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4km速度競走の必勝法!?

春の高校選抜大会が終わり、夏のインターハイに向けて多くの高校生が頑張っておられることだと思います。今更ですが、春の選抜大会は本当に面白く感動するレースの数々でした。

選抜大会前には出場される選手の走りに、変に影響を与えてもいけないと思っていましたので書きませんでしたが、今のタイミングであれば良いかなと思います。

改めまして我々親子が3年間で考えた『4km速度競走の必勝法』を思い出として書いてみたいと思います。

当然ではありますが、息子の脚質を考慮した上での考えですので、誰もが当てはまるとは思いませんし、全員の参考になるものではないと思います。

ただ、考え方の中にヒントになることを見つけて頂けるかも知れませんので、少しでも参考になれればありがたいなと思って書いていきたいと思います。

4km速度競走のルール

まずは、4km速度競走のルールを改めて確認してみたいと思います。

【4km速度競走】
スタートは全選手にホルダーが付き、スタンディングからの一斉スタート。レース距離の4000mを走る間に、バックゴール線、ホームゴール線を規定回数レースの先頭通過をすることで、先頭責任を完了させることができる。先頭責任を完了させた選手の中で、ゴール着順で順位が確定。未完了者の中では、先頭通過本数が多い選手が優先となり、その中でゴール着順を基に順位を確定していく。

こんな感じです。それを優勝するために必要な情報だけを抽出すると、
『レースの規定回数ホームとバックのゴール線を先頭通過し、最後に先頭でゴールする』これだけです。

自分のことだけで考えると簡単ですが、他の選手の思惑がありますので、それを考慮しながら作戦を立てていく必要があります。

先頭責任の規定回数

尚、先頭責任の規定回数ですが、これを理解していない方が多いので改めてここだけ書いておきますが、『レース中の先頭責任ライン通過回数÷出走人数』を計算して、その答えを切り上げた整数が先頭責任回数です。

400mバンクではレース周回が10周となり、1周でバック、ホームと2回通過しますが、最後のゴールだけは先頭責任に含まれないので19回となります。

10人出走であれば、19÷10=1.9(切り上げて2回)というのが正しい計算式です。

333mバンクではレース周回が12周となり、10人のレースであれば同じように計算すると、23÷10=2.3(切り上げて3回)という感じになります。

椅子取りゲーム?

頭の良い方はこの時点で1つ気付くと思いますが、切り上げをしているということから分かる通り、『全員が先頭責任を完了させられるだけの通過回数はない』ということです。

仮に、全員が完了させられる回数があれば、皆自分の番が回ってくるのを待てば良いですが、椅子取りゲームのように足りない数を争うことになるので、ここに戦略が生まれてくるということを意識しなければなりません。

選手たちの思惑・・・

ここで、集団内の選手の思惑をレースの場面毎に考えてみたいと思います。

スタート前の出走位置の抽選でイン側を引き当てた選手や、スタートの得意な選手はまずはバックの1本目を獲ろうとして全力でスタートすることを考えています。

スタートするとまず2つの展開が生まれます。1つ目は、1列棒状に綺麗に並ぶパターン、もう1つは先頭が1人ないし2人だけ飛び出て集団が後ろに残されるパターンです。

集団としての思惑を考えるにあたって、綺麗に1列棒状に並んだ場合の流れを考えてみたいと思います。

集団前方選手の思惑・・・

先頭選手はバック線を通過した後、『このままホームまで獲って完了してやろう!』と思うケースが多いです。

では、この時2番手の選手が何を考えるかですが、強い選手であればホーム側で自分が先頭を獲るために4コーナーから仕掛けていくことが多いです。

なぜこの行動に出るかですが、自分の後ろの3番手の選手に仕掛けられる可能性があるため、そうなると自分が後ろに追いやられて先頭を獲れる順番が回ってこなくなることと、先頭の選手の先頭責任完了を妨害することで、レースの優位に立つという思惑が働きます。

連続通過を失敗した先頭は・・・

先頭の選手は実質1周を全開で走りますので、最後に刺されることで大きな痛手を負います。

だいたいこのパターンでやられた選手は、その後レースペースがどんどん上がる序盤のペースに回復が追い付かず、千切れていくことが多いです。

1つずつ前に出て同じ流れに・・・

また、3番手にいる選手は前の選手が捲っていくのに合わせることで、次は自分が2番手になるためきっちり追走してくるのが普通です。

ホーム線を通過したタイミングでは先程の2番手が1番手に、3番手が2番手になり、同じような流れが繰り返されていくことになります。

この流れが繰り返されている間は、レースペースは落ちにくく逃げが決まることもありません。

これが必勝法?

