されます。

当選者は比例代表名簿の中から、得票数の多い人順になります。

ただし「特定枠」の立候補者がいる場合は、得票数に関わらず特定枠の人が優先的に当選します。

前回の参院選で、れいわ新撰組はこの特定枠制度を使い、障害のある方2人を参議院議員に当選させました。

選挙区制と比例代表制を分かりやすくアイドルグループで例えるなら、選挙区制はアイドルグループのメンバー個人を一人ひとり応援するのに対して、比例代表制はアイドルグループ全体を応援するようなものでしょうか。

選挙区制はシンプルな多数決で分かりやすく、大きな党が勝ちやすいため政権が安定しやすいといったメリットがありますが、多数決で上位の人だけが当選するので死票が多くなりがち、少数派の意見が切り捨てられやすい、一票の格差が出やすいなどのデメリットがあります。

それに対して比例代表制は、票数に応じて議席が平等に分配されるので少数派の意見が反映されやすい、死票が最小限で済む、一票の格差が小さいといった特徴があり、選挙区制のデメリットを補えます。

もし、自分が支持する政党や候補者が有力党なら問題ありませんが、当選しにくい弱小党の場合、選挙区より比例代表でその党(候補者)に投票するほうが、死票になりにくく自分の意思を反映させやすいです。

また、選挙区に支持する政党の候補者がいない場合でも、比例でその党に投票する事で意見を反映させられます。

また、選挙区と比例代表で投票先を変えるのもアリだと思います。

例えば「福祉政策を重視しているけど経済や雇用問題も大事、経済や雇用はA党が良いけど福祉政策はB党のほうが良い」「A党は大きくて強いがB党は弱小」という場合、選挙区では強くて通りやすいA党に、比例代表は少数派も通りやすいB党に、でも構わないと思います。

他の選び方として「福祉政策以外に拘るポイントが無い」「経済や雇用、国防など他の問題に関しては多数派の人と意見が同じ」という場合は、福祉政策に絞って投票先を選んでしまっても良いと思います。

選挙は多数決なので、多数派の意見は他の人に代弁してもらう形ですね(ただし選挙区制で少数派は負けやすいので、死票にしたくないならなるべく通りやすい人を選んだ方が良いです)

福祉政策で良いと思う党が2つある場合、選挙区制で通りやすい方に1票、通りにくい方は比例代表制で1票でも良いですね。

なお、残念な事に「投票したい党(候補者)が無い!」という場合は、消去法で1番マシだと思う党(候補者)に投票してください。

この党(候補者)は嫌だ、議員になって欲しくないと思う人を除外していき、最後に残ったところに投票するのです。

「この人(党)以外は嫌ですよ」という意思表示ですね。

ちなみに白票は無効票として扱われ、現時点では政治に影響力を与えません。

「どの党(候補者)も支持しない」という意思表示にはなりますが、それ以上の効果は無いと言われているので、基本的には消去法でも良いので誰かに投票した方が良く、白票は最後の手段と思った方が良いようです。

なお、棄権は「誰でも良いし何でも良いよ」と同じ意味らしいので、誰でも良くない人は投票に行ってください。

また、選挙後も政治に参加したい場合、議員になった人に陳情や要望を送ると良いのではと思います。

議員からすれば支持者(選挙で票を入れてくれる人)の声ですから、直接会いに行かなくてもメールやFAX、手紙などで送ればきっと聞いてくれると思いますよ(これを蔑ろにする議員は議員の資格ないと思うので次回から投票しなくていいです)

■障害のある人達のための投票支援

最後に「選挙に行きたいけど障害があって行きづらい」という方のために、参考になりそうなサイトを見つけましたのでご紹介しておきます。

こちらの「NHKみんなの選挙」というNHKが運営するサイトです。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/minnanosenkyo/

詳細はリンクから見て頂ければと思いますが、視覚、聴覚、肢体など身体に障害がある方向けはもちろん、知的障害や精神障害がある方向けにも投票のためのサポート情報が掲載されています。

投票所に付き添いの人や介助犬を連れて行ってもOKですし、人混みの苦手な方は期日前投票を利用するなど、様々な工夫が可能です。

自分で投票用紙に記入するのが難しい方は代理投票(会場の係の人が代わりに記入)も出来ますし、重度の身体障害など一部の方に限られますが、郵便投票も可能です。

ご自身の状況に合わせて活用してください。

なお受けられるサポートは自治体によって異なりますので、不明な部分はお住まいの自治体の選挙管理委員会等にお問い合わせください。

障害があると投票所に行きづらかったり、投票先を選ぶのも大変かもしれませんが、ご自身にも関わる大事なことです。

無理はしなくて良いですが、行ける方はなるべく投票に行ってくださると嬉しいです。

また、障害のある人が身近にいらっしゃる方、障害者福祉に関心のある方は、投票先を選ぶ時には是非、各党の障害者政策も参考にしてください。

きっと参考になると思います。 
                                     (静野沙奈巳)

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