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6等星でありたい

毎日、気が付かないような幸福や小さな楽しみに囲まれて生きている。

そんな日々の中で、私も誰かの太陽でいたいな、なんて思うことはよくある。もし大好きな人に「あなたは私の太陽だ」なんて言われたら、飾り立てた愛の言葉を囁かれるよりうんと嬉しくなってしまうし、自分はいなくてはならない特別な存在なのだと感じることができる。

けれどあらゆる人々にとっての太陽になるのはなかなか難しい。私たちは太陽系に生きているけど、太陽系に恒星はひとつしかない。太陽はひとつしか必要ないのだ。

けれど最近ふとした瞬間によく思う。太陽になるのは難しい、けれどせめて誰かにとっての6等星でありたい。

会えなくても構わないのだけど、運よく会えたらちょっと嬉しい人ってみんないると思う。

そういう人たちは、自分が誰かにそのように思われる存在だと、自分で気づくことはないだろう。けれどそういう相手がどこかにいるだけで、少し気持ちがだるいけれど学校に行ってみようかな、とか、今日はあの人がいたからバイトが楽しかったな、なんて思えたりしてしまう。それって実はすごいことなのではないだろうか。

私も誰かのそんな存在でいられたらどんなにいいだろう。会えたらちょっぴりラッキー。ただそれだけの、なにも望まない存在。けれど確かに、その人の存在に救われるような。

恒星はとても素敵なものだ。太陽がなくては私たちはきっと生まれてこられなかっただろう。

けれど天の川は恒星だけでできているわけではない。もっと等級の低い星がたくさん集まって、ぼんやり輝く、壮大なミルキーウェイを構成しているのだ。夜空の星も1等星だけじゃつまらない。6等星があるから1等星のきらめきが際立つのだ。

だから私は誰かの6等星でありたい。星の瞬きくらいひそかに、そう願っている。



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