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「足関節の底屈制限(脂肪組織篇)」#書く習慣34

日々の診療お疲れさまです。TROT(トロット)です。


昨日に引き続き足関節の底屈制限の第4弾として脂肪組織性拘縮についてまとめていきます。

本日もこの 足関節拘縮の運動療法 より抜粋引用させていただきたいと思います。




足関節前方脂肪組織の評価と運動療法


⑴脂肪組織の運動性



・足関節前方には関節包内外に脂肪組織が存在する

・脂肪組織の役割は以下の2点

 ⒈ 足関節前方の血管や神経の保護
 ⒉ 筋腱や深腱膜の滑走性を高める

・足関節前方に存在する脂肪組織を2つに分けて説明する

⒈包外脂肪組織

 関節包外で伸筋支帯内にあり、脛骨や距骨前方部で距腿関節運動や
 筋腱、筋膜の運動で柔軟性を発揮する脂肪組織

⒉包内脂肪組織

 距骨の前方にある関節包内かつ滑膜外にある脂肪組織
 距腿関節運動で柔軟性を発揮する脂肪組織


①矢状面での脂肪組織の運動性(エコー長軸像)

・足関節前方脂肪組織の動態を下腿遠位部から距腿関節前方部より観察している
 (ランドマークはTA、EHL、第3腓骨筋)

⒈ 足関節底屈自動運動時には

 足関節の底屈運動に伴い距骨の前方回旋が生じる
 それにより包内脂肪組織は関節包と距骨滑車より押し潰され広がる
 背屈筋群の遠位滑走に伴い包外脂肪組織が平らに押し潰される


⒉ 足関節の背屈自動運動時には

 足関節の背屈運動に伴い距骨の後方回旋が生じる
 包内脂肪組織は深層へ引かれるように広がる
 背屈筋群の近位滑走に伴い包内外の脂肪組織は表層へ引き出されながら広がる


②横断面での脂肪組織の運動性(エコー短軸像)

ⅰ)足関節底背屈運動と脂肪組織

 ・足関節前方脂肪組織の動態を下腿遠位部前方と距腿関節前方より観察している

⒈下腿遠位部前方より観察

 TAからEHLの深層に発達する包外脂肪組織が確認できる
 底屈運動により筋腱が脛骨縁に近づくにつれて包外脂肪組織は平らに押し潰されるように運動する
 背屈運動により筋腱が脛骨より遠ざかるに従って包外脂肪組織は表層に引き上げられるように運動する
 どちらの運動も他動運動よりも自動運動で大きく動く様子が観察可能



⒉距腿関節前方より観察


 関節包外から足関節背屈筋群の深層に発達する包外脂肪組織と、距骨前方から関節包内にある包内脂肪組織が観察できる

 ・足関節底屈運動により…
  包外脂肪組織は筋腱が関節包に近づくに連れて平らに押しつぶされるように運動する
  包内脂肪組織は距骨滑車の形状と関節包の形態変化に合わせて平らに
  押しつぶされる
ように運動する


 ・足関節背屈運動により…
  包外脂肪組織は筋腱が関節包に遠ざかるにつれて平らに深層から表層に引き寄せられるように運動する
  包内脂肪組織は距骨の後方回旋により深層へ引かれるように広がる
  背屈筋群の表層への浮き上がりにより包内外の脂肪組織はともに表層に引き上げられる様子が観察できる

