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売れるわけないですよ。Vol.35


ピーナツせんべい、通称ぴーせん。
15年前、ぴーせんのピーナツ(中国産)を
千葉県産のピーナツにして販売したいと
工場に伝えた。


こんな簡単なことができなかった。


工場長は
「値段がスーパーの3倍になりますよ?」
「誰も買ってくれないですよ」
「ぴーせんは安いから買ってくれるんです」
「房の駅でそんなものを売ってはいけない」
「売れるわけないよ」
と言い、製造を拒否。


ずっと昔、ぴーせんは高級品だった。
そこから一気に低価格商品となり
安いおつまみへと成り下がった。
そんなブランドが低いモノを
「房の駅が売ってはいけない」というのが
工場側の言い分だ。


そして断念をした。
言い返せる力が自分にはなかった。


そこから3年。
幾多の成功と失敗を経て
自分の経験と能力はギアセカンドへ。


ぴーせんのピーナツを中国産ではなく
千葉県産でつくってほしいと
工場に伝えた。


答えはNOだった。


頭がかてーなー。
作れって言ってるじゃん。


今もそうかもしれないけど
「ぴーせん」って存在そのものを
ほとんどの人が知らなかった。
特に若い人は。
年輩の人は高級品だと思っている人が多い。
安菓子だとおもってるのは
あなたの世代だけです工場長。


逆撫でしてしまった・・・・。
ますます意固地になり
製造には至らなかった。


そこから2年。幾多の失敗と成功を経て
自分の経験と能力はギアサードへ。


依頼する工場を変えた。
それでも工場の反応はイマイチ。
業界特有のコンサバ保守。


わかったわかった。
失敗したら全部、俺の責任だから。
ダメだったら
包材も資材も全部、自分が払うよ。
自腹得意だから。


やっと工場が動いた。


そして試作が登場したときに
その試作の美味しさに衝撃を覚えた。

安菓子じゃない。

スナックでは感じることが絶対ない
良い商品特有の「重さ」があった。


そしてもっと重くなるように
使う餅米も全て千葉県産、足らないなら最低でも国産という指示を飛ばした。
重いなんてもんじゃない。
うますぎる。




工場長は
「そうですかね〜?」
「こんな値段で買いますかね?3、4倍ですよ!」


うるさい‼️
自分の商品の価値を1番低くみるのは
たいてい工場と営業マン。


自分は信じるよ。うちの商品を。


そして「ぴーせん」という名前を捨てた。


「ピーナツ王子」
商品名に全員が絶句した笑


なぜですか?
だって王子みたいじゃん。
どこが?
逆にどこが王子じゃないの?
ぴーせんって名前残した方が・・・。


うるさい‼️
俺が全部責任とるから黙ってろ。




デザインは史上空前100回以上の修正。



とにかく押し切った。


そして言わずもがな
ピーナツ王子は巨大ヒットになっていく。




答えありきでみたら
なぜ工場長は反対するんだ!ってなるじゃないですか。


でも現実世界は違う。
たいていの人は実際に自分が当事者になると
保守的になり冒険はしない。


これが映画やドラマだったら間違いなく自分は正義で工場が悪。でも現実の世界ではそうはいかない。むちゃくちゃなことを言ってる自分は正義ではなく悪。


商品開発、いつもいつでもうまくいくなんて保証はどこにもない。そしてあきらめない先に成功があるなんてドラマみたいな確約もない。だからカッコいいことを言う人を誰もが煙たがる。


うちの会社でも商品開発をしたくて
何人もチャレンジしてきたけど
1度失敗すると萎縮して
2度と自分から商品開発をしなくなった。
残ったのは自分1人だ。


だから本気で悪になる覚悟が必要だし
変人じゃないとやってられない。
一見、カッコ良くみえるけど、失敗したときの損失はデカいし、みんなからの冷ややかな目も怖い。その失敗に耐えられるだけの精神力がないとやっていけない。


なんでピーナツ王子なのか?
ピーナツ王子はね、亀が海でいじめられてるときに
亀を助けてあげたんだよ。それでね、恩返しに亀はピーナツ王子を乗せて竜宮に向かうの。そうしたらそこで迎えたのが海苔将軍でね・・・・。もっと話聞く?笑


頭のネジが10本ぐらいバズれてないと
できないのが商品開発です‼️
そしてこんなネジのはずれたことを
本気でサポートする戦略本部の連中もバカだけど
本気で売り込むやつらももっとバカかもしれない。


世界は天才じゃなくてバカが変えるんだよ。
愛してる商品たちよ いってこい!


『諏訪聖二流、商品開発』
Vol.31-Vol.40(全10話)

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