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自由って、不安なのよ。

 妻が時々、真理をついてきます。どれくらいって、コジコジくらい真理をついてきます。

 さくらももこはエッセイストとしての才能に溢れ、その才能を散りばめた数々の漫画は、不意に核心をついてくる示唆に富んだ作品です。コジコジ、永沢君、ひとりずもう。他にも色々。

 話がずれましたね。

 妻は乳幼児の気持ちをアテレコするのが得意です。息子はだいぶ喋るようになってきましたが、家族4人のうち妻が3人分話しますから、賑やかで楽しい環境です。

 娘が生後2ヶ月のある日、オムツを替えてサッパリしたかなと思った矢先に泣き出しました。
 おなかが空いているわけでもない、暑くも寒くもなさそう、ええと、あとは、

「ああ、おとうさまオムツかえてくれてありがとうサッパリしたわぁ〜…。でもなにかしら、だっこからおろされて足もじゆうにうごく、うごくのよ〜」(cv.妻)

「自由って不安なのよ。だっこして頂戴。」

 抱っこしたら泣き止みました。
 母親ってすごい。子どもの気持ちがわかるんですね。それより気になったのはその内容です。

 自由って、不安。

 これは真理めいた発言です。首も座らない2ヶ月児に言われるとは思いませんでした(言ってない)。

 キルケゴールの『不安の概念』(1844)では、「不安とは人間の根源的な自由が体験するめまい」と説きます。『死に至る病』発表の5年前のことです。

 自由であるということは、特定の本質をもたないという無の中にいることとなり、無を前にした気分が不安をよぶと考えます。キルケゴールは人間の根本気分である不安をキリスト教の原罪と結び付け、神に背く人間が神との正しい関係を取り戻すことによってのみ、この不安を克服することができると考えました。

 「キルケゴール?」

 と聞いたところ、怪訝な顔で「は?」と返されました。そうです私が変なおじさんです。

 妻は書物によってではなく、娘の足がパタパタして空を切る様子と泣く声を聴いて、瞬間的に理解したのでしょう。

 一緒にいて飽きない人は、貴重です。

 では最後に飽きの来ない名作「コジコジ」の名言を振り返りましょう。

「……コジコジ…キミ…将来一体何になりたいんだ。それだけでも先生に教えてくれ。」

「コジコジだよ。コジコジは生まれた時からずーっと 将来もコジコジはコジコジだよ。」

 真理だ…


 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。
 願わくは、貴方が書物の海で迷子にならず、等身大の現実の放つ美しさに包まれますように。


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