では、どのような動きを狙っていたか?ですが、ズバリ言ってしまうと
『2コーナー、もしくは4コーナー手前で3番手からの一気捲り』でした。

なぜこれを狙っていたかと言うと、2番手の選手が捲っていくより1テンポ早く捲りを開始することで、2番手の選手の外に被せることになります。

そうすると、2番手の選手はスプリンターレーンから出ることができなくなりますので、行き場がなくなる状況になります。

その上、4番手の選手は前の選手が急にペースアップを始めるので一瞬出遅れやすくなりますし、2番手の選手が後ろに付きなおしてくれるという淡い期待を抱いてしまい、車間が切れることが多いです。

では、4番手の選手に追走を期待された2番手の選手ですが、先にも書いた通り、外に被されることで行き場がなくなっているため速度差の付いてしまった外からの捲りには合わせることが難しいため、実質先頭の選手に連結しているだけの形になってしまいます。

車間が切れると勝手に有利になる

そうなると、3番手から捲ってゴール線を先頭通過できた場合、後ろから加速した自分に対して先頭を奪われた選手が再度加速できるはずもありません。

更に4番手の選手は前と間が空いてしまうので次に自分の順番にならないことを悟って追うのをやめてしまいます。

結果的に、この動きが決まるとあっさり反対側のゴール線も先頭通過することができるため、その時点で先頭責任を完了させることができるわけです。

またあっさり集団との差が付いて逃げの展開に持ち込む流れにもなりやすいので、その場合は自分のリズムで無理なく踏むことで、どんどん先頭を獲って他の選手の完了を妨害する流れをつくっていくことまで可能となります。

なぜ後ろの集団は追わない?

ここで、間の空いた後ろの集団がすぐに追い始めるんじゃないのか?と思われるかも知れませんが、そうならないのが4km速度競走の特徴です。

前を捕まえたいのは全員一致した思惑ですが、自分の力では追い掛けたくないというのも同様に全員一致した思惑になります。

既に先頭責任を完了している選手は、『自分は追い掛ける必要ないから他の選手が追えよ!』と必ず考えますし、完了させていない選手は自分の力で追いかけ始めると、追いついた時の番手が後ろに回ってしまうため、先頭責任だけ取らせてもらえないという流れが起こります。

仮に、完全に追いつくまで自分が全力で追走していった場合、距離が近付いたところで逃げの選手が踏みやめて上に上がりますが、だいたいその場合はギリギリで最後のラインだけ先頭通過で潰して上がります。

その次のゴール線が獲れるかも知れないラインになるのに、その時に自分は追走で力を使ってヘロヘロ・・・で次の捲りの餌食になりやすい。

これがよぎってしまい、どうしても自分で追うのを躊躇する選手が出てくるため、4km速度競走では逃げができた瞬間に一気にペースが落ちてしまうという特徴があります。

流れを作れないと一瞬でやられる

そのため、この特徴を理解しこの展開を自分の味方にできるために考えたのが上記の作戦でした。

この展開をいつも流れの中で意図的に作り、有利に展開することを考えていましたし、これがうまく機能したからこそ選抜大会は優勝できたと思っています。

逆にインターハイではこの流れを完全に読まれていたのか、全く展開を作ることができず惨敗してしまいました。もう少し引き出しが必要だったと今では反省しています・・・。

十人十色の必勝法を!

これだけが全てではありませんし、もっと良い必勝法もあるかと思いますので、これからの選手の皆さんは自分の中での必勝法を必死に考えて、それができる練習を積むことで納得のいくレースができるのだと思います。

私としては本来内緒にするような話ですが、今後学連で速度競走をすることもきっとないと思いますので、親子で必死に考えた思い出の作戦として、公開させて頂きました(*’▽’)

令和4年度の選抜大会予選が分かりやすかったので参考に。8時間31分くらいのところからです。

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