どちらの運動も他動運動よりも自動運動で大きく動く様子が観察可能


ⅱ)足趾屈曲伸展運動と脂肪組織

足趾の運動が前方脂肪組織に与える影響についてエコー短軸像にて下腿遠位部前方と距腿関節前方より観察する


⒈下腿遠位部前方より観察


足趾の屈曲自動運動(足関節の底屈又は背屈位)を行わせると、脂肪組織がTAの深層側へ移動するように運動する

足趾の伸展自動運動(足関節の底屈又は背屈位)を行わせると、脂肪組織がEHLやEDLの深層へ移動するように運動する

足趾屈伸自動運動時における脂肪組織の運動性は足関節の底屈位よりも背屈位の方が大きく運動する



⒉距腿関節前方より観察

足趾の屈曲自動運動(足関節の底屈又は背屈位)を行わせると、

 EHLやEDLが関節包に近づくにつれ深層にある脂肪組織が平に押しつぶされる

 包内脂肪組織は距腿関節の中央部から外側部にかけて、
 関節包から距骨滑車の間で挟まるように運動する

足趾の伸展自動運動(足関節の底屈又は背屈位)を行わせると

 EHLやEDLが関節包から離れるに従って深層にある脂肪組織が広がるように運動する

 包内脂肪組織は距腿関節の中央部から外側部にかけて、
 関節包から距骨滑車の間で広がるように運動する

・足趾屈伸自動運動時における脂肪組織の運動性は足関節の底屈位に比べ、背屈位の方が大きく運動する



⑵脂肪組織の評価


①包外脂肪組織の評価

・包外脂肪組織は下腿遠位部から距骨前方の位置で背屈筋群と脛腓骨間又は関節包との間で豊富にある

・脛骨遠位端前縁で筋腱の深層位置では脛骨遠位端前方の形状を目安に柔軟性を評価する

・健側と比較し沈み込みが少ない場合柔軟性低下を疑う

・表層にある組織の張力をゆるめるように足関節背屈位、足趾伸展位にて行う



②包内脂肪組織の評価

・包内脂肪組織は距腿関節の前方の位置で、距骨前方の形状を目安に柔軟性を評価する

・背屈筋群と混同しないように深層部の柔軟性を捉える

・健側と比較し沈み込みが少ない場合は柔軟性低下を疑う



⑶脂肪組織の運動療法



①脂肪組織の引き出し療法

・足関節背屈の自動運動時に伸筋支帯の浮き上がりや背屈筋群の近位方向への滑走を利用して脂肪組織の引き出しを行う

・足関節前方の脂肪組織の引き出しは、背屈筋群の近位方向への滑走とともに行うと効果的

・TAによる伸筋支帯の浮上げをしっかり行い、足関節を底屈位、足趾を屈曲しながら背屈運動を行いTAを十分に活動させる

・その次に足部の回内とともに足趾の伸展運動を行う



②脂肪組織の徒手療法

・包内外にある脂肪組織を徒手的に動かして柔軟性の改善を図る

下腿遠位部前方から距腿関節前方に位置する脂肪組織が徒手操作の対象となる

・距腿関節の裂隙を目安にその近位にある下腿遠位部と距腿関節の位置を確認し内外よりくり返し操作を行う

ⅰ)下腿遠位部前方の包外脂肪組織への徒手操作

・下腿遠位部前方で伸筋支帯内にある包外脂肪組織に対しての徒手操作

・この脂肪組織は脛腓骨間と背屈筋群の間に発達しているため足関節背屈位にて緩めながら行う

・内側から行う場合

 □ TAの深層部を目安にTAの内縁より脂肪組織を捉え、外側方向に寄せるように操作し脂肪組織の可動性を引き出す

・外側から行う場合

 □ 第3腓骨筋、EDL、EHLの深層部を目安に、第3腓骨筋の外縁から筋を捉え脛骨前縁上で内側へ滑走させるように操作し、脂肪組織自体の可動性を引き出す


ⅱ)距腿関節前方包外及び包内脂肪組織への徒手操作

・距腿関節前方で関節包内外にある脂肪組織に対しての徒手操作

・脂肪組織は距骨前面から背屈筋群の深層に位置するため足関節背屈位にて筋と関節包を緩めながら行う

・距骨前面にある包内脂肪組織は距骨滑車(体部)から頭部までの範囲を目安にする


・内側から行う場合

 □ TA深層で距骨の中央又は内縁の位置から操作する。

 □ 距骨中央より脂肪組織を捉え、内側方向へ寄せたり

 □ 距骨内縁より脂肪組織を捉え、外側方向へ寄せるように操作し脂肪組織自体の可動性を引き出す


・外側から行う場合

 □ 第3腓骨筋、EDL、EHL、の深層で距骨中央又は外縁の位置から操作する

 □ 距骨中央から脂肪組織を捉え外側方向へ寄せたり

 □ 距骨外縁から脂肪組織を捉え、内側方向へ寄せるように操作し脂肪組織自体の可動性を引き出す


今日はこの辺で!