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「ぞっとする話」 ファンタジー・イン・ファンタジー (ムーミンシリーズ)

 昨年11月末に今の家に引越してきて、やっと1月末の今になって市の図書館貸出カードを作りました。借りてきた第一弾はあの「春のしらべ」が最初のところに収録されている「ムーミン谷の仲間たち」と別の1冊(そっちはまた別の機会に)。自分でも書いている途中なので長編は避けています。これはちょうど良いです。

 さて、「春のしらべ」についてはずいぶんと前に書きました。遡って記事を読んでください。(すごいですよ!) さて、次に収録されている「ぞっとする話」ですが、これも凄かった。

 その前に、皆さんやはりムーミンというと、アニメとかキャラクターから入り、その後でスナフキンの名言とか教訓とかに行くと思います。お勧めは・・・そういうの最初にぜーんぶ忘れちゃって読む事です。その方が絶対面白いから。特に小説好きには面白いです。

 はい、「ぞっとする話」ですが、メジャーなキャラクターで出てくるのはミイだけです。主人公はホムサの末から2番目の子です。知らない? 私も。でもお話は面白い。そして教訓や名言も無し。注目すべきは文章の構造の方です。

 最初に描かれるお話の中身は主人公のファンタジーです。でも最初のところではそれがわかり難くなっていて実話のようです。実話と言ってもお話自体がファンタジーなので、ファンタジー・イン・ファンタジーです。これは読んでいくとそうだったとわかってきます。それを途中のところでバッサリ、「嘘」と切り捨てます。が、その後で別の、そして同種のファンタジーで覆い被せてしまい、結局その事でファンタジーを嘘にして終わってしまうのです。

 でも、でもですよ、でも、その上のレイヤー、つまり、ヤンソンさんが書いているのレイヤーではこれ、ファンタジーなのですよ。ファンタジーをファンタジーで否定して嘘と言い切るファンタジーって事になるわけで、これはもう夢野久作の「ドグラマグラ」級のトリッキー小説じゃありませんか!

 というわけで、皆さん、図書館に行けば必ずこの本はありますから、絶対借りて読んでみてくださいね。何しろ普通じゃないのです、ムーミンは。

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