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変死事件とハンバーグ定食~新人の常識は通じぬ①

術科大会が終わり、最初こそ術科お疲れ的な雰囲気がありましたが、徐々に平常勤務を取り戻し、いつものように交番勤務をしていたました。

変死の通報、独居老人宅で大家さんからの通報、人が死んでいるとの内容で至急係官が臨場し報告せよ

変死事件です。
※ここからグロイ表現などが出てきます。死体に関することです。
苦手な方はご遠慮ください。



私が交番について、管内では初めての変死事件です。

変死事件とは、自然死以外の死体のことを指します。
通常病気により病院でお亡くなりになる、というのが通常だと思いますが、それ以外、屋内で死体が発見されたとか、屋外で死体が発見されたとかが変死に当たります。

変死は、この遺体が犯罪によるものなのか、そうでないものかを調べるために通報され警察が介入します。
警察は医者ではないので、原因は特定できませんが、例えば胸の包丁が刺さっていたとか、解剖の末、服毒とかであれば犯罪死、つまり殺人事件と特定とか、犯罪死を特定するのが仕事で、それ以外はお医者さんに丸投げです。
「先生犯罪死でないので、あとは原因ですね、どうですか?」
「ん-、シンタンポナーゼ、心臓かな?」
「はい、では心臓で」
みたいな感じです。

犯罪死以外は警察の領分ではないのです。というか知りません。

今回は独居老人宅、この家の大家さんが「最近○○さん(死んだ人)見かけないね」といところから、家にいったら玄関に鍵、新聞受けに数日間の新聞が溜まっている、あと異臭

この情報だけでも、あー家の中で具合悪くなって、救急車も呼べずに死んでしまったんだな、となんとなくわかります。
こんなときは事件性がなし、となります。

交番員が臨場し、通報者と周辺に聞き込みを入れます。
〇最近見かけていなかった
〇一緒の病院に通院していたことがあった、心臓の病気を持っていたらしい
〇妻を早くになくしてずっと独りだったよ
〇ほかに家族はいるってきいたことないな
など

そんなことをしているうちに、刑事課が臨場します。
これは刑事の強行犯係といって殺人事件や凶悪事件を扱う刑事です。
刑事の花形部隊、私が行きたい部署
わかりやすく言えば、「踊る捜査線」の青島刑事のいるところですね。

刑事が臨場するまで、下手に家屋に入ることはできません。
仮にこれが殺人事件であった場合、警察官の足跡や指紋、あと犯人の残した証拠などぶっ壊してしまう可能性があるからです。
そこは刑事課が判断し、事件性があれば鑑識係を臨場させ証拠採取に入るのです。

でもでも、アホな交番員はずかずか家屋に入り証拠ぶっ壊しまくりなわけで、教育が行き届いていないのです。

刑事が臨場し、我々が各報告を済ませ、刑事先行で現場に入ります。
この時、バカな刑事は交番員を下に見ているので、態度が横柄なのです。
だいたい刑事の態度を見たら仕事できるかどうかわかります。
お前ももともと交番員からやっていただろ、過去のことはわすれましたってか?

この時私の目標とする刑事と出会いました。

明らかに若い私に対して、すべて敬語で話す刑事係長(警部補、年齢45歳)指示は的確で、一回の説明でやることが伝わり、彼の指揮で動きはスムーズ、それでいて交番員にも優しい、仕事ができる実力者はやはりこういった人なのだと本当に感激した記憶があります。

若い私を捕まえて、「君はどこの課を希望していますか?」「はい、刑事の強行です!!」「そうですか、では検視に立ち会ってみますか?」「ぜひ」
刑事係長は交番所長に私を検視に立ち会わせたいから連れて行ってもいいかと聞いてくれて、私はそのまま遺体とともに検視を行うために警察署へ戻りました。

検視とは、犯罪死か否かを遺体の体を通じで捜査すること。
つまり全裸にして刺された跡や殴られた跡などないかとか、首絞めれないとか調べる行為です。

警察署について、遺体を検視台に乗せて、手を合わせ、線香を焚き、衣服をハサミで切り、脱がし、まずは全裸にしました。

・直腸温
温度計を、遺体のお尻にいれます。
二人が足を上にあげて、尻の肉を掻き分けおしりに検温計を差し入れます。
これは検視が終わるまでずっと刺しっぱなしになります。

・全体の観察
顔から足の先まで見て、外部に傷がないか見ます。

・眼球
ピンセットで瞼を2回ひっくり返します。
これは溢血点といって、仮に首を絞められていたら針先大の赤い点がぷつぷつと浮き出てくるのでそれを調べるのです。

・頭
髪の毛を掻き分け、殴られたり刺されたりしていないか確認します。

・口
口を開けて、中になにか入っていないか、吐しゃ物があれば掻き出して中身を調べます。仮に服毒であれば鑑定に回ささなければいけません。

・頸部
頸を絞められていないか確認します。
この時首をしめられていれば「吉川線」などがあるかも見ます
吉川線とは、紐や犯人の腕を自分の首をしめている行為から解除させようと自分の首をかきむしる行為、爪が皮膚をかきむしるので犯罪の証拠になるとかなんとか
名称の由来は、日本・警視庁の鑑識課長を務めた吉川澄一が、ひっかき傷が他殺の証拠にあると着目し、学会で発表した事にちなんでいる。らしい

・胸部
胸骨を手で押して肋骨が折れていないかなど調べます。
この時救急隊が来ていれば80%の確率で骨折しています。
救急隊が心臓マッサージをするので、それで骨折します。
それくらい心臓マッサージは強く真剣にやるのです。
あと全体の逡巡創、通称ためらい傷ともいいますね。

など簡単なとろは書きましたが、こんなところを手伝いました。
常に興奮してメモ取りまくっていましたね。

とにかく異臭がすごくて、これは慣れですかね。
死体の匂い、糞尿の匂い、肉の溶けた油の匂い、人は死ぬと血管の巡回が停まるのですべての体の活動が停まります。あたりまえですが
これにより体温などで保たれていた体が肉の塊に変化し冷たくなり、腐ってくる、よって腐敗臭がしてきます。

過去にとても太ったおばあさんが亡くなり、変死の通報がありました。結論は事件性はなかったのですが、ご遺体を警察署に運ぼうと担架にご遺体を乗せようとみんなでよっこいしょとしたときに、
ばしゃん!!水風船が破裂したように、遺体の背中が割れ中から茶色の水が飛び出してきたのです。
これは、遺体の内部(肉)が溶け出し油の水溶液となり、しかしかろうじて皮膚が膜となり外部に漏れ出ていない状態でした。
そこに遺体を持ち上げようとして、接地面に溶けて張り付いていた皮膚の幕が破け、背中が割れた様に破裂したのでした。

遺体を持った数名は、油の水溶液まみれ、みんな来ていた作業服はすべて廃棄、交番員も手伝っていましたが(当時は私は刑事係長)制服はすべてくっさい油まみれでこれも廃棄、みんな数日は鼻がきかなかったとか・・

人間太って入れば、脂肪が溶けて油になるのね。しかも見た目が濃い茶色の水・・あきらかに臭そうだし、やばめな感じ。
女性交番員は吐いていたな。

通常、病院で死んだご家族の葬儀前のきれいな状態しか見たことがない人は多いと思いますが、変死のご遺体はひどいものです。
私はケツに検温計を刺されたくないので病院で看取ってもらうか、山奥か水の中で誰にも見つからずに静かに逝きたいのです。





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